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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
47/58

9,弱点

 「くそ、どうする……!?」

啓太たちめがけて、鋼の刃が降り注ぐ。彼らはその攻撃をかわすだけで精一杯の状態であった。

「あーあ、拍子抜け」

渚はつまらなそうに言う。

「つまんないし……、早く死んじゃえばいいのに」


 「……」

瑞紀は黙ってただ攻撃をかわし続ける。しかし頭の中はパニックに陥っていた。

(どうする……!?鋼相手に梓の炎じゃ、全力を投じてやっと効果あるかどうかだろうし、人工魔法も効かない……!)


 エトニアで戦った時にはフィールドが広く、由実香もいた。だから惜しいところまでいけた。しかし今回はその時よりも条件が悪い。第一、前の戦いにおいても勝てたわけではないのだ。


 (何か……、何かいい手はっ……!)

瑞紀は考える。しかし、考えることに集中しすぎた。

「……ッ!」

気が付くと、1本の刃が彼女の目前まで迫っていた。

(しまっ……!)

防御は間に合わない。

「危ねッ!」

と、そこに啓太が飛び込んできた。間一髪のところで、刃は啓太の剣に弾かれる。

(あれ……!?)

瑞紀の視線は、その刃に向く。刃には、ひびが入っていた。

「危ねえぞ、瑞紀……」

「啓太今何したのッ!?」

「は……!?」

凄まじい形相で詰め寄る瑞紀に、啓太は怯む。

「いや、普通に……」

「普通……、人工魔法使ってたの!?」

「ああ……」

(人工魔法が効いた……!?何で)

瑞紀は再び考える。しかしそこに再び刃の雨が降り注ぐ。

「……そうか、効かないわけじゃないんだ……!」

攻撃をかわしながら瑞紀は呟く。

「どういうこと?」

側にいた梓が問う。

「あの子の魔法物質、全部が改造されてるわけじゃない……。『穴』があるんだよ」

瑞紀は渚に聞こえないように小声で答える。

「『穴』?」

「人工魔法が効く部分もあるってこと。そして……」

瑞紀は飛んでくる鋼の刃を弾く。刃は傷つかない。

「どの程度かは分からないけど、攻撃に使われている魔法物質はほとんど改造されたもの……」

「じゃあ今あいつの周りは……」

啓太が渚を見る。

「もろい。……可能性がある」

瑞紀は頷いた。

「やってみる価値はあるか……」

「っていうかそれ以外に今のところ手ないし」

瑞紀は苦笑する。


 「んー……、意外と死なないなあ……」

渚はつまらなそうに呟く。

「本気出しちゃおうかなあ……?」

と、不意に渚の攻撃をかわしていた啓太が彼女の方を向いて

「この程度かよ、しょぼいな!」

と叫んだ。

「……むかつく人だね」

渚は大して苛立った様子も見せずに言う。

「じゃあ、しょぼくなくしましょう」

渚が彼らに向かって放つ刃の数を増やした、その次の瞬間。突然瑞紀が渚に向かって走り出した。

「!」

渚は少々慌てた様子を見せる。

(大丈夫、絶対上手くいく!)

瑞紀はそう自分に言い聞かせて走る。


 「瑞紀っ……!」

瑞紀がすぐに走り出せるように、彼女を渚の攻撃から守るのが梓と啓太の役目だった。


 瑞紀は3人の中で最も速い。だから彼女が攻撃の役目を担うことになったのだが、梓は心配で仕方がなかった。どうしてもエトニアでの一件がフラッシュバックしてしまうのだ。しかし瑞紀は、そんな梓に大丈夫だと繰り返した。むしろ1回そういう経験をしている自分の方が、うまく対処できるのだと、そう言ってその役を買って出たのである。


 「梓ッ!」

啓太が梓の手を引く。

「え」

と、彼女の身体すれすれに刃が落ちてきた。瑞紀の方に意識が集中していた梓は、それに全く気が付いていなかった。

「全くどいつもこいつも……」

啓太が苛立った様子で言う。

「お前も目の前のことに集中しろ!」

「う……、うん……!」

梓はようやく目が覚めたようで、そう返事する。


 ちょうどその時、渚の元に辿り着いた瑞紀が彼女に向かって短剣を払った。

「うわっ!」

渚の周囲には、瞬時に鋼のドームが形成されるが、瑞紀の素速い斬撃はそのドームにひびを入れる。

(1度形成されてしまえば魔法物質の入れ替えはきかない!)

瑞紀はさらに連続して短剣を打ち付ける。……と、不意に鋼のドームの一部が変形し、彼女に向かって刃が突き出された。

(来たッ!)

しかしそれを予想していた瑞紀はその刃を難なくかわすと、再び連撃する。

(いけるッ……!)

とうとう耐えきれなくなったドームの一部が砕け、瑞紀の短剣が渚自身を捉えた。

「あっ……」

ドームが修復するその前に瑞紀の短剣は渚の左肩を掠める。

「もう1度っ……!」

瑞紀は再び攻撃に入ろうとするが、

「瑞紀、危ないッ!」

梓の声で周辺警戒に切り替えた。そこに、梓たちを攻撃していた刃が戻ってきて今度は瑞紀に降り注ぐ。

「ッ!」

瑞紀は一旦渚から距離をおいて梓たちと合流した。


 「……」

渚は自分の左肩を見る。その部分の服は裂けており、そこから覗く肌には小さな切り傷ができていた。わずかだが出血も見られる。

「……殺す」

渚の顔から笑顔が消えた。

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