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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
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8,絆

 「……信冶、まだいける?」

奏は背中合わせに立つ信冶に訊く。

「うん、……問題ない」

彼はそう答えるが、少し呼吸が乱れてきたように奏は思う。

「奏は?」

「大丈夫」

奏はきっぱりと答える。実際彼女には、まだ多少の余裕があった。

「行くよっ!」

奏は再び目の前の敵に向かって抜刀する。……と、突然奏に向かって突進してくる者があった。

(……!)

彼女は素速く反応して相手の剣を受け流すと、すぐに反撃に出た。

「え」

しかし、刀は止められた。相手の左腕に刃が入らないのである。

「あっ……!」

「……今度は勝つ」

鋼鉄の義手をもって奏の刀を止めたのは将太だった。

「将太……!?」

信冶も突然現れた親友の姿に動揺を隠せない。


 「……信冶、いける?」

奏がまた訊く。しかし今度はその意味が違う。信冶はそう思った。

「いくしか……ないだろ」

「この間とは状況が違うぞ」

将太は奏を睨む。

「周りは全部敵。そして俺も新しい武器を手に入れた」

「まだそんなものに頼ろうとするの……!?」

奏は溜息混じりに言う。

「言ってろ」

将太が奏に向かって突進する。彼女は彼の斬撃を受け止めるが、将太はさらにもう片方の鋼鉄の拳を繰り出す。

「ッ!」

それを弾いたのは信冶だった。

「信冶、いいっ!」

奏が叫ぶ。

「他なんとかしてッ!」

そこに政府軍人たちが一斉にに襲いかかってきた。

「後ろッ!」

奏が叫んで将太を跳ね飛ばす。同時に信冶が、彼女の背後に迫る軍人たちを薙ぎ払った。

「くそ、信冶まで……。バケモノかよ」

将太は一旦距離をおく。その間も、政府軍人たちによる攻撃は続く。しかし奏と信冶は、2人で彼らと互角に渡り合っている。

「……俺だって強くなったんだ……!」

将太は再び剣を構えてその中に突っ込んでいき、奏を右の剣と左の鋼鉄の拳とで連打する。しかし奏は、そのすべてを1本の刀で受け流した。その間、彼女の背中は信冶が守っている。

(な、んでだよ……!)

将太の攻撃は、再び奏に弾かれた。

(俺は、強くなったはずなのに……!)


 「信冶、将太と決着つける。手伝って」

奏の声に感情はなかった。

「……分かった」

信冶は返事だけした。

「何でだよッ……!」

将太は剣を持つ右手と義手の左手を強く握りしめる。

 顔を上げると、奏と目が合った。彼女は一瞬、哀れみの表情を浮かべた。

「畜生、馬鹿にしやがってッ……!」

将太はもう一度、攻撃をかける。もう、奏以外は目に入っていなかった。

「なめんなァッ!」

将太は大きく剣を振り下ろす。しかし奏は身を守ろうとはせず、逆に狙いを定めるように将太を見据えながら抜刀の構えをとった。

「な……!」

将太の剣は、信冶が受け止めたのだ。

「将太、ここまでだよ」

「信冶ッ!」

将太は身を退こうとするが、その時にはもう奏が動いていた。

「ぐ……、無駄だッ!」

彼女の抜刀は、素速く反応した将太の左腕に止められる。

「忘れたのか?俺には……」

「外さないよ、私は」

突然、何かが折れるような音が聞こえた。

「なッ……!?」

刀は、鋼鉄の義手にあるわずかな継ぎ目に食い込んでいた。

「おい、やめろッ……!」

剣を振ろうとするが、そちらは完全に信冶に押さえられている。

「これで終わりッ!」

奏はもう一度斬撃を放った。将太は避けようとするが、それよりも先に「自動反応システム」が彼の左腕を奏に差し出していた。

「ああァッ!」

バラバラに分解した義手と共に彼は倒れる。

「……将太、」

奏は彼を見下ろして言う。

「強くなりたいのに、弱い自分から逃げるな」

「……」

将太は黙って、ただ、残った右手を握りしめていた。


 「奏、先進めそう」

信冶が言う。実際、敵の数は大分減り、政府軍人たちの作る壁は薄くなっていた。突破するのは難しくない。

「そうだね。行こう……」

「いや、待て」

走り出そうとした、その時。2人の前に立ちふさがったのは、掃討軍のナンバー2である須藤賢吾だった。

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