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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
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7,死闘

 「……来たぞ!」

建物の内部にも、相当数の政府軍人たちが控えており、信冶たちが突入してくると同時に襲いかかってきた。

「!」

信冶が攻撃を受け流して反撃に出ようとするも、すぐに体勢を立て直される。

「中の方が、強者揃いだね」

奏が冷静に言う。

「本気でいかないと、ちょっときついかも」

「う、後ろにもいるよ!」

梓が叫ぶ。信冶たちは、完全に囲まれていた。

「大丈夫。美奈たちがすぐ追いつく」

奏は刀を構えて言う。

「って、言っても……」

後ろからじりじりと迫ってくる政府軍に瑞紀は後ずさる。


 「後ろは、俺に任せろ」

剣を抜いて、彼女の前に出たのは祐介だった。

「あんたらは前だけ向いてりゃいい」

「伊藤さんっ!?」

信冶が彼を振り返る。

「信冶、以前は……悪かったな。国を変えてくれよ?」

そう言うと祐介は、政府軍人たちに突っ込んでいった。

「伊藤さんッ!」

「信冶、前ッ!」

奏が叫ぶ。

「くそッ!」

信冶たちに後ろを振り返っている余裕はなくなった。


 (あーあ。何やってんだか)

祐介は政府軍の中に飛び込むと、剣を乱暴に振り回す。

「何だッ!?」

敵たちの動きが乱れる。しかしそれは、一時的なものにすぎなかった。

「慌てるなッ!」

その部隊の隊長の一括によって、彼らはすぐに隊列を整えて、祐介を囲む。

「くそ……!」

四方からの攻撃を一手に受けられるほど、祐介は強くなかった。すぐにその斬撃のいくつかを肩や背に受けてしまった。

「ぐゥッ……!」


 こうなることくらい、祐介にも分かっていた。

(なんだよ……。結局、潰されてんじゃねえかよ俺……)

――お前がちょっと騒いだぐらいじゃ、何も変わらねえよ。お前が潰されて、それで終わりだ――

以前に、自分が信冶に言ったことが思い出される。

(……だけど、)

祐介は倒れそうになるのを足を踏ん張って堪え、目の前にいる敵をたたき斬る。そしてその敵の手から離れた剣を左手で取ると、今度は2本の剣を振り回して政府軍人たちを薙ぎ払った。

「なっ……、二刀流だとッ!?」

彼らは怯む。

「俺はただ潰されるわけじゃねえッ……!」

政府軍を睨み付ける祐介の視線は、鋭かった。

「俺の上にアイツらが立つんだよォッ!」


 そして、信冶たちはこの国を変える。魔族が理不尽に殺されるような今のこの国を、彼らは変える。そうすればもう、自分のように辛い思いをする者はいなくなるはずだ。


 祐介に二刀流の経験などない。しかし交互に繰り出される斬撃は、彼の凄まじい気迫と相まって敵たちを強く戦かせた。

「くッ……!怯むな!相手は1人だぞッ!」

小隊長が叫び、隊員たちを率いて彼に反撃する。

「ちぇっ、ここまでか……」

祐介は向かってくる敵の一体を前に呟く。既にいくつもの斬撃を受けてぼろぼろになった身体はふらつくが、それでも最期まで倒れる気はない。

「1人でも手強いぜ俺ァッ!」

精一杯の強がりを吐きながら、祐介は政府軍に突進した。


 「1人じゃ、ありませんよ」

不意に、目の前の軍人たちの隊列が崩れる。

「……!?」

呆気にとられている祐介の前に現れたのは、丹波美奈率いる第0309小隊だった。


◆ ◆ ◆


 「あっ、来た!来たよっ!よかったあ……」

梓が叫ぶ。祐介の元に美奈たちが辿り着いたのが見えたのである。

「よくねえっつの!」

啓太が怒鳴り返す。


 彼らは依然として5人での戦いを繰り広げているのである。しかも建物内部にいる軍人たちは外よりもレベルが高い。苦しい戦いだった。


 「ねえ、でもあそこ。抜けられそうだよ?」

梓が視線で示した辺りは、確かに兵の壁が薄い。

「……行ってみるか。瑞紀!」

「うん!動けるよ!」

瑞紀は梓の話を聞いていたようで、すぐにそう答えた。


 「行くぞ!」

3人は一気に守りが薄くなっているそこに突撃する。すると、あっさりと兵たちの間を抜けることができた。

「よし!信冶!こっち……」

しかし次の瞬間、壁を閉じて政府軍人たちが啓太たちを振り返った。

「……あ、ハメられた……」

啓太はすぐに悟る。

「おい、何でそっちにいるんだ!?」

軍人たちの壁の向こうで信冶が叫ぶ。

「先に進んで!」

同時に、奏の声も聞こえた。

「……どうする?」

啓太は政府軍人たちと対峙しつつ、瑞紀に問う。

「行くしかないでしょ、こうなったら」

彼女はそう答える。

「行こう!」

梓が奧に向かって走り出した。

「あ、おい!……くそ、行くか……!」

啓太と瑞紀も彼女の後を追って、建物の中央にある階段を駆け上がる。

「……追ってこない」

瑞紀が怪訝そうに呟く。建物の奧へと向かう彼らを、政府軍人たちは誰も追ってきていないのだ。

「確かに。妙だな……」

啓太も言う。


 「……この子がいるからだ……」

階段を上った先にある大きな広間。そこに一番に飛び込んだ梓が、落胆した様子で言った。

「あっ……!」

後に続いた瑞紀も絶句する。

「こんにちはー」

広間には、啓太たちに向かって手をひらひらと振って笑う渚がいた。

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