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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
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6,剣と刀

 「奏……!」

信冶は呟く。

「なんだ、知ってんじゃねえか。栗林奏。第0309小隊の……」

「伊藤さん、」

信冶の視線が鋭くなる。

「俺行きます」

「え」

信冶は目の前の政府軍人たちを強引に薙ぎ払うと、一気に戦闘の中心へ突っ込んでいった。

「あ、おい!」

「あー!信冶行っちゃうよ!」

側で戦っていた梓が叫ぶ。

「待てよ。ここ適当に片づけるから」

啓太が剣を振り回しながら言う。

「あなたも来ますか?」

瑞紀が祐介に訊いた。

「あ、……ああ」

祐介は頷く。


 「あれ?何か見たことあるねえ、君」

奏の元へ急ぐ信冶の前に、2人の政府軍人が立ちふさがった。祐介の同僚である富田響と鈴木雅也だった。

「……通して下さい」

「通りたきゃ、力づくでやってみな」

響が不敵な笑みを浮かべて言う。

「お返しする機会が持てて嬉しいなァ」

雅也も邪悪に笑う。

「……分かりました。ではそうします」

信冶は刀を構え直すと、2人に突進した。

「度胸だけは買ってやるよ!」

信冶が振り下ろした刀を響が受け止めると同時に、雅也は彼の背後に回った。

「じゃあな!」

そして信冶に後ろから斬りかかった。

「……!?」

しかし信冶は響の剣を素速く逸らし、同時に体を捻って雅也の剣もかわす。

「ぐゥッ……!」

剣をかわされて隙ができた雅也に信冶が一撃を加えることは、造作もなかった。

「死ねッ!」

そこに響が再び剣を振り下ろすが、この攻撃に対しても信冶は冷静だった。軽く横にステップしてその攻撃をかわすと、突っ込んできた響の勢いをそのまま利用して、彼の腹に一撃を入れた。

「てッ……、てめえッ……!」

信冶は倒れる響を振り返ることもせず、さらに奧へと走っていく。

(何で……、何で俺らがこんなにあっさりやられんだ……!?)

雅也は受けた傷のことも忘れて、ただ呆然とその背中を見ていた。


 「奏!」

戦いの最前線にいる奏は、その声にはっとする。

(信冶……!?)

いや、ここにいるはずない。そう思いながらもその声が聞こえた方に目をやると、そこには間違いなく彼がいた。

襲いかかってくる敵たちを斬り伏せながらこちらに向かってくる信冶が。

「……!」

と、同時に、彼の背後に迫る政府軍人たちの姿も目に入った。

「信冶ッ!」

奏も信冶の元に走る。それ以上、言う必要はなかった。

 信冶は大きく刀を振り下ろし、奏もまた剣を払って、互いの背後に迫っていた政府軍人たちを斬り倒した。そしてそのまま背中合わせに立つ。


 信冶は、敵であるはずだった。だが、この場においてはまるでそれがなかったかのように、奏は彼に背中を預けることができる。

(……私は心のどこかで、信冶(このひと)が来ることを期待してたんだ)

奏はすぐにそれを自覚した。


 「奏、刀返す」

信冶が彼女の愛刀を投げる。同時に奏も、彼に向かって剣を投げていた。それぞれ刀と剣を受け取った2人は再び突進してきた敵を斬り伏せる。

 久しぶりに手元に戻ってきた刀は、奏の手によく馴染んだ。

「……もう新しい剣に替えちゃったのかと思ってた」

奏は嬉しい気持ちを抑えて、なるべく平生の彼女を保った話し方で言う。

「こっちの台詞」

信冶はそう返してから、手元の違和感に気づく。

「これ……あの時の」

剣の柄には、ハンカチが巻かれていた。ウェルドでの戦いの際に、信冶が奏に渡したものである。

「それも……、返しそびれてたから」

奏は頬が熱くなるのを誤魔化すように、少し尖った口調で言う。


 「信冶っ、追いついたあっ!」

この戦いの最前線に、再び白い布をはためかせた者たちが現れる。梓、啓太、瑞紀である。さらにその後に祐介が続く。

「信冶、門を破りたい」

奏が言う。

「分かった」

信冶が返事をすると同時に、奏は門に向かって走りだした。信冶もすぐに後に続く。

「梓、出番だぞ」

啓太が言う。

「よしっ、任せて!」

梓は門に向かって火の玉を放つ。

 一方で奏は強引に政府軍人たちを薙ぎ払って門の前まで来ると、梓の魔法で熱された門に刀を叩き付けた。

「止めろ!奴を止めろォッ!」

政府軍人たちは奏を攻撃しようとするが、それを信冶が阻止する。

「ハァ、ハァッ……!」

早くも息切れしている梓、

「いきなり全力でやりすぎだろ……」

「無理しないでよ?」

そしてさらに後ろから啓太と瑞紀も援護する。

「信冶、いけるッ……!」

「よしッ!」

2人が同時に門を攻撃すると、ついに門は砕けた。

「よし、行こう!」

信冶たちは建物の中に飛び込んだ。

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