表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
43/58

5,突入

 「……なるほどな」

正史は受話器を片手に、納得した様子で言う。

 オルガの自宅。奏も出ていき教える相手もいなくなったこの元訓練員はリビングのソファーに腰掛けてくつろいでいた。


 「ありがとう」

受話器を置くと、正史はソファーから立ち上がり、反乱軍のニュースが流れているテレビの電源を落とす。

「……さて、動くか」


◆ ◆ ◆


 「ああ、私はこの辺で」

誠が言った。


 掃討軍本部から数キロ離れた辺りには、反乱軍の医療班が展開していた。民間人の姿は見あたらない。既に避難した後なのだろう。

「もう、始まってるみたいだね」

運ばれてくる負傷者を見て、瑞紀が言う。

「俺らもここからは歩こう」

信冶が言った。

「それじゃあ、失礼しますよ」

誠は医療班のいる建物に向かっていった。

「ありがとうございました」

信冶たちは誠に頭を下げると、自分たちは本部へと向かう。


 「ちょっと……、やっぱ大きいよこれ」

梓が控えめに主張する。

「仕方ないでしょ?我慢しなよ」

瑞紀が彼女を諫める。


 軍人しかいないこの場所で普段着など着ていては目立つ。ましてや、今、瑞紀たちは反逆者である。注目されてはまずい。それで軍服を着ているのだが、準備をして部屋を出てきた信冶と違い、啓太や瑞紀は梓を救出する時に着ていた1着のみしか持っていない。結果、梓は彼の軍服を着ることになったというわけである。

 もちろん多少、丈の調節はしてあるが、やはり彼女には大きすぎたようだ。


 「おい、見えてきたぞ」

啓太が言った。梓の話は完全に無視することに決めたようである。それはともかくとして、4人は軍本部に辿り着いた。

「ちょっと、私の話聞いて……」

しかし、途中で梓は抗議するのをやめた。本部前の光景が目に入ってきたからである。

(……!)


 本部前は混戦状態であった。敵味方が入り乱れて、門の前で激しくぶつかり合っていた。しかし今の信冶たちにとって重要なのは、その「敵味方」の区別である。


 「ど……どっち!?」

梓が目を回している。何しろ、両軍とも同じ軍服を着ているのである。

「分かんないよ……!」

「いや……、あの布見て」

信冶は軍人たちの腕を指差す。そこには赤い布が巻かれていた。

「え……それ!?」

身内にしか分からないような違いである。

「でもどうする?俺らそんなもの持ってねえぞ」

啓太が問う。

「待って……、さっき誠さんにもらったやつ、使えないかな?」

瑞紀が車の中で誠から受け取った救急袋をあさる。彼曰く「何もしないよかマシ」なアイテムが入っている。

「おい、そんなのあさったって……」

「ほら、これ」

瑞紀が手に取ったのは包帯である。

「う、んー……、まあ、一応反乱軍側であることは伝わるか……?」

信冶が首を捻る。

「大丈夫、」

瑞紀は自信ありげに言う。

「すぐに赤くなるから」

「……」

信冶と啓太は、黙ってその包帯を受け取った。確かにその通りかもしれないが、瑞紀が真顔で言うと少々怖い。

「え?何で赤くなるの?」

1人だけ理解できなかった梓が問う。

「それは……」

「いいから!いいから行こう!」

啓太がそれを止めて戦場に向かって走り出した。

「えー?」

梓は納得いかない様子だったが、素直に彼に従った。

「……それで、具体的には、私たちはどう攻める?」

瑞紀が信冶に問う。

「うーん、そうだな……」

全体の様子を見ながら、信冶は思考を巡らせる。

「……ん!?」

その時、信冶はその中に見知った人物の姿を認めた。

「伊藤さん……!」

そこには第4魔族収容所看守、伊藤祐介がいた。腕には赤い布が巻かれている。

「ぐッ……!」

なんとか身を守ってはいるものの、彼は多対一という状況に陥っており、苦戦していた。


 信冶は彼の元に走り出していた。そして祐介を攻撃している数人の政府軍人たちに刀を振り下ろす。

「!」

祐介と敵たちとの間に一旦距離ができる。

「……お前、北原か!?」

「お久しぶりです」

驚く祐介に信冶は言う。

「伊藤さん、反乱軍に入ってたんですね」

「ああ、」

祐介は再び突撃してくる政府軍人を薙ぎ払いながら答える。

「さすがに今回のことはむかっ腹が立ったからな」

「そうですか」

信冶も祐介と共に刀を振る。

「でもいいんですか?軍に逆らったりして」

「まあ、な」

祐介は苦笑する。

「……ただ、今回はこんだけ仲間いるし」

「今回」と比較しているものは自分のことだと信冶は解釈する。

「お前見たか?今先陣切って戦ってる大将の1人。滅茶苦茶な強さだぜ?」

祐介が視線で示した先では、ここよりもさらに激しい戦闘が繰り広げられていた。そしてその最前線で剣を振り回しているのは、1人の女性軍人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ