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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第5章 ズレ
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9,反乱

 「『自動反応システム』が破られたそうです」

長身の男が言う。年の頃は40といったところか。

「『鋼』か?」

椅子に深く腰掛けていた男が問う。この男こそ、掃討軍を立ち上げた西澤義秀(にしざわよしひで)その人である。

「いえ、人間の方です」

義秀の左腕、須藤賢吾(すどうけんご)が答える。

「ああ、実験体の方か。……やはりあれは魔族向けだな」

義秀は無表情に言う。

「……それより、魔族から受け取った兵器はどうなっている?」

「そちらはほぼ完成しています」

「そうか……」

義秀は薄く笑みを浮かべる。

(ああ、これがあの演説をした男なのか……。面白くない)

賢吾はずれた眼鏡を元の位置に直しながら、密かに思った。


◆ ◆ ◆


 「みんなに、話さなきゃいけないことがあるの!」

奏は、0309小隊の隊員たちを前に、声を張り上げる。小隊の人数は多くないのだが、部屋全体がざわついているのである。しかしそれも仕方のないことだと、彼女は思う。


 何しろ、帰ってきた副隊長が、その日のうちに隊長に腕を斬り落とされ、追い返されたのだ。ただ落ち着けと言われて落ち着ける話ではない。


 「……将太はっ!」

奏の叫びで、隊員たちは静まる。

「将太は……、人間の平和を捨てた!」

隊員たちに動揺の色が浮かぶ。

「……私が今からする話は、軍の上層部で新たに成立した、軍の方針なの」

奏はそう前置きしてから、話し始めた。


 最近、掃討軍と魔族との間にある条約が結ばれた。そのメリットは、議会を守るための衛兵を派遣する代わりに、魔法に関する研究への協力を受けることができるということ。しかしそれはあくまで、その条約の表向き(・ ・ ・)のメリットでしかない。

 条約の本当の目的は、『掃討軍にとっての』自由な政治だ。反対する民がいるならば、そこで魔族を暴れさせ、掃討軍の大切さをアピールする。言ってみれば、回りくどい独裁政治である。


 奏は概ねそのようなことを話した。

「……将太は、その方針に乗るって言ったの。だから、私は彼を斬った」

彼女の話が終わっても、隊員たちは黙ったままだった。誰もが信じられないといった様子で、奏を見ていた。

 奏はそんな彼らをしばらく見つめていたが、再び口を開く。

「……今話したことを踏まえて、聞いて。私は、軍に対して抗議しようと思う。……ううん、多分それじゃあ済まない。反乱を起こすって言った方が正確かも」

隊員たちに緊張が走る。

「こんなやり方、私は絶対認めない。たとえ武力を使うことになったとしても、止める……!」

隊員たちがあちこちで囁きあっているのが聞こえる。

「……ただ、これは私の感情であって、みんなが同じ気持ちなのかは分からない。だから、強制はしない」

隊員たちのざわめきは収まらないが、奏は構わずに続ける。

「反乱に加わりたくない人は、出ていっていいよ。それで本部の側につくもよしだし、なんなら、軍を辞めてもいい」


 奏の隣に立つ美奈は、彼女を横目で見る。近くに立っている美奈には、よく分かる。昨晩ずっと涙を流していたがために目が充血していることも、このとんでもない自身の発言のために、強く握られた拳が小さく震えていることも。


 「……いいんだよ、本当に」

奏は、もう1度言う。しかし部屋を出ていく者は誰1人としていなかった。

「魔族掃討軍第0309小隊は、あなたの隊です。そして、私たちはあなたと一緒に戦えることを誇りに思っています」

美奈が隊員たちを代表して言う。他の隊員たちも、その言葉に強く頷いた。

「ありがとう……」

奏は礼を言い、何度も何度も頭を下げた。


◆ ◆ ◆


 一方、魔族側でも同じような動きが起こっていた。主導者は、上級魔族の鏑之宮修である。

「議会はあんたたちを売って、自分たちの安全を買ったんだ!」

修の言葉は、魔族たちの心に火をつけた。もともと、生まれながらの才能だけで偉そうに振る舞う上級魔族たちを、彼らはよく思っていなかったのである。

「そのような腐った議会はもういらない!そうだろう!?」

修はそんな彼らの先頭に立って、反乱軍をまとめあげていく。

「俺も、戦う。共に、魔族の新しい未来を作ろう!」

修が各地を走り回った甲斐あって、反乱軍は非常に大きな勢力になりつつあった。


 「鏑之宮が下級魔族たちをまとめて反乱を起こそうとしているようです」

「ほう」

その報告に、明憲は愉快そうに笑みを浮かべる。

「面白くなりそうだな」

「しかし……、大丈夫でしょうか?向こうの勢力はかなり大きくなってきているようですが」

「そのための人間の衛兵だろう?修は少々厄介だが、上級魔族はあいつ1人だ。あいつ1人では何もできないさ」

明憲は余裕の笑みを浮かべて、言った。


 かくして、人間と魔族、その両方の舞台において、政府軍と反乱軍との衝突が避けられないものとなった。そしてその戦いの時は、刻一刻と迫っていたのである……。

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