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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第1章 解放
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7,中央魔族収容所

 祐介に諭されてから、信冶は少女に話しかけなくなった。少女の方も、彼と目を合わせるのを避けていた。しかし、信冶は諦めたわけではなかった。この国を変える、とまではいかないが、少女だけでも、助けることはできないだろうかと考えていたのだ。


 そんなある日のこと、出勤してきた祐介と信冶を、前の時間勤務していた響と雅也が迎えた。


 「よう祐介。今日、来るみたいだぜ?」

響が言った。

「来るって……中央収容所のやつらか?」

祐介が嫌そうな顔をして問い返す。

「ああ。お前たちの勤務中に来ると思うから、ヨロシク」

逆に響は、愉快そうに答え、雅也と共に部屋を出ていった。


 「くそ……よりにもよってこのタイミングかよ……」

「そんなに嫌なんですか?」

信冶が問うと、祐介は不機嫌そうな顔で信冶を見た。

「……お前にとってな」

「え?それってどういう……」

「来たら分かる」

祐介は強引に話を切ると、新聞を開いた。普段は読まないが、これ以上話す気はない、という意志表示には役立った。


◆ ◆ ◆


 囚人たちの昼食の回収が済んだ昼過ぎごろ、1台のトラックが収容所に来た。祐介の様子を見る限り、この車に中央収容所の看守が乗っているようである。


 トラックから降りてきた男が言った。

「今日は4人動かす」

「分かりました」

祐介が答え、牢へ向かう。

「あの、動かすって……?」

信冶が訊くと、祐介は渋々答えた。

「ここからアクネの中央魔族収容所に囚人を連れていくんだ」


 中央へ移ることになった魔族は牢獄の奧、すなわち、この収容所に長く居る順に4人。少女の前の男までだった。


 「嫌だ……俺は行かねえ……!」

少女の前にいた男は、牢の奧で拒んだ。他の3人はすぐに諦めて祐介たちに従ったが、彼の拒み方は異常だった。

「いいから出てこい」

祐介がイライラした様子で言う。

「嫌だ!」

男は子供のように牢の奧から叫び、魔法を使おうとした。が、物質は形成される前に砕け散って消えた。

「どうしてそんなに嫌なんです?」

信冶が問う。

「しらばっくれるな!」

男は叫んだ。

「中央に連れていかれたやつは死ぬまで働かされるか、実験材料として使われるんだろォ!?」

「え……!?」

信冶は絶句した。

「誰に聞いた?」

祐介が冷静に問う。

「お前の仲間が言ってたんだ!」

「響たちだな……」

祐介は迷惑そうに呟く。

「それは確かな情報じゃない」


 「おい、」

中央収容所の看守が口を開いた。

「お前には2つの選択肢しかない。ここで斬られるか、中央に移るかだ」

「この悪魔……!」

魔族の男は看守を睨み付けていたが、やがて諦めて牢の外に出てきた。


 反魔法物質の詰まったトラックの荷台に4人が乗ると、看守はさっさとトラックを出した。


 「中央に行った魔族は、どうなるんです?」

モニタールームに戻ると、信冶は早速祐介に訊いた。祐介は仕方なさそうに答えた。

「ぶっちゃけ、分からないんだ。あそこのことは、あそこの人間しか知らない」

「じゃあ、富田さんが言ってたっていう話は……?」

「ここの看守の間で出た、1つの推測だ。もっとも、推理できるほどの情報はないんだけど。ただ、地方の収容所からちょくちょく囚人を集めているのに、全くいっぱいになる気配を見せず、出てくる囚人もいない、ってなるとな……。そういう推測も出てくる」

「そんな……!」


 驚くと同時に、信冶は気が付いてしまった。次に連れていかれるのはあの少女であるということに。

「前にも言ったけど、余計なこと考えんな。自分が苦しくなるだけだぞ」

信冶の狼狽える様子を見て、祐介が言う。

「全く……ホント、何でこのタイミングで来んだよ……」

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