ある日、世界のルールが変わった
ある日。
神の奇跡あるいは悪魔の所業か。
世界のルールが一つ変わった。
「死んだ者はたった一日だけ甦ることが出来る」
ルールは実に単純だ。
死んだ者が一日だけ甦ることが出来る。
甦ることが出来るタイミングは基本的に死んだ者の望むタイミングである。
亡くなった直後に甦り親しき者と今僅かに過ごす者もいれば、遺してきた伴侶を迎えにくるように甦る者も居る。
もし、神がいるならば。
このルールはこのような愛深き行いのために奇跡を世界に授けたのだろう。
反対に。
もし、悪魔がいるならば――。
*
「被害者はまだ甦らないのか?」
「はい。ですが、そもそも甦る場所は死人自身が選ぶのでしょう?」
「あぁ。その通り。だが、大抵の死人は自らの死体のある場所で復活をする」
「徒労に終わるかもしれませんね」
「言うな。これが唯一の手掛かりなのだから」
そう言いながら二人の刑事が死体安置所に置かれていた死体を今日も監視していた。
この死体は近頃世界を賑わす連続殺人事件の最後の被害者だ。
未だ犯人は捕まっておらず、それどころか手がかりさえもない。
だからこそ、二人はこの死体を見張っているのだ。
万が一にもこの場所で被害者が復活したならば、犯人の正体……そうでなくとも重大な手がかりを得られるかもしれないから。
「くそ。起きないな」
「やはり家族や友人に会いに行っているのでしょうか?」
「いや。そちらにも仲間を派遣しているが今のところ連絡はない」
「では一体どこに」
「知るか。にしても自分勝手な奴だ。今も被害者が出ているのに協力の姿勢を見せないなんて」
「殺される前にこれを予見していたのですかね……」
そう。
甦った死人が平穏に過ごせるかと言えばそうでもない。
今、この二人がそうしているように死の瞬間を聞きだされるために待ち伏せをされていたり、あるいは生前に解決しきれなかった問題の清算を求められたり、酷い時には遺産相続のための血で血を洗う争いを見せつけられたりもする。
もしも。
もしも、悪魔がいるとしたならば。
人間の愚かさを嘲笑うためにこんな所業を成したのだろう。
今日も、世界では死人の最後の一日が人間の身勝手な事情で邪魔をされている。




