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人魚王子  作者: Koyoka
3/4

夢?

モフモフ、モフモフモフ・・モワン!!モワンモワン!


「モンスーン!どこに行くの!ぬれちゃったら怒られるよ!!」


白い大きな犬は海水を気にも留めず

女の倒れている岩場にかけつけそのままのぼり顔をぺろぺろ舐めていた。


モフモフモフ


金色の髪をなびかせた少年が後から走ってきた。


「うわっ!何!モンスーン!あわわわ、どうしようっとりあえず連れて帰ろう!」


引きずられるように岩場から下ろされ女はそのまま大きい犬の背に、乗せられた。

普段から人を乗せることがあるのか、白い大きな犬は大人しく背中に人を乗せ

少年と一緒に歩き出した。


浜から少し草の生えた土地をぬけて

クリーム色の外壁をした大きなお城の裏門についた少年は小さな扉を開けると

犬と一緒に入っていった。


中に入ると外とは打って変わって

とても手入れの行き届いた庭が広がり 噴水が虹を携えキラキラと輝いていた。

その中で花をつむ人がいる。

肩までのストレートで艶やかな茶色い髪を揺らしながら、少年の気配を感じゆっくりと立った。


「ヨウニさま〜女の人が海の岩の上で倒れてました!モンスーンが見つけたんです!生きてますよ!」


息を切らしながら 犬を引っ張るように叫ぶ。

ヨウニと呼ばれたものは、犬の背中を見てつぶやいた。


「降臨祭に迷い人ね・・・」


手のうちにあった花が パラパラと足元に落ち風に吹かれていった。


******


「アンスリウム、水とぬらした布を持ってきておくれ。」

「はい、ヨウニ様!」

「モンスーン、お前もご苦労だったね。休んでていいよ。」

「モフン!」


返事をしてモンスーンが出て行った。

しばらくするとアンスリウムが水とぬらしたタオルを持ってきてくれた。


「ありがとう。ところで誰かにあったかい?」

「いいえ。今日は皆町のお祭りに出向いてるのでいません。誰か呼んできましょうか?」

「いや・・知らないものを城にいれたと知れると、皆を心配させてしまう。皆には内緒にしといてもらえないかな?」

「僕とヨウニさまとの秘密ですね!!わかりました!!」

「あと、モンスーンもね。下がっていいよ、ここは私が見るよ。」


アンスリウムがにこにことお辞儀をして出て行くと

私は改めて運ばれてきた女を眺めた。

神々の降臨祭「レイデー」の行われる日に舞い降りたとは・・

我々とは違う顔立ち。見たことがない。黒くあまり長くない髪の毛。

上着も薄く、下は素足の出る服。


「ふむ・・・かなり軽装なのだな・・。」


布で顔を拭き、擦り傷のあるところにも、水で拭いた跡薬を塗った。

ヨウニは小さな石を取り出し、何か唱えると、

小さな風が巻き起こり風が女の濡れた髪や服を乾かしていった。

口から薬を流そうと軽くあけると、

そこには緑の草が唇の内側について独特のにおいが少ししていた。


「ジャカランタの秘薬・・人魚に助けられたのか。面白い・・」

きらりと光る瞳は冷たい瞳をしていた。

しばらく寝かせておけば直目が覚める。ヨウニは部屋をあとにした。



*****



「・・・・っ苦ぁ!!!」

のどの奥に挟まったように強烈な苦さを出す何かに目を覚ました。


「はぁはぁ・・・苦っ!何これ!!おぇっ。」

近くに、水差しを発見し、あわてて喉に水を流した。

「はぁっ・・・まだ苦い。・・・どこだここ?」


やっと状況を把握する気になったのか、あたりを見回した。

まだ頭も体もひりひり痛い。

明かりはなく見えにくいが月明かりが壁を移し、すぐに自分の家でないことは確認できた。


「・・・いったい・・・ここはどこ?」

きしむ体をゆっくり動かしながらベッドを降りる。

「そういえば・・歩道橋から落ちて・・で海に落ちて・・ん?なんで歩道橋から海?」


とりあえず、傷が手当てされているということは、多分大丈夫だろう。

ここはどこか確かめようと部屋を出た。

静まった廊下はどう見ても病院でもマンションのようなつくりでもない。

古い・・けど新しい不思議な感覚だ。

廊下には明かりがぽつぽつと灯してある。しかし松明ではない。

よく見ると石が火のように発光していた。


「何だ・・これ?」

石を恐る恐る触ってみる。

「あれ、熱くない。」


ゆらゆらと光が揺れるだけで熱くも痒くもなかった。

ふと、食べ物の良いにおいがして、振り返った。


「それは、刻石こくせきという魔力を持った石ですよ。初めて見られましたか?」

「え・・・あ、はい。あの・・」

「ここではなんです、起き上がれるのでしたら、食堂のほうで食べながらお話しましょう。」


一瞬女の人かと思ったが、声が思ったより低かった。

言われるがままについていくと、いくつもの刻石があり、

部屋に入ると電球で明るい部屋と変わりない明るさだった。

光沢のある長テーブルがあり、いくつものいすが囲っている。


(これ、金持ちの家だな。明らかに。いや城か・・。)

「こちらにおかけ下さい。」

と椅子を引かれる。

「あ、どうも・・。」


軽く会釈をして座る。目の前に暖かなスープとパンが置かれた。

ぐるぐる・・とおなかがなった。


「ふふふ、元気な証拠ですね。どうぞ、まずはお食事を。」

「・・・頂きます。」


手を合わせて素直に食事を頂くことにした。

なぜなら、これはきっと、夢だからである。

だっておかしい。

明らかに外人と思われるこの人と、日本語で喋っている。

それにあの光る石。ラピュタじゃないんだから。


「う・・旨い。」

(超好みの味なんですけど。)

彼は食べ終わるまで、ニコニコしながら待っていた。

「どうぞ、お茶です。」

何かのハーブティのようだ。別に嫌な味じゃない。むしろリラックスできる。


飲み物を飲んで、少し落ち着いた様子を確認するとヨウニは

手を前で組んで女を見た。


「あ、ご紹介がまだでしたね。私はこの館の管理者ヨウニ・バンカールと申します。」

「えと、私は神崎昇かんざきのぼる。昇が名前です。」

「ノボル・・・あなたは海辺の岩に倒れていたそうですが・・」

「岩・・」

「・・あなたはどこから来たのですか?海の向こうのノーウェイから?」

「ノルウェイ?」

「いえ、ノーウェイです。」

「あー違います。日本です。」

「ニホン?聞いたことないな・・」


おうっと、夢なのに適当にハイっていっとけば良かった。

彼は少し考えてる・・

よく見ると、いや、さっきも気づいてたけど・・。

この人超キレイ・・切れ長の眼に宿る濃いブラウンの瞳、さらさらと流れる髪。

白くてキレイな肌・・

するとふと眼が合った。


「では、ノボル、あなたは渡航中に船から落ちたとかではないのですね・・?」

「はい。」

「なぜ、あの場所に?」

「あー・・私もよくわかりません。」

「記憶がないのですか?」

「あ、そうではなくてですね・・」

面倒なことになってきた予感。

昇はふうっと息を吐くと、意を決して話始めた。


「たぶんですね。私はこの世界のものではありません。」

「・・。」

「頭おかしいと思われるかも知れませんが、

私は海にも行ってないし歩道橋という橋の上から落ちたはずなんです。」


「・・・なるほど。」

「ですので、この世界のことは全くわかりません。なぜ、ここに居るのかも、

なぜこうやってヨウニさんと話せるのかもわかりません。」

「では、人魚はご存知ですか?」

おもわず、お茶をこぼしそうになる。


「に、人魚!?」

「おそらく、あなたを岩場まで運んだのは人魚だと思われます。」

「あー・・・もしかしてあの目の大きい怪物!?」

「いえ・・それは違うかと。人魚は半身は人です。怪物は何かわかりませんが。」

「あ、そうですか・・。」


この世界には、魔法の力が宿ってるような刻石というものがあり、人魚まで居るのか。

ますますファンタジーだな・・。

私、もしかして、事故のショックで植物状態なのかもしれないな。

もう、死んでたりして。

だって落ちたのは国道23号線。車が通ってないわけがない。

轢かれて引きずられて・・・発見遅く重態・・みたいな。

しかも!自殺に間違われてるんじゃないの!?

あー最悪だ。


「うーん、ではあなたがあなたの居た世界に帰る方法を聞かなくてはなりませんね。」

「・・・え!?わかるんですか?」

「必ずわかるわけではないのですが・・、

もしかしたら、あなたのこれからを導いてくれるかもしれません。」

「誰にお聞きすればいいんですか!?」

「今、この辺りは祭りの最中なのですが、神殿の祭長でもあるものが、この世のことをよく見通せるものが居ます。幸い私とは知り合いなので、話を聞いてもらいましょう。」

「ありがとうございます!!本当に、何から何までありがとうございます!!」


笑顔のヨウニに昇は椅子から立って頭を下げた。

もしかしたら、帰ることが出来たら、生き返るかもしれない。

植物状態からの奇跡の生還だ。


「私は際長に明日連絡し、いつ会えるか聞いてみますね。」

苦笑しながらヨウニは言った。


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