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第47話 男達の戦い

朝の更新2話目です。

 北側7階の通路で、ルーカスはガンマと対峙している。水中スクーターで移動しながら、水中銃を握る。

 周囲を回りながら、追いかけて来るガンマ。手榴弾で攻撃されて、怒っているのだろう。

 これまでで初めて、まともに受けた人間からの攻撃だ。逃げて行った彰人(あきひと)達には、見向きもしていない。


「お前に恨みはないが、生かしてはおけない!」


 生存者の殆どを殺されてしまった。ここまでされて黙っている程、彼は温厚な性格をしていない。

 ガンマ達の生まれた境遇は、同情に値するだろう。彼も可哀そうだと思っているし、憐れんでもいる。

 バート達がこんな研究を始めなければ、生まれずに済んだ生命。父親が死ぬ悲しみを経験しなかった。

 全ては一部の人間が行った事だが、自分の元上官がその首謀者だ。全くの無関係、とは言えないかもしれない。

 ルーカスの暮らしている国が、行っていた計画でもある。だがそれでも、殺されてやる謂れはない。


「喰らえ!」


 ルーカスが狙いを定めて、水中銃を放つ。小型の銛が勢い良く射出され、ガンマへと向かう。

 頬を掠めながら、銛が通り抜けていく。ガンマの右頬に、裂傷が出来る。命中はしなかったが、ダメージは与えた。

 その事実が、余計とガンマを刺激する。今までの人間は、弾を掠めさせる事すら出来なかった。

 だがこの人間は、どうやら違うらしい。ガンマは本気になって、ルーカスを狙い始める。

 絶対に殺してやると、殺意を高めていく。激しく攻め立て、攻撃を繰り返す。


「っとぉ! やる気満々ってか!」


 猛スピードで水中を進みながら、1人と1匹がぶつかり合う。ガンマが体当たりを狙えば、ルーカスは回避する。

 反撃で放たれた小型の銛が、今度は背びれを掠めていく。再三に渡るダメージは、ガンマの神経を逆なでする。

 生まれて初めて、ここまで人間から攻撃を受けた。小さな存在が、生意気にも刃向かっている。

 海の王者として、オスとして生まれたプライドが、ガンマなりにあった。他の生物は、相手にならなかった。

 ホホジロザメやオオメジロザメと、喧嘩をしてみたら簡単に勝てた。シャチやイルカも同様だ。


 人間達を殺しながら、海における自身の立ち位置を学んでいた。誰も自分達に勝てないと知った。

 クジラは自分達より大きいが、母親を見て逃げて行った。この海で一番強いと、ガンマ達は理解した。

 だというのに、目の前に居る人間はまだ倒せない。人間の癖に、何故か速く泳いでいる。

 よく分からない物で、攻撃を繰り返して来る。無力な筈の存在が、反抗的な態度を取っている。

 そして遂に、ルーカスの放った小型の銛が、ガンマの尾びれを貫いた。初めて知った激痛に、ガンマは怒り狂う。


「怒ったかい? 喧嘩するのは初めてか?」


 何を言われているのか分からない。ただ、バカにされたと感じた。ガンマは一層激しく攻撃する。

 威力とスピードは増したが、攻撃が単調になった。まだ幼いガンマは、冷静に戦う事が出来ない。

 身体能力自体は、ルーカスを圧倒しているガンマ。しかし知能はまだ、4歳の子供と変わらない。

 道具を上手く利用し、相手を煽って戦うルーカスは、上手くガンマを扱っている。

 モニュメントにガンマをぶつけさせたり、室内に入って机を蹴飛ばしてみたり。あらゆる手段を使用する。


「くっそ! ちゃんと充電しておけよ!」


 しかしルーカスの使う水中スクーターは、残るバッテリー量が心許ない。満タンまで、充電されていなかったのだろう。

 レッドゾーンに突入し、残り2割ほどしかない。水中銃の残弾も、潤沢とは言えない。

 今はガンマを怒らせて、優位を維持出来ている。だがそれも、永遠には続かないのだ。

 ルーカスはあくまで道具を利用しているが、ガンマの方は素の実力で戦っている。

 じりじりと焦りが、ルーカスに生まれる。余裕そうに見えて、彼も必死なのだ。


「しまった!」


 焦りから生まれた操縦ミスが、ルーカスを追い詰める。壁に擦ってしまい、慣性でルーカスが飛ばされる。

 勢いに乗って、壁際まで体が流れていく。どうにか激突は避けられたが、高速で移動する手段を失った。

 水中スクーターは、遠く離れた位置に転がっている。今から取りに向かっても、決して間に合わないだろう。

 何故ならガンマが、ルーカスをジッと見ている。辿り着く前に、攻撃を受けてしまうだろう。


「おいおい、マジかよ」


 壁を背に、ルーカスは追い詰められた。左右に逃げ込める扉もない。通路の端、行き止まりだ。

 水中銃も、残弾は1発となっている。この1発で倒せるほど、ガンマは小さな体じゃない。

 あとは左手にストラップを引っ掛けていた、大きな銛が1本あるだけ。あまりに武装が心許ない。

 防水バッグは、念の為に途中で置いて来た。戦いの中で失えば、アルファとの戦いで困るからだ。


「やるしか、ないか……」


 ルーカスは、ガンマが笑ったように見えた。ガンマは猛スピードで、真っ直ぐ向かって来る。

 水中銃を放つも、ルーカスが放った最後の1発は、腹部に刺さっただけ。頭部を狙ったが外された。

 完全に回避は出来なかったが、勝利を確信しているガンマは勝ち誇る。大口を開けて、ルーカスへ喰らいつく。

 その先には、銛を壁に当てて持っているルーカスだ。突撃したガンマは、自らのスピードで自滅する。

 口内から銛が突き刺さり、ガンマの脳を破壊する。ギリギリで手を離したルーカスは、ガンマの下の潜り込んでいた。


「ふぅ……2度とやりたくねぇな、こんな賭け」


 ギリギリの戦いに勝利したルーカスは、水中スクーターを拾って戻っていく。隠して来た防水バッグを回収し、4階を目指す。

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