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第45話 蹂躙

本日の更新5話目です。

 彰人(あきひと)達はガンマとデルタから、襲撃を受けている。突如現れた2匹の化け物に、人々は翻弄された。

 武装しているとは言っても、水中銃なんて撃った事のない、戦闘のド素人が大半だ。まともに狙いも付けられない。

 保安部のメンバーでさえも、水中戦の経験は殆どない。おまけに、単なるサメを迎撃するのではない。

 相手は高い知能を持ち、連携して攻撃を仕掛けてくる。烏合の衆が、対応出来る相手ではなかった。


「落ち着け! 相手は2匹だ!」


「大きさが違うだろ!」


「くそっ! なんてスピードだ!」


 保安部が中心となって迎撃に当たるが、攻撃の悉くを回避されている。素人の攻撃なんて論外だ。

 スピアガンとも呼ばれる小型の銛を打ち出す銃が、次々と撃たれるが空振り続き。

 標的の近くを飛ぶだけで、儲けものという始末。数人ずつ交互に撃つなど、戦術でもあればまだ違っただろう。

 無秩序にただばら撒くだけでは、足止めにしかならない。迎撃と呼ぶにはあまりにお粗末。

 

 無駄に消費された弾は、遠くの床を転がっている。ガンマとデルタは、エコーロケーションが使える。

 海中を進む銛を敏感に察知し、器用に回避してしまう。巨体ながらも、動きは俊敏だ。

 母親であるアルファが、シャチをも超える速度で泳げる。ならば子供達も、当然速いに決まっている。

 全長6メートルの巨獣が、猛スピードで海中を自在に動き回る。広いアクアノートの通路が、却って2匹の有利を生む。

 

「皆落ち着いて! 壁に寄って、死角を減らすんだ!」


 彰人が提案するも、反応出来ている人間は少ない。通路のど真ん中で、囲まれてしまっている。

 天井は高く、通路の幅は広い。彼らの周囲を、グルグルと2匹で様子を見ながら泳ぐ。

 せめて壁を背に出来れば、襲撃して来る方向を絞れる。だがこのままでは、やりたい放題だ。


「うわああああ!?」


「きゃーーーー!?」


 ジワジワと外側に居る人間から、削られていく。隙だらけの素人を、容赦なく噛み殺す。

 不器用に次弾を装填していた男性が、横から喰らいつかれる。大量の血液が水中に広がる。

 縦横無尽に移動するガンマとデルタは、連携して攻撃を繰り返す。しかし人間の方は、全く連携出来ていない。

 1人また1人と、強靭な顎でバラバラにされて行く。巨体の突進で、吹き飛ばされていく。

 幼体ながら恐ろしい筋力を誇る尾が、脆い人間の肉体を弾き飛ばす。全身が人間を殺す凶器だ。


「よせ! やめろ! ガンマ! デルタ!」


「駄目です! トーマス博士!」


 作り出した創造主として、トーマスが前に出て止めようとする。アイリスが連れ戻そうと、彼の後を追う。

 今までにない行動を取った人間を見て、2匹は様子を見ている。トーマスの顔を、2匹は認識している。

 何度も見た人間の顔であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 殺すべき仇の1人へ、2匹は一斉に襲い掛かる。手を挙げて、止めようとしていたトーマスへ殺到する。

 ガンマが上半身へ喰らいつき、デルタが下半身に噛みついた。トーマスの肉体は、上下に無理矢理引き千切られた。


「トーマス博士!」


 アイリスの目の前で、トーマスは肉塊に変わった。ついでとばかりに、ガンマが思い切り尾でアイリスを強打した。

 吹き飛ばされたアイリスは、ピクリとも動かない。2匹の注意がトーマスへ向いた隙に、アドルフが1人離れる。

 残った人々を見捨てて、自分だけ助かろうという魂胆だ。しかしそれは、2匹の思う壺だった。

 素早くガンマが回り込み、アドルフの前へ姿を現す。弾切れの水中銃を捨てて、手を挙げるアドルフ。


「お、落ち着けよ、な? 俺はただのスカウトマンだ。お前達の父親とは、無関係だろう?」


 焦ったアドルフは、意味のない言い訳を口にする。そういう問題ではない筈と、彰人が予想していたのに。


「ぐああああああ!?」


 挙げられていたアドルフの両手へ、ガンマは容赦なく噛みついた。肘から先が、一瞬で失われた。

 広がる血の海に、アドルフの絶叫が響き渡る。そのまま頭部を噛まれて、アドルフは絶命した。

 首のないアドルフの体が、水中を漂う。誰だろうと関係ない、そう主張しているかのようだ。

 

「しっかりして!」


 大怪我を負った男性を、ソフィアが励ましている。だが噛まれた横腹は、ごっそりと肉が抉られている。

 ライオンに襲われるよりも、痛ましい傷跡にソフィアは涙を流す。あまりの惨状に、明るい彼女も笑えない。

 周囲を見ていなかった彼女を、デルタに狙われていたメルビスが引っ張る。彼の代わりに、ソフィアがデルタの犠牲になる。


「貴方!? 何て事するのよ!?」


「正気か君は!?」


 メイジーと彰人が、自分勝手な保身に走ったメルビスを責める。だがメルビスは、反省の色も無い。


「誰だって死にたくないだろ!?」


「彼女だってそうだ!」


 珍しく怒りの感情を見せた彰人が、下半身を失ったソフィアを指差す。彼女の目には、もう光がない。

 今や生存者達の中で、無事な者は殆どいない。保安部の隊員が数人と、彼らぐらいしか残っていない。

 残っている武器も、殆どが弾切れだ。もう手持ちの銛ぐらいしか使えない。全滅は時間の問題だ。

 少しずつ生きている人間が、物言わぬ肉塊に変わっていく。パニックを起こしたメルビスが、逃げ回っている。

 保安部の隊員が、最後の1発を放つ。その射線上に、メルビスが入ってしまう。小型の銛が、背中から腹を突き破る。


「えっ……ぐふっ」


 彼の腹から血が広がる。そこへデルタが襲い掛かる。スピードの乗った頭突きで、メルビスは上半身を複雑骨折した。

 激痛に呻く彼へ、ガンマが喰らいつく。胸から上を失ったメルビスの遺体が、水中に浮かんでいる。

 彼を撃ってしまった保安部の隊員も、いつの間にか殺されていた。たった2人、残された彰人とメイジー。


「くっ……」


 彰人がメイジーを背に庇い、2匹と対峙している。まともに武器と呼べるのは、彰人が持っている銛だけ。

 数メートル離れて、2匹が2人を見ている。すると突然、2匹は視線を上げる。そこへ、1機の水中ドローンが突っ込んで来る。

 黄色い小型の可愛らしいドローンには、ピンの抜かれた手榴弾が巻きつけられている。次の瞬間、水中で爆発が起こる。

 衝撃をモロに受けたガンマとデルタは、吹き飛ばされて行く。爆発の余波で、彰人とメイジーも流される。


「先に行け! 彰人!」


「……ルーカス!?」


 水中スクーターで現れたルーカスとバートが、ガンマとデルタへ攻撃を始めた。

明日は朝の8時台に3話、夜に3話の更新で完結させます。

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