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第37話 地上を目指して

本日の更新2話目です。

 ルーカス達は、地上を目指して歩いている。合流した結果、総勢42人の集団となった。

 宿泊エリアからトラムで移動して、今はVIP向けのショッピングモールを歩いている。

 ここを抜ければ、20階まで上がるエレベーターがある。南側20階は、まだ浸水していない可能性が高い。

 薄暗いショッピングモールは、少し不気味だ。高級ブランド店が並んでいるものの、今は何の意味も無い。

 

 施設の構造に詳しいバートが先頭に立ち、武装している保安部の隊員が、前方と殿に分かれている。

 もはや自動小銃など、大して役に立ちはしない。相手は6メートルが2匹と、20メートルが1匹だ。

 子供達なら多少意味があるかもしれないが、アルファに対してはただの豆鉄砲に過ぎない。

 浸水を防ぐ効果もない。ただ武器があるという、安心感を得る効果しかないだろう。


「あの、メルビスさん」


 彰人(あきひと)が少し離れた位置を歩いているメルビスに、控えめな声で話し掛ける。少しだけ聞きたい事があった。


「……何?」


「その、本当に彼女が? 貴方の証言を疑っているわけではなくて、そんな女性に見えなかったから……」


 和美(かずみ)は彰人から見て、単なる可愛らしい女性でしかなかった。こんなテロみたいな行為を、行った事が信じられないのだ。

 実際、本物の和美であったなら、こんな真似はしていない。そこまでの勇気を持てない。

 彰人が感じている違和感は、和美の演技をしていたユリアと、本物の和美が全くの別人だからだ。

 和美の人柄しか知らない彰人は、ユリアという存在がノイズとなっている。


「知らないよ、元々そういう女だったんでしょ。やっぱり二次元が一番なんだ。これからは日本のオタクを信じるよ」


「は、はぁ……そうですか」


 どうにも納得は出来なかったが、彰人はそれ以上の追及を諦めた。そこまで重要な事ではない。

 2日程前に、初めて会っただけの相手だ。日本人という共通点が、あるだけでしかなかった。

 彰人はメルビスから離れて、メイジー達の下へ戻って行く。そちらでは、トーマスやアイリスと、議論が交わされている。

 アルファ達の行動を予想する為に、より詳しい話を聞いているのだ。まだ聞くべき事は多く残っている。


「アルファの体重は、どれぐらいあるの?」


 メイジーがトーマスへと尋ねる。地震と勘違いする程の揺れを起こせたのだから、相当重い筈だとメイジーは予想している。


「先週の計測では、80トンを少し超えたぐらいだった」


「どうりで……」


 20メートルの全長に、80トンもの体重。しかも堅牢な骨格まで持っているのだ。

 アクアノート全体が揺れる程の威力が、簡単に出てしまうのも納得だとメイジーは考える。

 彼女に続く形で、ソフィアもトーマスへ質問をする。どんどん驚異的な情報ばかり飛び出す。


「泳ぐ速さはどれぐらい?」


「アルファならば、最速で41ノットまで出せる。時速にするなら、およそ75キロだ」


「……驚いたな、もう殆ど高速船じゃないか」


 途中から会話に混ざった彰人が、その記録に驚いている。時速で考えると、乗用車でも出せる速度だ。

 高速道路を走る車よりも遅い。しかしそれは、地上での話だ。海中で、しかもあの巨体で、時速75キロだ。

 恐ろしい程の筋力を、アルファは有している事になる。普通のシャチですら、時速60キロ台が限界だ。

 シャチのオスで最大10メートル程度。半分の全長でもそれが限界だ。倍のサイズながらも、シャチを超えている。

 

「信じられないわ……同じぐらいのサイズで言えば、マッコウクジラだけど……全速力で24ノットよ?」


 イルカやシャチなど、クジラ(もく)を主に研究しているメイジーは、クジラの知識も豊富である。

 そんな彼女からすれば、クジラと変わらない体でありながら、倍近い速度を出すアルファが理解出来ない。

 クジラ目の最速記録は、ヒゲクジラ類のイワシクジラと、ハクジラ類のシャチだ。

 イワシクジラの基本的な大きさは、16メートル前後までで、最高速度はシャチと変わらない。

 過去の記録では、アルファと変わらないサイズも確認されているが、それでも時速70キロは超えない。


「最高の生物兵器を目指したのですから、これぐらいは当然でしょう」


 自分で作ったわけでもないのに、何故かアドルフが得意げにしている。そんな彼の反応に、ソフィアが呆れる。


「その最高傑作さんに、私達が狙われているんだけど? 貴方、まだ状況が分かってないの?」


 冷たい視線を受けて、アドルフは黙る。あの大きな牙が、自分達を噛み殺そうとしているのだ。

 今朝までとは何もかも、状況が変わっている。バート達が作った生物兵器は、矛先をこちらに向けた。

 他国の原子力潜水艦ではなく、麻薬密売組織でもない。作った人間達を、恨み攻撃しているのだ。


「しかし海中で41ノットを出せるなら、あの揺れも納得だ。相当なパワーだよ。もしかしたら、窓だけでなく、施設全体に致命的なダメージが入っているかも……」


 彰人の考察に、誰も否定的な意見を言えない。その可能性は、かなり高いのではないか。

 またしても嫌な予想が、追加されてしまった。複雑な想いを抱えながら、彼らはエレベーターを目指す。

50話で完結する予定で、今43話まで書けています。

この土日で書き切るか、31日まで掛かるか、という進捗状況です。

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