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第36話 南側の悲劇

昨日3/26。イギリスの大学が、オオメジロザメは仲間との絆を築くと発表しました。

つまり本作の人間を恨み身内を大事にする設定は、起こり得る可能性がより高くなりましたね!

 アルファ達の存在を知らない南側では、被害がどんどん拡大していた。

 彰人(あきひと)の予想通り、既に大きな窓は北側45階を除き、全て破壊されている。南側のプールを囲うフェンスなど、何の意味も無かった。

 基幹システムの崩壊により、全てのフェンスから出ていた電磁波や超音波、磁気等が全て消失。

 フェンスや壁へと近づかせない効果が無くなった。そうなればもう、アルファ達にとって障害はない。

 細かく仕切られていたフェンスは、アルファが率先して破壊。どこへでも行けるようになってしまった。

 

 南側は10階と35階の大窓から、海水が流入している。何も知らない人々が、水中に沈んでいく。

 事態はそれだけでは済まない。飼育されていた、10階のホホジロザメまで、中へ侵入している。

 あくまで人間への攻撃が目的のアルファ達は、他の生物への攻撃をあまり行っていない。

 空腹を満たす為の食事こそするが、主目的ではない。そのせいで、他の危険な生物も野放しだ。

 通常のオオメジロザメや、イタチザメ、シュモクザメ等も含めて、アクアノートでは飼育されている。


 小さな生物であっても、ヒョウモンダコやウミヘビ等がいる。海の危険な生物が、大体揃っている。

 南側の10階や35階から、様々な生物が施設内へ迷い込む。その上で、ガンマとデルタが内部で暴れる。

 単なる窒息死を含めれば、アルファが最も人間を殺している。だが直接殺した数は、そう多くない。

 噛み殺した数ならば、ガンマとデルタが圧倒的だ。施設への破壊行為も、かなりの数に上る。

 扉を壊した先に、人間が居ると子供達が学んでしまった。結果、猛進撃が始まった。


「し、浸水だー!」


「居眠りしている場合か! 早く逃げるぞ!」


 ガンマとデルタが通れるサイズの出入り口が、どんどん破壊されて行く。それはもう一切の容赦なく。

 南側の一般職員が働いている倉庫にも、その牙が向けられた。海水と共に、2匹は人々を襲撃する。


「お、おい! アレを見ろ! デカいサメが居る!」


「高い所へ上がるんだ!」


「おい! 早く登れよ!」


 まだ胸辺りまでしか、浸水が進んでいない。徐々に水位が上昇していくが、その速度は緩やかだ。

 ここでは比較的近くに、大ホールや遊戯施設があった為、一気に水位が上がらなかった。

 しかしいずれは、天井まで海水が届くだろう。どうにか別の階へ逃げたいが、人々は一旦棚の上に避難した。

 水中から突き出た背びれが、作業をしていた男性達の周囲を回っている。移動する気配はない。

 偶然にも倉庫は室内が広く、天井までは4メートルもある。棚の高さは3メートルちょいで、まだ水位が足りない。


「こっからどうすんだよ!」


「俺に聞くな!」


 避難した人々が、これからの行動に悩む。この場から逃げようにも、水中には大きな化け物が居る。

 ガンマとデルタは、人間を狙って出て行こうとしない。少しずつ、水位が上昇を続けている。

 あまりゆっくりしている余裕はない。彼らは天井を巡っている換気ダクトを、利用出来ないか思案する。

 剥き出しのダクトは、大きさだけなら、人間でも通れそうだ。だが、見るからにステンレス製だ。

 大人が一気に入り込むと、強度的不安が残る。天井から伸びている支柱も、明らかに細い。


「悩んでいる場合か! 俺は先に行かせて貰う!」


「あっ、おい! 待てよ!」


 分厚い胸板を持つ大柄の男性が、我先にとダクトへ向かう。棚の一番上からなら、手を伸ばせば届く。

 腰に下げた工具入れから、ドライバーを取り出す。金属製のネットを外し、ダクトの中へ入って行く。

 男性が匍匐前進で、ダクトの中を進んで行く。動くたびに、ギシギシと嫌な音が鳴っている。

 

「だ、大丈夫かよアレ……」


「見守るしかないだろう」


「アイツが大丈夫なら、俺達も行ける筈だ」


 この中で一番体の大きな彼が通れるなら、何とかなるかもしれない。僅かな希望に縋る人々。

 しかし無常にも、パラパラと天井から破片が落ち始める。ダクトを支えている支柱の、接続部分から。

 パキパキと音を立てながら、天井の素材が少しずつ剝がれていく。不味いと思った周囲の男性達が、戻るように叫ぶ。

 中の男性も、嫌な予感がして戻ろうとする。だがその瞬間に、支柱が壊れて天井から外れる。

 滑り台のようになってしまい、入り口から男性が投げ出される。勢いよく、水面に向かって。


「ちくしょおおおおおお!?」


 派手な着水音を立てながら、背びれが巡回している海中へダイブ。棚の上から人々が、悲痛な思いで見守る。

 着水した水面に、真っ赤な色が広がっていく。嘆く者、怒りを顕わにする者、神に祈る者。

 まだ無事でいる彼らは、仲間の死を悲しむ。そんな彼らに向かって、更なる追い打ちが襲う。


「うわぁ!」


「アイツら! 棚を倒す気か!?」


「バカな!? サメにそんな知能はないだろ!」


 少しずつ上昇した水位は、2メートルを超えた。棚の半分以上が、海水に浸かっている。

 そうなれば、6メートルもあるガンマとデルタなら棚を倒せる。2匹で交互に体当たりを繰り返す。

 棚の上に居る彼らは知らない。2匹がただのサメではなく、シャチの性質も持っているという事を。

 

 氷床の上からアザラシを落とすように、連携して人間を落とそうとする。執拗に体当たりを続ける。

 必死で耐える男性の1人が、落ちそうになって天板の端を掴む。頭が海面に向かって突き出てしまう。

 その瞬間を狙って、デルタが海面から飛び出す。まるでイルカやシャチが、ジャンプするように。

 

「おい嘘だろ!?」


「なんだアレは!?」


 頭部を噛み千切られた男性の体が、力を失い棚の上から落下する。水面にまた1つ、赤い染みが出来る。

 1人分軽くなったせいか、続くガンマの体当たりで棚が倒れる。全員が投げ出されて、2匹の餌食となった。

今日も2話分更新します。

土日は少し多めに更新すると思います。

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