第32話 合流
本日の更新2話目です。
南側30階、宿泊エリアにてルーカス達は集まっていた。一旦揺れが収まったので、対応を協議していた。
集まっているのは和美を除く招待客5人と、案内役であるアドルフに監視役4人、合わせて10人だ。
今の内に地上へ出るべきなのか、それとも事態が落ち着くのをここで待つべきか。
南側の最北端、20階まで繋がっているエレベーターの前で、話し合っている。
「おいアンタ、少佐は何て言ってるんだ?」
ルーカスがアドルフに詰め寄る。だがアドルフは、分からないとしか言えない。
監視役の4人も同様で、何も分かっていない。方針が定まらず、これからの対応が決まらない。
「ソフィア、和田さんを見ていない?」
彰人は同郷だと思っている和美がおらず、心配している。メイジーとは共に居たので問題なし。
ソフィアとルーカス、トミーも揃っており、和美1人だけが行方不明だ。少なくとも彼らの間では。
「分からないわ。暫く見ていないわね」
ソフィアは黒髪のドレッドヘアを、左右に揺らしながら否定する。メイジーも和美を心配している。
一度彰人と共に周辺を探してみたが、どこにも姿は無かった。既にアルファの腹の中だとは知らない。
もう一度探すべきか、彰人とメイジーはソフィアと相談している。トミーは我関せずという態度だ。
「地上へ避難したのかしら?」
「どうだろう? 有り得ない話ではないけど……」
メイジーと彰人が声を上げた時、北側と繋がるドアから音がする。ピッという電子音が鳴った。
全員がそちらへ視線をやると、ドアが開いてバタバタとメルビス達が、慌ただしく姿を現す。
バートの姿もあり、ルーカス達は何事かと目を丸くしている。30人ほどの人々が出て来ると、荒々しくドアを閉めた。
困惑するルーカス達を放置したまま、バートがメルビスの胸倉を掴んで壁に叩きつける。
「どういう事だ! 何が起きた! お前は知っているんだろう!?」
「ガハッ……ちょ待っ……ぐるし……」
容赦のない追求が突然始まって、ルーカス達は余計と混乱する。だが北側から来た人々は、誰もバートを止めようとしない。
ルーカス達と違って、纏っている空気もまるで違う。悲壮感や多大な疲労を感じさせる。
戦場帰りかとルーカスが思ってしまう程、重苦しい雰囲気がバート達から漂っている。
とりあえず説明を求める意味も込めて、一旦ルーカスが割って入る事を決めた。
「おいおい、ちょっと落ち着いてくれ。離してやれよ少佐、これじゃあ彼、話せないだろう?」
「……ふんっ、丁度良い。今ここに居る全員の前で、何が起きているのか説明しろ」
怒りのままに再度壁へメルビスを叩きつけてから、バートは乱雑に手を離した。そのままメルビスはへたり込む。
やっとまともに呼吸が出来るようになり、咳き込みながらメルビスは起き上がった。
それから気まずそうにしつつも、メルビスは今起きている事を話し始める。
「23時過ぎぐらいに、あのワダだか何とかって女が、50階に来たんだ」
最初はただ、リモコンの使い方を知りたがっただけだと思った。協力者になったから、教えても構わないと考えた。
次第に要求はエスカレートしていき、つい欲求に負けて全部話してしまった。機密情報の多くを。
何もかも全て話したわけではないが、重要なデータの在り処なども漏らしてしまった。
言われた通りトイレで待っていても、中々姿を現さない。おかしいと思い始めたら、停電が起きた。
予備電源に切り替わったので、研究室へ戻ってみる事にした。そうしたら大きな揺れが起こり、転んでしまった。
「それでもどうにか研究室に戻ったら、アルファが窓に体当たりを何度もしていた! 止めようとしたらリモコンが偽物になっていて、基幹システムが全部ぶっ壊れてた! 絶対あの女、何かしたんだ!」
そこまで聞いたバートが、再びメルビスの胸倉を掴もうとする。ルーカスがどうにか抑えて、話を続けさせる。
後はもうバート達が知っている内容とそう変わらない。直通エレベーターが使えず、40階までのエレベーターを使用。
バート達と合流し、トラムに乗って北側中央へ。30階のエレベーターに乗り、ここまでやって来た。
何も知らなかったルーカス達は、ステーションで起きた悲惨な事件を聞き、開いた口が塞がらない。
「何故そうペラペラと喋った! 相手がどんな人間か、お前はよく知らないだろう!」
バートがルーカスに抑えられたまま、激怒しながら糾弾する。あまりにも警戒心がなさ過ぎると。
誰でも分かるような典型的なハニートラップに、まさか引っ掛かる程のマヌケとは思わなかった。
バートはメルビスを責める。お前の責任だ、どうするつもりだと大声で叫ぶ。だが、メルビスも黙っていない。
「あの女を連れて来たのは、所長、アンタだろう! 僕は頼んでなんかいない! そもそもアイツ、元からこうするつもりで来たんだ! でなければ、リモコンの偽物なんて持っている筈ないだろ! 保安部と所長と、そこの木偶の坊の責任だ! 僕じゃない!」
メルビスはバートと保安部の隊員達、そしてアドルフを順番に指差す。場の空気は、最悪としか表現のしようがなかった。




