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第29話 知性を持つ化け物

本日の更新2話目です。

 人間達が混乱している間に、アルファ達は着実に事を進めている。シャチの狩りと同様に。

 シャチは非常に高い知性を持つ生物である。鏡に映った自分を、認識する事が出来る。

 簡単なパズルであれば、自ら解く事が出来る。自分達の言語で会話を行い、方言まで存在する。

 海の王者の肩書は、決して侮れないのだ。通常のシャチであっても、かなり重たい脳を持つ。

 その重さは、哺乳類の中でマッコウクジラに次ぐ重さだと、これまでの研究で判明している。


 その頭脳を用いて、高い社会性とチームワークを会得し、彼らは海で生きて来た。

 狩りの時に発揮される技術は、見事の一言に尽きるだろう。彼らは、氷上のアザラシを孤立させる。

 波を起こして追い込み、氷床を割り、逃げられないようにしてしまう。サメとは根本的に狩り方が違う。


 サメは主に、高い嗅覚とロレンチーニ器官を利用した狩りを行う。その嗅覚は、数百メートル先まで嗅ぎ分ける。

 ロレンチーニ器官とは、軟骨魚類が持つ特殊な器官である。サメやエイなどが持っており、僅かな電流でも感知出来る。

 人間も含めた多くの生き物は、生体電流が体内で流れている。その僅かな電気を感じ取る事で、獲物の位置を特定している。


 ではアルファ達はどうなのか。答えはその全てを所有している。シャチと同様に、エコーロケーションが使える。

 超音波を巧みに使い、周囲の状況を知る事が出来る。鳴き声を使い分けて、会話が出来る。

 協力して獲物を追い詰める、狩りの技術を知っている。サメと同じ、ロレンチーニ器官を持っている。

 人間が発する生体電流を、感知する事が出来る。オオメジロザメと同等の、嗅覚と適応能力を持つ。


 全てはバートが求めた、生物兵器としての能力だ。最新鋭の潜水艦をも超える程の、探知能力を持たせた。

 アクティブとパッシブ、両方のソナーを持ち、敵艦が発する微弱な電流を感知する。

 敵には感知されない言語で連携を取り、静かに忍び寄り攻撃する。大きく頑丈な肉体は、その為にある。

 最終的には、武装も持たせる想定だった。しかしそこまで進む前に、彼女達は自由を手に入れた。


 解き放たれたアルファ達は、メルビス以外の人間が知らない内に、行動を開始している。

 最初は北側50階を攻撃し、内部に海水を送り込んだ。海水がなければ、彼女達の能力を活かせない。

 同時にガンマとデルタが、施設内へ侵入している。施設内を海水で満たせば、どこに居ても会話が出来る。


 シャチは最大で10メートルまで育つ。その肉体が倍になれば、当然脳の大きさも上がる。

 普通のシャチで、6歳児相当の知能を有する。ではアルファはと言えば、10歳児以上の知能を得た。

 まだ子供のガンマとデルタは、ギリギリ6歳児に届かない。だが4歳児レベルの知能を持つ。


 そんな彼女達が、アクアノートをどれだけ理解しているか。それは――ほぼ全てと言っていい。

 シャチはイルカの会話も理解する。南側に行った事がなくても、イルカを通して知っている。

 クジラの言語を聞いている。クジラ(もく)の生物達から、様々な情報を得ていたのだ。

 自らの目で見ていなくとも、反対側にも憎き人間達が居ると知っている。バート達は、彼女達を甘く見ている。

 

 怒らせてしまった事が、どれだけ大きいか――全く分かっていない。通常シャチは、人間を襲わない。

 報復される事を理解しているし、味方をしてくれる事も知っている。人間に助けを求める事もあるぐらいだ。

 助けて貰ったお礼に、捕まえたエイ等の獲物を、譲ろうとする返礼の意思すら持っている。

 兵器としてではなく、個として接していれば、結果は違ったのかもしれない。だがそれは、今更言っても仕方がない。

 番を殺された返礼、父親を殺された返礼。お礼参りとしての復讐が、人間達の知らないところで始まっている。


 子供達を送り込んだアルファは、次の行動へ移っている。暗い夜の海を、上昇していく。

 北側の5階には、50階と似た大きな窓がついている。VIP達に、アルファ達を見せる為の観覧室だ。

 何度もそこへ呼び寄せられて来たので、彼女もよく知っている場所だ。当然ながらそちらの窓も、50階と同じ素材だ。

 メタクリル樹脂では、アルファの体当たりに耐えられない。誰も居ない観覧室へ、アルファが再び攻撃を開始。

 何度も体当たりを繰り返し、アクアノートへ衝撃を与える。再び発生した揺れに、人間達は慌てている。


 しかし彼らの殆どが、原因を理解していない。停電の裏で起きている大事件に、気づいていない。

 向けられた憎悪を知らない。もしアルファが、ただのシャチだったら。単なるオオメジロザメなら。

 ここまでの事件には、発展しなかっただろう。シャチは人間との親和性を持っている。

 だが彼女達には、人食いザメのDNAが含まれている。オオメジロザメには、シャチ程の知能はない。

 でもアルファ達には、その高い知性がある。メガロドンのDNAにより、マッコウクジラ程の巨体を得てしまった。

 

 海で最上級に危険な生物達の融合体が、強い憎しみを人間へ向けている。

 怒りに染まったアルファの体当たりは、観覧室の窓を破った。北側の5階からも、海水が流れ込み始めた。

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