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第20話 作られた生命

 海中から招待客達を見る、巨大な6つの目。恐ろしく鋭い歯が、口から覗いている。

 ずらりと並んだ歯は、どれも凄まじい切れ味を持っていそうだ。大きさは人間の手と、殆ど変わらない。

 あんな物で食らいつかれたら、人間などひとたまりもない。簡単に食い千切られるだろう。

 かつてメガロドンは、クジラの骨すら嚙み砕いていたと言われている。人間の骨では、耐えられる筈もない。

 そんな知識が無かったとしても、海で遭遇したら死を覚悟する凶悪そうな顔をしている。

 

「コイツは純粋なメガロドンではない。我々が手を加えている」


 バートは優雅に泳ぐ巨大なサメの前に出て、ルーカス達に向かって話している。

 まるで自分の飼い犬でも紹介するかのように。だが彼の後ろに居るのは、そんな可愛い存在ではない。


「始まりは10年前だ。2016年の春、日米合同演習を日本の南、ドラゴントライアングルで行っていた。ルーカス、君がイラクへ派遣されていた時の話だ」


「……」


 ルーカスは嫌な記憶を思い出し、顔をしかめる。イラクでの激しい戦いの中、散って行った仲間達の記憶だ。

 彼はその事を理由に、最終的には軍を辞めた。2017年にアメリカ本土へ戻り、その3年後に退役。

 多くの仲間を目の前で失った苦しみは、軍人であり続ける理由を奪うには十分過ぎた。


「君が帰って来た時に、私は軍を辞めていた。しかし、軍人としての矜持までは失っていなかった」


「……それとソイツに、何の関係がある?」


「大いにあるさ! 我々はあの合同演習で、最高の材料を見つけたのだ!」


 バートは語る。当時の心境と共に、大発見をした話を披露する。場所は小笠原諸島の南だ。

 ドラゴントライアングルと呼ばれる魔の海域、日本の東京からヤップ島近海までに存在する魔の三角形。

 これまでに、謎の海難事故が複数起きている海域だ。その通過中、奇跡的な遭遇を果たす。

 最初に気づいたのは、日本側の潜水艦。正体不明の大きな影を発見し、アメリカ側にも共有。


「あの日、我々は衰弱した若いメガロドンを発見した。秘密裏に捕獲し、アメリカへと持ち帰った」


 バートの発言に、学者組が大きく反応する。本物の生きたメガロドンを、捕まえたというのだ。当たり前の話である。


「ま、まさか……今もアメリカに?」


 真っ先に声を上げたのは彰人(あきひと)だ。サメの専門家としては、聞き捨てならない情報だ。

 是非そちらも見てみたい。そう期待してつい、言葉が出てしまった。しかしそれをメイジーが遮る。


「待って彰人。今はそれよりも、発見したのに黙っていた事を責めるべきだわ」


 綺麗な青い目は、静かな怒りに燃えている。世紀の大発見を、10年も世界に黙っていた。

 その上、自国に持ち帰るなど、許される行為ではない。生態系を破壊しかねない、身勝手な振る舞いだ。


「まあ落ち着きたまえよ。順番に話そう、まず捕まえた個体だが、衰弱から回復せずに死んだ。黙っていたのは、軍事的な理由からだ。君の母国だって、軍事機密を他国に教えないだろう?」


「軍事的って、貴方何をするつもりなの?」


 メイジーはバートが何を考えているか、全く理解出来なかった。メガロドンに軍事的意味なんて、ない筈だと。

 彰人はせっかくの個体が死んでしまった事を嘆きつつ、メイジーと同様にバートを怪しむ。

 3人目の学者、ソフィアもバートを信用出来ない。言っている事と、現在の状況は目茶苦茶だ。

 黒髪のドレッドヘアを揺らしながら、バートに対して抗議を始める。運び方に問題があったのではないかと。


「専門家を介さずに捕まえたでしょう! サメの運搬は、とても難易度が高いのよ!」


「どうせ弱っていた個体だ。DNAさえ入手出来ればそれで良かった。水族館で飾る為に、持ち帰ったのではないからな」


 4人目の学者、遺伝学者の和美(かずみ)は目を見開いている。彼女からすれば、是非とも塩基配列を見てみたい。

 学者達の中で、和美もどちらかと言えば彰人寄りだった。興味がないとはとても言えない。

 話を聞いていたルーカスは、ある可能性に思い至る。バートが何をしようとしているのか。


「……DNAだって? 少佐、アンタまさか……」


 目の前に居る巨大なサメと、バートの発言。そして何かを行っているらしいリモコン。

 暴れもせずに、大人しく従っているサメ。窓の側をグルグルと泳いでいる。()()()()()()()()()()()()()()()()

 ルーカスから話を聞いていた彰人も、バートが行っている研究の真意に気づく。ハッとした表情でバートを見る。


「まさか……生物兵器として、使うつもりですか!?」


「そうだとも筑波先生。やはり貴方は、勘が良いらしい」


 バートは笑顔で彰人を見ている。まさかの発言に、招待客の殆どが引いている。トミーただ1人を除いて。

 彼だけは、興味深そうに巨大なサメを見ている。トミーは金にさえなるのなら、商売の方法は何でも構わない。

 他の5人はバートに対して、厳しい視線を向けている。生物兵器としてメガロドンを生産するなんて、人道に反する行為だ。

 特に生物と関わる学問を学んで来た4人は、嫌悪感を表情に出している。生命への冒涜だと主張する。

 彰人は初見で見抜いた事が1つある。それはメガロドンらしき生物の外見的特徴が、どう見てもおかしいのだ。


「一体あの3匹に、何をしたんですか! 体型と鼻の形状からして、あれはオオメジロザメだ。だがあんなに大きくはならない。何をどう手を加えたんです!?」


 メガロドンは、ホホジロザメの近縁種だと見られている。本来なら、体は真っ直ぐで鼻先が尖ったフォルムの筈だ。

 しかし今目の前に居るのは、胴が太く鼻先に丸みがある。これはオオメジロザメが持つ特徴である。


「まだ説明の途中だ。話は最後まで聞くものだろう?」


 そう言われては、彰人も黙るしかない。全て話すというのであればと、一旦は黙って聞く事にした。

サメは軍事利用するもの。

明日からはもう少し、小出しで更新します。毎晩更新で今月中に完結させます。

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