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幕間 とある研究員の日記

対応:当該職員の拘束完了

状況:背後関係の調査中、終わり次第処分する事

 


■2024年 3月17日


 知人のお陰で、アクアノートに就職する事が出来た。凄い倍率だと聞いていたけど、採用されて助かった。

 給料は良いしボーナスも出る。無茶苦茶な勤務時間でもない。大学を出て就職に困っていた中で、幸運に見舞われた。

 これもきっと神のご加護だろう。毎週教会に通っておいて正解だった。やはり無神論者の言う事は信じなくていい。

 4月からアクアノートで働けると、両親に伝えたら泣いて喜ばれた。良い報告を出来たと思う。

 今の内から出発の準備を始めよう。職員専用の宿泊施設もあるという。これでアパート暮らしも終了だ。


■2024年 4月1日


 ワオ! これがアクアノートか! なんて凄い設備なんだ! 大学の研究室の何倍も良い環境が揃っている。

 しかも俺のような若い研究者でも、殆どの施設が利用出来るらしい。使わせて貰える私室も、高級ホテルみたいだ。

 レストランやバーもあるし、ジムやリゾート施設まである。離職率の低い理由が分かったよ。

 こんなのニューヨークの一流企業で働くよりも、遥かに素晴らしい環境じゃないだろうか?

 高い家賃を払いながら、高いハンバーガーを食う必要がない。ニューヨーカーよりも健康的な生活が出来る。

 これからの日々が楽しみで仕方がない。明日からの新人研修に備えて早く寝よう。


■2024年 4月15日


 実際に働いてみて2週間が経った。俺が担当しているのは、ニシオンデンザメについての研究だ。

 長寿で有名なツノザメ(もく)の最も大きなサメだ。最大で7メートルを超える巨体を持っている。

 最大の特徴は殆ど不老と言い切ってもいいその生態だ。現在分かっている範囲で、最大500歳を超える個体が確認されている。

 この老化耐性を研究すれば、人間も不老になれるという説がある。資産家達は、若返り薬を欲しているらしい。

 ここアクアノートでも、この研究が行われている。俺はそっちの担当ではないから詳しくは知らない。

 あくまでニシオンデンザメの生態について、詳しく調べているだけ。長生きに興味はない。何より神の教えに反する。


■2024年7月20日


 ここでの生活にも随分と慣れて来た。もうアクアノート以外で働ける気がしない。最高の労働環境が揃っている。

 同級生達の話を聞くと、クソみたいな上司に当たった者や、劣悪な環境で働いている者がいる。毎週神に祈らないからだ。

 俺はアクアノート内の教会で、毎週祈っている。この幸運を失わずに済んでいるのは、神のご加護なのだ。

 今時神を信じている奴なんて居ないと、笑っているからそんな目に遭うのだ。信仰心を失った者に未来はない。


■2024年8月9日


 同僚の可愛い子と知り合いになれた。ブロンドの髪が良く似合う可愛い女性だ。彼氏は居ないと言っている。

 だが焦ってはいけない。俺はいきなり下心を剥き出しにするような、頭の悪い連中と違う。

 大麻で知性を失った奴らと、同じ事はしない。あくまで同じ研究者として、仲良くなろうというだけの話だ。

 俺はただ、より良い関係になれればいいと思っているだけだ。やましい気持ちなんて一切ない。


■2025年2月6日


 最近聞いた噂なのだが、一般職員が入れない北側の研究エリアでは、深海から引き揚げたエイリアンを匿っているという。

 合衆国が関与しており、極秘の研究だから隔離されているのだという。そんなの馬鹿げていると俺は言い返した。

 だけど北側で何をしているのか、一切知らないのは確かだ。これまでにも色々な噂を聞いた事がある。

 不老薬を作る為に、犯罪者を使って人体実験をしているとか。新しい未知のエネルギーを見つけたとか。

 どれも眉唾な話ばかりだ。しかし北側がどうなっているのか、気になるのは確かだ。少し見てみたいな。


■2025年 3月19日


 やってしまった。つい出来心で失敬してしまった。バーで酔っていた上級職員のキーカードを拾った。

 これがあれば、俺はアクアノートの北側を見る事が出来る。どんな研究をしているのか見に行ける。

 だが余計な事をせず、落とし物として提出すべきだとも思う。今ならまだ引き返せる。

 だけど今なら見に行く事が出来る。ちょっと借りるだけで、悪意はない。何かを盗むつもりじゃない。

 ただ見に行くだけが、大きな罪になるだろうか? 元々守秘義務を破るつもりはないのだから。


■2025年 3月20日


 何て事だ!? 信じられない! アクアノートはとんでもない研究をしていた! あれが本当の姿なのか!?

 あんなもの見た事もない。あまりにも巨大なモンスターを飼っていた。恐ろしくて思い出したくもない。

 だが記憶に刻み込まれたあの姿が、俺の頭から離れてくれない。悪魔のような姿が忘れられない。

 あんなものがすぐ近くに居たなんて、知りたくなかった。もう怖くて海を見る事すら拒否したい。

 海の中にあんな化け物が居ると知ってしまった今では、二度と船に乗りたくない。陸地に帰って引きこもりたい。

 ああ神よ、俺を助けて下さい。今すぐこんな地獄から解放して下さい。十字架を持つ手が震えて止まらないんだ。

続きはまた明日の夜に上げます。

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