完結編!!
時は流れ、気づけば五年が経っていた。
その日、筱月は街を散歩していた。
穏やかな午後の空気の中、不意に——
「わっ!」
元気いっぱいの小さな子どもが、勢いよくぶつかってきた。
思わず足を止め、顔を上げた瞬間、
筱月は目を見開く。
——似ている。
目の前の少女は、どこか曉雨に似た面影を持っていた。
「お姉ちゃん、私たち……どこかで会ったことある気がする!」
少女は首をかしげ、無邪気にそう言う。
その一言、その声色。
その“間”。
筱月の胸が、大きく脈打った。
——間違いない。
一瞬で理解した。
目の前にいるこの子が、誰なのかを。
込み上げる感情を必死に抑えながら、筱月はそっと少女の手を取る。
温かい。
確かに、触れられる。
五年前には、叶わなかったこと。
「……おかえり。」
小さく、噛みしめるように言った。
「戻ってきてくれたのね。
私の、大切な友だち。」
胸の奥が熱くなり、涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。
筱月は、少女の表情や仕草を、慎重に見つめた。
そこには、確かに——
あの頃の曉雨の面影があった。
少女は、ぱっと明るい笑顔を浮かべる。
「お姉ちゃん~!
私たち、最近ここに引っ越してきたの!
これから、ご近所さんだよ!」
その屈託のない笑顔は、まるでこう言っているかのようだった。
——私は、ちゃんと帰ってきたよ。
筱月の胸に、言葉にならない喜びが広がる。
彼女はその場にしゃがみ込み、少女と同じ目線になって、微笑んだ。
「そう。
これから、ずっとご近所さんね。」
「じゃあ、たくさん一緒に遊ばないと。」
少女は嬉しそうに、何度も頷く。
——今度こそ。
筱月は、心の中で誓った。
もう、二度と。
この小さな命を、悲しみにさらすことはしない。
必ず守る。
平穏な日々を。
笑顔あふれる未来を。
この子が、幸せな人生を歩めるように。
筱月は、少女の手をぎゅっと握りしめた。
それは、
失われた過去への弔いであり、
新しい未来への、確かな一歩だった。
——完——




