小さな幽霊の正体
警察は迅速に捜査を進め、現場に残された指紋や DNA サンプルを採取し、失踪者データベースとの照合を行った。
その結果、一人の行方不明の女児と一致する情報が見つかる。
身元は、七歳の女の子。
名前は——曉雨。
警察はすぐに、曉雨の両親へ連絡を入れた。
訃報を知らされた瞬間、両親は全身を震わせ、言葉も出ないまま涙を流した。
愛する娘の死を、どうしても受け入れることができず、胸の内は言葉にならない悲しみで満ちていた。
警察は時間をかけて彼らを落ち着かせ、
「必ず全力で捜査し、犯人を突き止めます。」
と約束した。
曉雨の両親は語った。
娘は明るく元気な子で、誰かに恨まれるような覚えはまったくない、と。
なぜ、こんな残酷なことが起きたのか、想像すらできなかった。
その場に、曉雨の魂が静かに現れていた。
だが、両親はその存在に気づくことができない。
曉雨はそっと手を伸ばし、悲しみに歪む両親の頬に触れようとする。
しかし、その手は虚しくすり抜けてしまう。
「パパ、ママ……ここにいるよ。」
必死に呼びかけても、その声は届かず、空気に溶けて消えていくだけだった。
曉雨は両親を見つめ、涙を目に溜めながら、何もできない自分を噛みしめる。
幽霊となった今、彼女はもう生きている人と会話することができない。
ただ、泣き崩れる両親の姿を、見守ることしかできなかった。
警察の捜査は、やがて大きな進展を見せる。
曉雨を誘拐し、命を奪った犯人は、近所に住む許という男だった。
表向きは穏やかで人当たりの良い人物だったが、内心では子どもに対する歪んだ憎悪を抱えていた。
犯行当日、機嫌を損ねていた許は、下校途中の曉雨に目をつけ、
人目を避けてあの廃屋へと連れ去り、犯行に及んだ。
警察は許の自宅から、現場に残された物と一致する証拠を押収し、彼を逮捕した。
犯人がまさか隣人だったと知り、曉雨の両親は言葉を失った。
日常的に挨拶を交わしていた相手が、これほど残酷な行為をした現実を、信じることができなかった。
彼らは娘のために真実を公にし、事件はニュースとして報道され、社会に大きな衝撃を与えた。
厳正な処罰を求める声が、各地から上がった。
筱月は、自宅で静かにテレビニュースを見つめていた。
曉雨の事件に、大きな進展があったことを知る。
「……これで、やっと。」
真相が明らかになった今、小幽霊はもう成仏し、生まれ変わったはずだ。
筱月はそう思っていた。
そのとき、ひんやりとした気配が頬を撫でる。
顔を上げると、小さな幽霊が、いつものようにふわりと浮かんでいた。
「……まだ、ここにいるの?
もう、転生したんじゃないかと思ってた。」
思わず、そう口にする。
小幽霊は穏やかに微笑み、柔らかな声で言った。
「お姉ちゃん……最後に、お願いがあるの。
パパとママに、伝えてほしい。」
その声には、かすかな切実さが滲んでいた。
「大好きだって。
あの家の子どもでいられて、すごく幸せだったって。
もう痛くないし、これから生まれ変わるから……心配しないでって。」
筱月は静かに頷き、優しく答えた。
「……わかった。
ちゃんと伝えるよ。
あなたが、ずっとお父さんとお母さんを愛していたことも。
もう苦しんでいないってことも。」
その言葉を聞いて、小幽霊はほっとしたように微笑んだ。
「ありがとう、お姉ちゃん。
……あなたは、私が一番信じている人だよ。」




