お見苦しいところ?
「……その、お見苦しいところですが……」
「……いや、全然お見苦しくないんだけど」
「ははっ、そうだな。お前んとこのボロアパートとは天と地の――」
「なんで知ってんの!? あと、ボロアパートとか言うんじゃない!!」
それから、ほどなくして。
そう、控えめな口調で告げる海佳。……いや、全然お見苦しくないんだけど。あと、なんで藤二は私の住処を知って……いや、驚くことでもないか。むしろ、あんだけ色々知っててそこだけ知らなかったらそっちの方が驚きなくらいだし。
「…………すっご」
「……そ、そう?」
「……うん、まるでヨーロッパの宮殿みたい」
「ははっ、そうだな。お前んとこの――」
「もういいわそのパターン!!」
思わず、感嘆の声が。と言うのも……案内していただいたリビングが、薄桃色を基調とした何とも絢爛なご空間でして。……いや、宮殿は流石に言いすぎたけど……うん、それにしてもびっくりだよ。ちょっとした貴族のお部屋と言われてもそこまで驚かないくらいには。……あと、ほんと私のことはいいから。お願いだから比較しないで。
ともあれ、改めて辺りを見渡すと――リビングとは思えぬ煌びやかな空間のほぼ真ん中に何だか高級そうな白いテーブル。そして、その遥か上にはやっぱり何だか高級そうなシャンデリア。それから、薄桃色の綺麗な壁には……えっと、宗教画? まあ、よく分からないけどすごそうな絵が。そして、その下には実物は初めて目にする立派な暖炉が……うん、流石にちょっとへこむ。……あと、我ながら説明がひどい。
「……えっと、お飲み物は何がいいですか? と言っても、ダージリンとドクペしかないんですけど」
「なにその二択!? ……じゃあ、ダージリンで」
「んじゃ、俺はドクペで」
「いやそっち!?」
その後、控えめな口調でそう問いかける海佳。いやなにその二択!? ……いや、もちろんドクペじゃダメなわけじゃないんだけど……ただ、この絢爛な空間からはあまりにも意外なワードだったからびっくりで。
……ところで、藤二さんがドクペと言った時、心做しか彼女の表情がパッと輝いたような……うん、私もドクペにしとけばよかったかな? まあ、もう遅いけど。
「……えっと、それでは改めて……私は、陽野海佳。私立双明中学の三年生です」
「……あっ、うん。私は、黒崎星佳。その、公立朋律高校の二年生です」
「俺は藤二天使。25歳のしがない会社員だよ」
「会社員なの!?」
それから、ほどなくして。
各々の飲み物を前に、各々たどたどしく自己紹介を始める私達。いや、藤二さんだけは至って平然としてるけど……うん、なんなの? その鋼のメンタル。あと、会社員ってマジ? どう考えても組織で上手くやってける気が……いや、そうでもないか。世渡りとか上手そうだし。あと、やはりと言うかダージリンは私一人で……うん、やっぱりドクペにしとけば良かった。
「……えっと、それでは……どうしましょう?」
「……うん、どうしよっか?」
その後、少しして控えめに尋ねる海佳。……うん、まあそうなるよね。片方が実は身内とはいえ、まるで初対面の相手が二人だもんね。この状況で戸惑わない人の方が相当にレアだろう。なので、意見を仰ぐ――というか丸投げすべく、隣の美男子へ視線を移す。……さて、こいつは何と――
「――んじゃ、とりあえず親睦会といこうか」
「「……へっ?」」




