言われなくても?
「……ねえ、藤二さん。ほんとに、こんなところにあるの?」
「ああ、間違いねえよ。海佳と俺の情報から勘案した結果、符号する場所は一つしかねえからな」
それから、翌日の昼下がり。
控えめにそう尋ねると、どこかをぼんやりと眺めつつ答える美男子。さて、今いるのは風光明媚な景色の映る電車の中――あの憎き女の住処へと向かう電車の中で。
ところで、海佳も両親が住んいでる場所は知らなかったとのことだけど、それでも一応は家族であるからして断片的な情報は得ていたようで。なので、海佳から聞き出したらしいその断片的な情報と、藤二さん自身が既に持っていた情報から母親の場所を特定したようで……うん、やっぱすごいねこの人。ちょっと悔しいけど、やっぱ頭がいいみたいで……まあ、それはそれとして――
「……ねえ、藤二さん。なんで、そんな普通なの?」
そう、躊躇いつつ尋ねてみる。……うん、我ながら何とも唐突かつ漠然とした問いだけど……でも、流石に分からないはずも――
「……はあ? なんだその質問。言ってる意味が分かんねえよ」
そう、何とも呆れたような表情でそんなことをほざく藤二さん。……うん、ほんとイラッとくる。あと、流石に分かるでしょ。……だって、まだ昨日の今日で……私なんて、今思い出しても身体中が熱くて仕方がな――
「……ああ、もしかしてあれのことか。随分といやらしい声出してたもんなあ、お前」
「……そっ、それはあんたもでしょ! ……あっ、すみません!」
すると、ようやく何の話か分かったようで揶揄うようにそんなことを言う悪魔の美男子。そんな彼へ思わず叫び、そして慌てて四方へと謝罪を述べる。……うん、気をつけなきゃね。疎らとはいえ、当然のことお客さんはいるんだから。
「…………ふぅ」
「ん、疲れたのか星佳。だったら休んてでいいぞ。事が終わったらちゃんと迎えに来てやるから」
「鬼かあんたは」
それから、数十分後。
風光明媚な山の中にて、息を切らしつつ立ち止まる私に振り向き告げる藤二さん。いや鬼かあんたは。こんなとこに一人で置いてくとかありえないでしょ。いつ帰ってくるんだよ。真っ暗になってたらどうすんだよ。……そう、ここはこう、手とか肩を貸してくれるとか、あるいはおんぶしてくれるとか……いや、流石にそこまで負担はかけたくないけども。
「……あれ?」
ふと、声が零れる。と言うのも、前を歩いていた藤二さんがふと足を止め大きな樹にもたれ始めたから。……えっと、もしかして――
「……少し疲れたから、休憩しようと思っただけだ」
すると、私の方を見ずにそう告げる藤二さん。……いや、疲れてるようには見えないけどね。でも、そういうことなら――
「……なんで、そこに座んだよ」
「あれ、もしかして照れてる?」
「……好きにしろ」
そう、怪訝そうに尋ねる藤二さん。私が、わざわざ彼のぴったり隣に腰を下ろしたからだろう。だけど、私の問いに少し目を逸らしボソリと答え……うん、言われなくてもそうするよ?




