表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

石垣原の影 ・ 第一章 炎の前夜

私は20年間、「大分県別府市乙原」や「別府の古戦場」「乙原の里の伝説」「大友宗麟の史跡」「本家の口伝」等、自分の先祖を調査してきました。


その結論として私の先祖が「乙原の里」で「隠し金山」を守る「大友宗麟の忍者」だと確信致しました。


YouTubeチャンネル「忍者チャンネル・大友宗麟の忍者」も開設いたしましたが、もっと多くの人々に

「大友宗麟の忍者」

を知ってほしい。ただそれだけの思いで、この作品を執筆する事となりました。



豊後国(大分県)別府石垣原。


関ヶ原の戦いの前哨戦として、東軍・黒田如水の一万もの兵が、西軍についた大友義統の兵、わずか700に猛烈な圧力をかけていた。戦線は膠着しているように見えながら、その内実は、大友軍の壊滅が刻一刻と迫る絶望的な状況である。


しかし、この石垣原の戦いには、地図にも歴史にも表に出ない**“もう一つの戦”**が存在した。


それは、戦場から遠く離れた山の奥、別府の湯けむりが立ち込める乙原おとばるの谷――


この谷に、大友宗麟が半世紀以上もの間、豊後の富の源泉として秘匿してきた金銀銅の採掘所と、それを鉄壁の如く守護してきた大友忍軍の存在を巡る、漆黒の**“影の戦い”**の物語である。


第一章 炎の前夜

慶長五年九月十三日――豊後国(大分県)別府湾から吹き上がる潮風は、どこか生温い、粘りつくような血の匂いを運んでいた。

日暮れの空は、まるで巨大な傷口のように赤黒く滲み、これから大地が焼け落ちることを予知しているかのように不気味な光を放っている。

場所は、豊後国(大分県)別府石垣原。

関ヶ原の戦いの前哨戦として、東軍・黒田如水の一万もの兵が、西軍についた大友義統の兵、わずか700に猛烈な圧力をかけていた。戦線は膠着しているように見えながら、その内実は、大友軍の壊滅が刻一刻と迫る絶望的な状況である。

しかし、この石垣原の戦いには、地図にも歴史にも表に出ない**“もう一つの戦”**が存在した。

それは、戦場から遠く離れた山の奥、別府の湯けむりが立ち込める乙原おとばるの谷――

この谷に、大友宗麟が半世紀以上もの間、豊後の富の源泉として秘匿してきた金銀銅の採掘所と、それを鉄壁の如く守護してきた大友忍軍の存在を巡る、漆黒の**“影の戦い”**である。

谷の入口、人知れぬ獣道に立つ一人の影が、夕焼けの炎に染まった空を、微動だにせず見上げていた。

その名は――伝兵衛でんべえ

歳は三十前後。痩身で粗野な風貌だが、その深い眼差しには、修羅場を潜り抜けた者だけが持つ、張り詰めた静寂が宿っている。彼は大友忍軍の中でも、宗麟直属の“影頭かげがしら”に近い存在であった。

彼の背には、大友宗麟の命により、南蛮の技術を取り入れて乙原の鍛冶場で密かに作られた火縄銃が背負われている。“秘匿銃”。その銃身は通常の和製火縄銃よりも幾分長く、わずか数丁のみ現存する、大友家の隠された武力の象徴である。

伝兵衛は、石垣原の戦場から流れてくる、武士たちの叫びや鬨の声ではない、別種の山風の揺らぎに耳を澄ませた。

――来る。

微かな、しかし獣のように確かな気配。それは、単に戦場から逃げ延びた落武者の足音ではない。練り上げられた、無駄のない足運び。土を踏みしめる、わずか一拍のリズム。その気配は、明らかに訓練された忍びのそれであった。

「……加藤清正の**かげ**か。」

伝兵衛の口から洩れた声は、怒りでもなければ、恐慌でもなかった。ただ、かつて幾度も死の淵を乗り越えてきた者だけが発することができる、冷徹で事務的な判断だった。

谷の奥からは、別府温泉特有の硫黄と、湯の沸き立つ蒸気が白く立ち昇っている。その強い硫黄の匂いこそが、この地が豊後の生命線である火薬原料の生産地であり、同時に大友忍軍の隠れ里である証でもあった。

その張り詰めた静寂を破るように、伝兵衛の背後から、岩肌を滑るような軽い足音がした。

「伝兵衛、敵影か?」

声の主は、くノ一・あかね

細身の身体を黒装束で覆い、まるで暗闇そのものが形を成したかのようだ。しかし、その瞳には、夜闇を貫くような鋭い光が宿っている。彼女は大友忍軍の中でも、水練と謀略に長け、“滝の影”の名で恐れられる女忍者だった。

伝兵衛は静かに頷く。

「そうだ。加藤清正軍の斥候。石垣原の本戦は、あくまで表の陽動に過ぎん。奴らは、宗麟様が最も護りたかった裏、この乙原の資源を奪いに来ている。」

茜の表情が、一瞬にして凍りついたように強張った。

「……ここが破られれば、隠し金山も、火薬の精製所も、すべて敵の手に落ちる。」

「そして、その資源と、俺たち大友忍軍の存在によって、宗麟様が長年積み上げてきた**“影の国”**は、跡形もなく消えるだろう。」

茜は唇をきつく噛み締めた。大友忍軍の絶対的な使命は、宗麟が南蛮貿易と鉄炮隊を支えるために、秘密裏に蓄積した資源――金銀銅、そして何よりも重要な硫黄と火薬の精製技術と物資――を、命を懸けて守り抜くこと。

大友の火薬は、温泉の硫黄を基に、ヨモギの葉と糞尿から作る人工硝石(硝酸カリウム)を混ぜて生成されていた。それは大友軍の鉄炮隊を、そして南蛮交易を支える**「力」であり、他国には絶対に渡してはならない「命綱」**だった。

だからこそ、この谷に侵入を試みる者は、一人たりとも生かして帰すわけにはいかない。

伝兵衛は背負った火縄銃を降ろし、肩に担ぎ直しながら、谷の上方へ視線を向けた。

「茜、谷の構造で最も脆い**“落石棚”**へ行け。奴らを誘い込む。仕掛けを使え。」

「……わかった。伝兵衛も、深追いはしないで。」

茜は静かに応じると、岩陰へと滑り込んだ。彼女の足音は、もはや石ころを転がす音よりも小さく、谷の構造を知り尽くした大友忍者だけが知る、**“影の道”**へと消えていった。

伝兵衛は再び、石垣原の方向を見た。空は、さらに赤黒い煙に包まれ、武士たちの悲鳴と雄叫びが、耳を劈くように風に乗って届いてくる。

「――俺たちの戦いは、あの表の戦よりも、もっと深く、暗い影の中だ。」

彼は低く呟き、**“秘匿銃”**の感触を確かめながら、忍び足で谷底へと降りていく。

大友宗麟の築いた**「影の国」を守る、大友忍軍の命を懸けた“影の戦い”**が、今、人知れず始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ