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美容院じゃないよ、床屋だよ!  作者: 双鶴


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7/7

小さな商店街の小さな床屋

えー、うちの店はですね、東京のとある商店街の角っこにございます。

隣は豆腐屋さん、向かいは文房具屋さん。どこも昭和から続く店ばかり。

最近はシャッターが増えましてね、ちょっと寂しくなりましたけど、

うちは今日も元気に営業中でございます。


床屋ってのはね、町の記憶を整える場所なんです。

髪を切りに来る人の話を聞いて、笑って、ちょっと泣いて。

その人の人生の“今”を、頭の形にして残すんです。


この前もね、昔から来てくれてる常連のマサさんが言うんですよ。

「床屋があるだけで、町が生きてる気がする」って。

ありがたい話ですけどね、わたしはこう返しました。

「町が生きてるから、髪も伸びるんですよ」って。


で、夕方になると、店のラジオから昭和歌謡が流れてきて、

椅子に座ったお客さんが「懐かしいなぁ」って言うんです。

その一言で、店の空気がちょっとだけ柔らかくなる。

それが、床屋ってもんなんです。


わたしはね、髪を切るたびに思うんですよ。

「この人の今日が、ちょっとだけ良くなりますように」って。

それが、理容師の祈りです。


で、閉店間際、椅子を拭いて、ハサミを磨いて、

店の外に出て、商店街を眺めるんです。

誰もいない道に、風が吹いて、

看板がカタカタ鳴ってる。


でもね、明日も誰かが来る。

髪を切りに、話をしに、ちょっとだけ強くなりに。


今日も誰かの心を、ちょっとだけ整えました。

それが、うちの仕事です。


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