モヒカンとツーブロック
えー、髪型というのはですね、時代を映す鏡でございます。
昭和の角刈り、平成のソフトモヒカン、令和のツーブロック。
どれもこれも、頭の上に時代が乗っかってるんです。
この前ね、大学生のリュウくんが来ましてね、こう言うんですよ。
「モヒカンにしてください。戦士っぽく」って。
いやいや、モヒカンってのはね、ただの髪型じゃない。
あれは“決意の刃”、人生の覚悟が立ってるんです。
で、わたし、バリカンを持ってこう言いました。
「リュウくん、君は何と戦うんだ?」って。
そしたら彼、真顔で「就活です」って。
……戦場、意外と現実的!
で、隣の椅子には高校生のカズくん。
「ツーブロックでお願いします。校則ギリギリで」って。
ツーブロックってのはね、境界線の美学なんですよ。
上と下、社会と自由、校則と反抗。
その間に、理容師の魂が宿るんです。
で、わたし、切りながらこう言いました。
「このライン、君の人生の分岐点だぞ」って。
そしたらカズくん、急に「じゃあ、右だけ残してください」って。
……分岐、極端すぎるだろ!
でね、モヒカンとツーブロックの二人が並んで座ってると、
まるで“戦士と外交官”みたいなんですよ。
片や突撃、片や交渉。
でもどっちも、自分を表現したいって気持ちは同じ。
髪型ってのはね、言葉より雄弁なんです。
「俺はこう生きたい」って、頭が語ってるんです。




