角刈りとスポーツ刈り
えー、髪型というのはですね、ただの形じゃございません。
その人の生き様、思想、そして…角度でございます。
この前ね、中学生のタケルくんが来ましてね、こう言うんですよ。
「角刈りでお願いします。TikTokでバズりたいんで」って。
いやいや、角刈りってのはね、バズるための髪型じゃない。
あれは“理容界の正方形”、魂の幾何学なんです。
で、わたし、定規と分度器を持ち出してね、角度を測りながら切るんですよ。
「ここは89度、ここは91度…あ、これは誤差だな」って。
もう、理容室というより数学研究室。
そしたら隣の椅子に座ってた常連のオジサンが言うんですよ。
「スポーツ刈りの方が機能的だよ。風の抵抗が少ない」って。
いやいや、スポーツ刈りはね、風を切るための髪型じゃない。
あれは“青春の疾走”、汗と涙の象徴なんです。
で、店内で論争が始まりましてね。
「角刈りは芸術だ」「スポーツ刈りは実用だ」って。
しまいには、タケルくんが「じゃあ、角スポーツ刈りってできますか?」って。
……それ、ただの短髪だよ!
でもね、髪型ってのは面白いもんで、
角刈りにしたら真面目になった気がするって人もいれば、
スポーツ刈りにしたら走りたくなるって人もいる。
髪型ひとつで、気持ちも変わる。
それが床屋の魔法なんです。




