第5話「双剣のレオナ」
バベル・トーナメント第5戦。
俺の前に立ちはだかったのは、まるで炎のような女だった。
いや、文字通り――炎の双剣を操るデュエリストだった。
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「よう。カイ=アルトってのはあんたかい?」
現れたのは、赤いジャケットにショートカット、目元に火花みたいな刺青を入れた女。
名を――レオナ=フレイムスカー。
両手には本物の剣を模したカードリーダー、背には燃えるようなタクティカルデッキ。
「悪いね、あたしちょっと、**“全員ぶった斬って優勝”**っていうポリシーなのよ」
「……カードゲームだよね、これ?」
「ルールがカードなだけで、やってることは殺し合いよ?」
笑顔が怖い。
いや、そういうの、一番やっかいなタイプだ。
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【DUEL START】
レオナ=フレイムスカー
▶ LP:4000/烈火・連撃型アサルトデッキ
カイ=アルト
▶ LP:4000/逆転・選択型デッキ(オリジン封入)
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「じゃ、さっさと燃え尽きてもらおうか!」
レオナは初手から超高速展開。
▶ 《烈火の剣士・バーニンガル》
▶ 《紅蓮斬光》:1ターンに2回攻撃可能
▶ 《熱狂の火計》:相手のLPに300ダメージ×攻撃回数
「2ターンで焼き尽くす。それがあたしの“流儀”」
「2ターンは、早すぎるって……!」
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次のターン、彼女は早くもLP残り1000まで俺を追い込む。
速い。強い。そして躊躇がない。
「お前みたいなタイプ、一番苦手なんだよな……!」
オリジンはまだ来ない。
他のカードは全て、地味な“選択肢”しか持たない雑魚ども。
だけど、それでも――選ばなきゃ進めない。
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(あいつは、力で相手をねじ伏せてきたんだろう)
(なら、俺は“力に見えないカード”で、選ばせるしかない)
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次のターン。俺はあえて、攻撃力の低いカードを召喚する。
▶ 《選択の案内人・ヴィルス》:攻撃力100/効果:相手に“攻撃かスキップ”の選択を迫る
「……おもしれぇ。選べってか?」
「そうだ。突っ込んできたら、次のターンこっちは全展開できる」
「スキップしたら?」
「手札を1枚、好きに追加できる」
「つまり、どっちにしてもあたしが不利になるわけだ」
「“そう見える”だけ、だけどな」
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レオナは、少しだけ悩んだあと――突っ込んできた。
力の信念に従って、一直線に。
その時だった。
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ドロー。
指先が、熱くなる。
▶ 《覇王の始祖》
「……きた。火に焼かれそうになって、ようやく現れたな、あんた」
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オリジン召喚。
全ての攻撃カードを打ち砕き、フィールドを支配する。
レオナの烈火コンボは崩壊し、LPはゼロへ。
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【DUEL END】
勝者:カイ=アルト
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倒れたレオナは、笑っていた。
「やるじゃない……。あたし、初めてだったよ。**“剣を収める”気になったの」
「……次、どっかで背中預けることがあったら、よろしく頼むよ」
「へぇ、そんなキャラだったんだ。てっきり燃やすしか脳がないかと」
「焼き尽くすのが全部じゃない。火は、灯すこともできるのさ。」
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その言葉に、オレは――少しだけ、救われた気がした。
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「誰かに希望を灯す一枚が、このデッキにあるなら……そいつを、何度でも引いてみせる」
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第6話「選ばれなかった男」へ続く――