第3話「巫女と千の未来」
バベル・トーナメント、第三戦。
俺の次なる対戦相手は――**未来視**を使う巫女だった。
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「……カイ=アルト。あなた、もうすぐ死ぬわ」
「開幕1秒で人の寿命断言すんのやめてくれませんか」
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その女――ミラ=アークレイは、まるで神託でも降ろすように淡々と話す巫女だった。
白装束に銀髪、そして額にはカード型の“視覚石”。
どうやら、彼女は相手のドローやプレイングの未来パターンを予見できるらしい。
「あなたが勝てる確率は、0.002%。このまま進めば、敗北は必定……」
「はいはい、出たよ。ドヤ顔確率論タイプ」
「これは啓示よ。信じなさい」
「いや俺、“覇王の始祖”信じてるんで。すみません」
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【DUEL START】
ミラ=アークレイ
▶ LP:4000/未来予知・予見封殺型デッキ
カイ=アルト
▶ LP:4000/自由進化型デッキ(オリジン封入)
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「先攻は私。未来視起動。あなたの初手、私には見えてるわ」
ミラは静かにカードをドローし、数枚を配置。
▶ 《千年の啓示》:相手のドロー結果を一時封印
▶ 《予見の巫女・ミレイス》:封印されたカードの属性・効果を記録し、対策可能
▶ 《断絶の未来線》:次のターンで“封印されたカード”の効果無効化
「……オリジンは、封じさせてもらうわ」
「……うわ、マジでピンポイントで来たな」
俺の山札から《覇王の始祖》が自動的に弾かれ、フィールド外へ“封印”された。
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(初めてだ……オリジンを、引けねぇ)
「さあ、あなたに残された勝機は……未来を欺けるかどうかだけよ」
(未来を欺く……?)
だが、ふと俺は思った。
ミラは「未来が見える」って言った。
だが、“そこに俺の選択は見えていない”気がした。
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俺はドローする。
手にしたのは、地味なカードだった。
▶ 《シェルター・ナイフ》:効果なし、ただの攻撃力500の戦士
(いや、いい。こいつでいい)
俺はあえて、予想外のカードを召喚した。
「攻撃力500の雑魚!? ……それが、あなたの切り札?」
「違ぇよ。これは、“お前の未来”にない一手なんだ」
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俺はあえて、意味のないカードを3連続で場に出した。
攻撃力も効果もなし。ただのモンスター。
未来視に意味を与えない、“無意味な選択”。
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ミラ「……なに? 私の予知が……乱れて……?」
カイ「そうさ。“オレのデッキには、絶望なんて入れてねぇ”。でも、“予測不能な一枚”なら山ほどあるんだよ」
次のドロー。
光が走る。
▶ 《覇王の始祖》
封印が解け、手札に戻ってきた。
「未来は読まれるもんじゃねぇ。“作る”もんだろうが!」
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オリジン召喚。
フィールドを一掃し、ミラのライフを粉砕する。
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【DUEL END】
勝者:カイ=アルト
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「……読めなかった。あなたのドローが、まるで“祈り”のようだったから」
ミラは静かに、肩を震わせて笑った。
「次に会う時、私はあなたの味方であるといいわね」
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その言葉が、なぜか心に残った。
もしかして、彼女の未来視には――
“もっと先の、別の未来”も映ってたんじゃないかって。
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「オレの未来は、誰にも決めさせねぇ。決めるのは、この手にある“選択”だけだ」
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第4話「死神と、老人」へ続く――