第11話「楽園の門番」
「ようこそ、最後の門へ」
静かに、しかし荘厳に響く声。
そこは、荒廃した世界の中心――巨大な天使像がそびえる遺跡だった。
だが、その像の前に立つひとりの男が、俺の足を止めた。
⸻
「君が、カイ=アルトか。ここまで来たのは、君で……11人目だ」
「生き残り、そんなに少ねぇのかよ」
「いや。“たどり着いた”者が、君で初めてだ」
その男の名は――アベル=エレメンタル。
異常なほどに整った顔立ち、光の加護を纏うような雰囲気。
だが、その目は静かに腐っていた。
⸻
「オレは“最後の門番”……そして、かつて“救い”を信じて敗れた者だ」
「……敗れた?」
「“この世界は想いによって創られる”……かつてそう信じたが、叶わなかった。
だから今は、夢や希望を、門の前で“検閲”している」
「……てめぇ、希望の門を守ってるくせに、希望信じてねぇのかよ」
「誰かがやらねば、ならないのだよ。楽園とは、ふさわしい者だけが入る場所だ」
アベルの背後にある天使像が、ゆっくりと翼を広げる。
「来い、希望を語る者よ。
お前の“願い”が本物ならば、門は開かれよう。
だがもし――そのカードが幻想ならば、ここで終わる」
⸻
【DUEL START】
アベル=エレメンタル
▶ LP:4000/秩序・審判型デッキ《聖域検閲》
カイ=アルト
▶ LP:4000/選択・逆転型デッキ(オリジン封入)
⸻
アベルの展開は異常だった。
▶ 《神判の守衛》:攻撃力0/毎ターン自動で“相手の召喚意志”を審査
▶ 《祝福の白書》:ドローしたカードが“希望に反する”と判定されれば自動で墓地行き
▶ 《聖なる審問》:相手が3回以上ドローすれば即座に敗北条件を適用
(……オリジンが、“幻想”と裁定されたら……敗北)
「お前の“選ぶ自由”は、ここでは通用しない。
選択とは、“神に許された者”の権利なのだ」
(ふざけんな……何が、神の審査だよ)
⸻
ドロー。
カードが震える。
俺の指先を伝って、“希望”が問われている気がした。
(こっちはな……ずっと、選んで、生きて、戦ってきたんだよ)
(誰にも決められねぇ。“俺が希望って言ったら、それが希望だ!”)
⸻
「来い、オリジン!!」
▶ 《覇王の始祖》
召喚時、アベルのフィールドが淡く光る。
だが――審査の結果は、「通過」。
「……まさか。
このカード……“希望として認可”された……!?」
「当たり前だ。俺は、“オレ自身の意思で選び抜いてきた”。
それを否定するってんなら――“お前の楽園”の方が偽物だろうが!」
⸻
フィールドの天使像が砕け散り、オリジンの一撃がアベルを貫く。
⸻
【DUEL END】
勝者:カイ=アルト
⸻
「……見事だ。
君の希望が、本物であったこと、心から祝おう」
「楽園ってのはさ、誰かに選ばれるもんじゃねぇんだよ。
自分でたどり着く場所なんだ」
アベルは静かに、空を見上げた。
彼の背後で、巨大な扉がゆっくりと開いていく。
⸻
「俺は行くよ。誰かが閉じた未来を、もう一度開くために」
⸻
第12話「LAST DRAW -世紀末の一枚-」へ続く――