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とある冬の日の出来事

作者: 白鷺雪華

本日は月曜日

世間一般では仕事が始まる曜日だが、

会社員ではない私には関係がない。


スッキリした気持ちで目覚めた私は、

部屋の窓を開けて思いっきり

空気を吸い込んだ。


「す〜〜〜〜 は〜〜〜〜!」

吸い込んだ空気を全て吐き出すと

自然と笑みがこぼれる。

「あ〜〜〜! いいね〜〜〜」

「冬の早朝の清浄な空気は

 気持ちがいいね〜〜〜!」

人も車も通っていない穢れていない

冬の早朝の空気を味わうのは、

いつの頃からか私が好きな事の一つになった。

これで体内が浄化される訳ではないだろうが、

自分の気持ちが良くなるので良し。

「さ〜〜て、いい気分のまま、

 早朝の散歩にでも行きますか」

そう行って私は洗顔と歯磨き、

着替えを済ませると

鍵と財布だけを持って部屋を出た。


「〜♫」

私は鼻歌を歌いながら町を歩いている。

住み慣れた町でも時間帯によって、

全く違う顔を見せてくれる。

昼は商店街や図書館などの公共施設が

活気とともに人々を賑わせており、

夜は居酒屋やBARがお酒の魔力で

仕事終わりの人々を飲み込んでいく。

今はそのどれもが眠っている。

今日もまたその全てをかけて、

自らの役目を果たすために

力を溜め込んでいると言わんばかりに……


「ふふっ」

「今この世界を見ているのは

 私以外にどれだけいるのかな?」

そんなことを考えながら、

まだ眠っている住宅や商店を

横目に歩いていると、

ふと見慣れない景色が目に入った。

「へぇ……パン屋さんか……」

「新しくできたのかな……?」

新規開店したと思われる

パン屋さんの前で私は足を止める。

「パンか……」

「ずいぶんと買ってないな……」

しばらく店構えを見てから

入店することにした。


店に入ると店員さんの掛け声とともに、

バターや小麦の香りが鼻腔や口内を刺激する。

それぞれのパンにはPOPに特徴が書いてあり、

綺麗に前に揃って並べられているため、

購買意欲を刺激されて好印象である。

「やっぱり後ろにあったりバラバラだと、

 売れ残りに見えたりで印象がよくないしね」

声に出さず心で思う。

「さて、どれにしようかな?」と

いくつか狙いをつけながら、

数点購入して店を出た……


「いい香り……」

「朝ごはんに頂いちゃおう!」

私はパンの袋を抱えて

真っ直ぐ自宅へと向かう。

「香りがいいって事は味も期待できるかな」

「気に入ったらリピートしちゃうかも」

「それに焼きたてとはいかなくても、

 美味しいときに食べてあげないとね!」

「冷めたらまた違う味わいが

 あるかもしれないけどね」

帰る途中にジョギング中の人とすれ違ったり、

開店準備を始めている店舗の横を

通り過ぎたりと今日という1日が

活動を開始しようとしている……



自宅

私は手洗いうがいと着替えを終えると

テーブルの前に座る。

テーブルの上にはパン屋さんの袋と

途中で購入した果汁100%の

オレンジジュースを置いている。

早速袋から卵サンドウィッチを取り出す。

「ふっふっふっふ」

「この惜しみなく盛られた

 ゆで卵のサラダと厚切りの食パン」

「そして見え隠れする黒い粒は胡椒かな」

サンドウィッチのボックスを前に置いてから、

手をあわせて「いただきます」と呟く。

ボックスから一つ取り出して、

両手で支えながらパンと具材をともに

一口分歯で噛み切る。


その瞬間舌の上にパンの厚みと

卵のコクと旨味、レタスの爽やかさが

同時に襲いかかってくる。

「うわぁぁぁ……」

「耳つきの厚切りなのにパンが

 フワフワで小麦の味と香りも強い」

「ゆで卵も粗く潰してあるからか

 ゴロゴロで塩もいい塩梅」

「レタスも新鮮でシャキシャキだし

 シナっとしてない」

「後からかけられた黒胡椒がピリッとして

 全体を引き締めてる」

これはリピート確定だし、

自分で作ってみないと気がすまないな……

一つ目は純粋に味や香りや食感を

楽しみながら食べ終えると

「ふぅ……」と息をついた。

「いやーー

 素晴らしい卵サンドウィッチね」

「卵とレタス、塩胡椒にマヨネーズだけの

 シンプルさだから素材の美味しさを

 引き出している」

「それをパンが包みこんでくれている」

「レタスの爽やかさで

 さっぱりさせてくれるのもいいね」

2つ目を手にとって、

1つ目とは違う意識で一口噛み切る。

「う〜ん、食パンはお店の自家製なのかな?」

「だとしたら真似できないけど、

 いろいろな食パン試してみるかな」

「ゆで卵は黄身と白身を分けてから

 粗めに潰して塩胡椒」

「スクランブルエッグも試してみよう」

味を覚えるために集中しながら食べていく。

美味しい料理は自分で作って、

自己流にしていくのが私の主義である。

2つ目を食べ終えて「は〜〜」と一息つく。

「ごちそうさまでした」

「いや〜〜 これはいい発見したな〜」

「他にも色々あるけど、

 まずは卵サンドを研究しないと」

食べ終えたボックスを片付けてから、

メモ帳とペンを持って机の前に座る。

「卵サンドウィッチか〜」

「シンプルな分、バリエーションが多いよね」

「ゆで卵にスクランブルに目玉焼き」

「塩胡椒にからしやタルタル」

「レタスやきゅうり」

思いつくままにメモ帳に記載していく。

「まずはゆで卵からかな」

「食パンもいろいろあるからな〜」

「サンドウィッチ用のもあるし」

「まぁ、今日作るのは

 サンドウィッチじゃないけどね」

「買い物は夜からだしそれまでは……」

メモ帳とペンを片付けてから、

一冊の文庫本を手にしてベッドに横になる。

「この小説、書店でたまたま見つけて

 あらすじや帯を読んでいい感じだから

 買ったんだよね」

「最初は ん? って感じだったんだけど、

 読んで行くうちに引き込まれて

 お気に入りの作品になったんだ」

そして再び最初から読んでいく。

途中に水分補給や休憩を挟みながら、

最後の1行まで読み終える。

「ふぅぅ」

「いいね、やっぱり」

ベッドに仰向けになり目を瞑る。

そして頭の中で場面を映像化しながら

再度読み返していく。

頭の中で本のストーリーを映像化したり、

その先の話を考えたりするのは

私の楽しみの一つなのだ。

思考の内容が今日作る料理に移行する。

一通りイメージを固めてから、

ベッドから起き上がると準備を進める。

「買い物行ってくるか〜」

エコバッグを肩にかけると、

近くのスーパーへと向かった。



スーパー店内

私は買い物かご片手に麺売り場へと向かう。

「中華麺か焼きそば麺か……」

「お! 中華麺が値引きされてるね」

「なら中華麺にしよう」

中華麺をかごに入れる。

「次は野菜」

「ニラに黒豆もやしにネギっと……」

「野菜はその都度変えるけれど、

 今回はこの野菜達を選ばせてもらおう」

必要な野菜をかごに入れる。

「卵はあるから後はお酒〜」

お酒売り場へと向かい足を止める。

「まぁ、私が選ぶのは無添加の

 赤ワインなんだけどね」

「甘口か辛口か……」

「ん〜 今回は辛口かな」

ワインをかごに入れて買い忘れがないか

かごの中の商品を確認していく。

「うん、大丈夫」

セルフレジで会計を済ませて、

気分よく自宅へと向かう。



帰宅後

部屋着に着替えて手洗いを済ませると、

さっそく調理に取り掛かる。

「まずは野菜の下ごしらえ」

「ニラは茎の部分は細かく、

 葉の部分は大きくざく切りにする」

「ネギは細かく切る」

「野菜を切ったらフライパンに

 油を引いて火にかける」

「温まったら中華麺を入れて焼く」

1〜2分は触らずに焼いていく。

「その後ひっくり返してもう片面を焼く」

「同時に卵を割り入れて目玉焼きを作る」

卵が固まるまで触らずに放置する。

「中華麺をほぐしながら、

 目玉焼きを崩して中華麺に絡ませる」

「醤油を絡ませて下味をつける」

「ニラともやしを加えて炒める」

「塩胡椒醤油で味を調える」

「ネギを散らしたら完成」

私は完成した料理を皿に盛り付けて

テーブルへと運ぶ。

作り置きのマカロニサラダと

グラスとワインを並べれば、

今夜のディナーのセッティング完了である。



テーブルの前に座り手を合わせる。

「いただきます!」

私はまず水で喉を湿らせる。

そしてワインをグラスに注ぎ一口含む。

「ふぅ〜〜〜」

「安定の味で落ち着くね〜」

「無添加だからか純粋な葡萄の味と香り」

「まぁ、個人の意見だけどね」

「飲む人が良ければそれで良し」

一つうなずき箸を手にする。

熱々の麺を具材とともに持ち上げると

湯気と熱気が顔にかかる。

ふぅふぅと少し息を吹きかけてから

ニラともやしが絡まった麺を啜り上げる。

「熱! うん、バッチリ!」

「中華麺のもっちりした食感に

 ニラの苦味が加わって刺激的」

「塩胡椒もよく効いてる」

ワインを口に含む。

「うん、辛口ワインにして正解」

「濃い系の料理だしね」

「甘口より辛口の方がいいな」

自分の選択に納得する。

「もやしのシャキシャキ食感も

 ちゃんと生きてるし

 中華麺やニラともあってる」

「黒豆もやしは焼きそばやラーメンに

 使われるって書いてあったけど、

 自分で作って食べてみて納得したな」

ネットやパッケージの情報を

そのまま鵜呑みにするのではなく、

自分の五感で感じて初めて理解する。

当たり前のことなんだけどね。

「ニラと卵って本当に相性いいよね」

「ニラ玉って料理があるくらいだし」

「それにもやしと麺が合わないはずがない」

食べながら他のバリエーションの

発想も浮かんでくる。

「鰹節に味噌、キムチはまぁ普通に合う」

「ニラに豚肉、鮭にキャベツなんてのも……」

次回は具材を変えてみようか、

それとも具材はそのままで

トッピングを加えてみようか……

作るのが楽しみすぎて、

ワインを飲みながら自然と微笑んだ……

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