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お前に掛けたれた賞金は安いからいつもなら見逃すのだが  作者: Soh.Su-K
第一章 四節 盗賊団討伐依頼編

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第60話 頭は使いようだ

ここから新たな展開、第60話です。

盗賊調査の依頼も核心に近付き、ガルたちの読みと行動力が試される場面になっていきます。

今回は「頭を使う」ことの大切さと、仲間との掛け合いの軽妙さを中心に描いています。

 一つ目の村で聞き込みをして一泊し、翌朝二つ目の村へ向かった。

 どちらも、のどかで貧しい集落。

 聞き込みの内容は単純だ。


 「近くで盗賊が出ている。異変があればすぐギルドへ連絡を」──それだけ。


 村人たちは皆、怯えたように頷いた。

 麦畑は痩せ、家屋も粗末。

 生活が厳しければ盗賊に身を落とす者も出るだろうが──俺には同情できなかった。


「とはいえ、割に合わんよな」


 休憩所へ戻る道すがら、思わず口にしていた。


「何がじゃ?」


「盗賊のことさ。食うために武器を取るのは理解できるが、同情はできない。選択肢は他にある」


「その通りじゃ。軍に志願するなり日雇いに出るなり、道はある」


「盗賊は()()()()()()()()()道だ」


「それでも踏み外す奴はいる。世の中には救えぬ者も少なくない」


 世知辛い話を交わしながら休憩所に戻ると、既にエルウィンが戻っていた。


「もう、遅いじゃない。どこ行ってたの?」


「近隣の村で聞き込みだ。……で、頼んでいたものは?」


「ほら、ちゃんと受け取ってきたわ」


 差し出された羊皮紙の束。


「フィロー商会からは周辺集落での売買履歴。ギルドのベルベットからは最近一ヶ月の依頼一覧。──揃ってるわ」


「ご苦労。……これで盗賊が潜む集落を炙り出せる」


 グローが怪訝そうに眉をひそめた。


「そんなもんで分かるのか?」


「被害の報告と、売買の動き。時間を突き合わせればボロが出る」


 羊皮紙を広げる。

 被害が出たのは約二週間前。

 その直前──()()()()()()()()()()()()が持ち込まれ、さらに中古の剣と防具が商会に売られていた。


「……ビンゴだ」


 指差した箇所に、二人が覗き込む。


「二週間前……ちょうど最初の被害が出た頃じゃな」


「旅人が売った、だって。しかもこの辺りじゃ採れない作物?」


「それだけじゃない。中古の武具もセットで売却されている。──盗賊が換金したに決まってる」


 グローが鼻を鳴らす。


「分かりやす過ぎるの。むしろ、なぜ気づかれんかった?」


「商会は自分の輸送隊じゃなきゃ深く調べないし、ギルドも被害者が旅人じゃ軽く扱う。分業の穴ってやつだ」


「……真面目なガルじゃなきゃ、突き合わせて調べようなんて思わないわね」


 エルウィンがニヤリと笑う。


()()()()()、ってやつ?」


「茶化すな。被害が広がれば報酬が減るだろ」


「はいはい、“正義の味方”さん?」


「お前なぁ……」


 グローまで肩を震わせて笑っている。

 全く、コイツらは……。


「まぁいい。俺とグローは既に村に顔を出した。連中は近いうちに仕掛けてくるはずだ」


「そこを迎え撃つわけね!」


 エルウィンが目を輝かせるが、俺は首を横に振った。


「いや、お前は隠れてろ」


「え、なんで?」


「奴らは俺とグローの二人組だと思ってる。お前が出てきたら警戒して襲ってこないかもしれん」


「じゃあ、私は何を──」


 首を傾げるエルウィンに、俺は笑って天を指差した。


「木の上で息を潜めてろ。野伏(レンジャー)殿の得意分野だろ?」


「……うわ、使い方が雑!」


「人使いが荒いのぉ」


 グローが愉快そうに笑った。

お読みいただき、ありがとうございました。

今回の第60話では、ガルが正面から動くのではなく、情報を組み合わせて“答えを導き出す”という形を取っています。

単純な力押しではなく、頭を使うことも冒険者の仕事。

次回からは、いよいよ実際の対峙に向けて物語が動き始めます。

引き続きお楽しみください。

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