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お前に掛けたれた賞金は安いからいつもなら見逃すのだが  作者: Soh.Su-K
第一章 三節 軍令・調査依頼編

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第48話 師範代なんてガラじゃない

グローの“スパルタ”稽古に続き、今度はガルが“師範代”に任命……?

素振り、太刀筋、タイミング、突きの工夫──

意外と熱い剣術講義が、静かに始まります。

「結局、同じ腕の振りから、斬撃と突きのどちらも繰り出せれば最強ってことだ」


 グローがスープを啜りながら、稽古の総評を語る。

 ……って、おい。干し肉、明らかに使いすぎだろうが。

 保存用に残しておいた分まで手を出してるな、コイツ。

 明日はグローに狩りを任せよう。猪でも兎でも何でもいい、狩ってこい。


「それって可能なんですか?」


「無理なことのほうが多いな」


「本末転倒では……?」


「まあ、そう言うなって」


 俺は手刀を使いながら説明を始める。


「サリィン、お前は袈裟斬りの後、ほぼ確実に逆袈裟に振りかぶる癖がある。それを読まれたら終わりだ」


「……はい」


「昨日、グローに剣を踏まれたのも、それが原因だ」


「ぐぬぬ……」


 コフィーヌは真剣な顔で、手元で袈裟や逆袈裟の動きを反復している。偉い。

 グローは黙ってスープをおかわりしている。聞け。


「近接戦は、相手の防御の選択肢を増やして迷わせることが大事だ」


「……もう少し詳しくお願いします」


「袈裟斬りの次が逆袈裟だと読まれてたら、相手は一択で防げる。じゃあ、そこに突きを混ぜたらどうだ?」


 俺は立ち上がって棒を構える。


「斬りから返さず、握り込むようにして突く。そうすれば突きは速いし、剣を返す手間もない。防御の選択肢が二つに増えるだけで、防がれる確率は半分になる」


「なるほど……!」


「更に、下段に流すように薙ぎ払えば、選択肢は3つ。確率は約三三%まで下がる。騙し合いだよ」


 サリィンは立ち上がってゆっくりとその動きを反復する。


「攻撃が単調になると、リズムが読まれて終わりだ。冷静に、複数パターンを持つこと。それが生き残る秘訣だ」


「ガハハ、師範代らしいのぉ」


 グローのニヤニヤ顔が鬱陶しい。人のこと散々放り投げといて……。


「だったらお前が教えろよ」


「ワシは斧使いだからの。突きなぞ知らん」


「それなりの言い訳用意してやがる……」


 するとサリィンがふと質問を投げかけた。


「でも、突きを使わないと先を読まれてしまうんじゃ……?」


「ふむ、いい質問だ」


 グローがどっかりと座り直す。


「剣と斧の違いは何だと思う?一番は重さよ。そしてな、斧は突きをせんでもいい。理由は単純、()()()()()()()()()()()()()からじゃ」


 わかりやすくていい例えだ。

 それが出来るのが、グローみたいな怪力鉱矮人ドワーフ限定ってことも忘れてはいけないが。


「さて、次はコフィーヌだな。お前は、足が止まりすぎだ」


「足……?」


「その場での突きばっかりで、全部タイミング同じ。読まれて掴まれたのはそのせいだ」


 俺はまた棒を構えてみせる。


「その場で出す突き。踏み込みと同時に出す突き。踏み込んでから出す突き。この三種だけでもタイミングは変えられる」


 コフィーヌはすぐに立ち上がって、それを真似してみせる。よしよし。


「そして、狙う部位も増やせ。頭、喉、胸、腹、股、脚。突ける場所は山ほどある」


突剣(レイピア)に変えるって選択肢も……」


「ありだ。相手を倒すのが目的だ。手段や剣の形に拘る必要なんてない」


「ふぅ……今日の講義は終わりじゃな?」


 グローが笑いながらスープを飲み干す。


「もう疲れたわ。俺は“教官”には向いてない」


「いやいや、中々の師範代ぶりじゃったぞ?」


 誰が“師範代”だ。似合わなすぎて鳥肌が立つわ。

ガル式バトル指南、ひとまず終了。

サリィンもコフィーヌも、それぞれ成長の兆しが見えてきました。

でも、ガル本人はというと──「教えるのはやっぱ疲れる」らしい。


次は、実践編……くるか??

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