第二話 選択肢A
A.屋上に行く
彼女は転校してきたばかりでこの町にも慣れていない。なら、町をある程度一望できる屋上に行っているかもしれない。
彼女と話すために階段を全速力で駆け上がる。
最後の階段を上りきり、屋上へと繋がるドアを開ける。
そこには、誰もいなかった。
今日は風が強く、俺の体に風が四方八方からぶつかってくる。
俺はトボトボとした足取りで屋上の端まで行き、下を眺める。そこに小中さんがいるのではないかと思って、前のめりになって、落下防止に設置してあるフェンスに張り付く。
その時だった。
今日の中で一際強い風が俺の後方から吹いた。
たった一瞬の強風。
それでも、俺の体を押すには十分だった。
俺が張り付いていたフェンスがギギギッと音を立てたかと思うと、他の部分と接続していたところが全て外れ、俺は支えを失う。
屋上の端で、前のめり。
支えを失った俺はバランスを崩し、そのまま屋上から落下し始めた。
バランスを取って持ち直すとか、屋上の床の端にぶら下がるとか、そんな悪足掻きさえも出来ずに、落ちていく。
すぐに地面にぶつかるかと思ったが、俺以外の世界の流れはゆっくりになっていた。
落下して通りすぎていく各教室の中を確認できるほど、時間はゆっくりながらていた。
だが、たくさんのことは考えられなかった。
ただ一つ。
ただ一つのことだけを考えていた。
「小中 白雪」
彼女と少しでいいから話をしてみたかった。生まれて初めて、こんな気持ちを味わわせてくれた人だから。
後悔はそれだけだった。
長い落下の時間が終わり、頭が地面に接触する。
高いところから落ちてきた威力を頭だけで受ける。
不思議と痛みは感じなかった。
消えかかる意識の中で地面に広がっていく赤い、自分の血を見ていた。
そこに命のタイムリミットが来た。
俺はゆっくりと目を閉じて、自分の人生の幕を閉じた。
~DEAD END~
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