第一話 出会い
俺の名前は中崎 真。俺は母親がモデルということで、生まれた時から美女やイケメンと呼ばれる人達を見てきた。
自分の顔も比較的美形になったという点は、親がモデルのいいところだが、当然悪い点もある。
俺にはモデルとかそういうことに興味が全然なかったということもあり、普通の公立の高校に通っている。
高校生といえば、友達と遊んで、彼女作って、青春を謳歌するのが醍醐味っていうのが一般的だろう。しかし、俺は友達を作るってところまでは上手くいったんだが、彼女が作れなかった。
決してモテないという訳じゃない。自分で言うのもなんだが、親譲りの美形は女子に人気である。
何が彼女を作るのを邪魔しているのかというと、肥えてしまった俺の目である。
女子を見ると自動的に今まで見た人達と比べてしまう。そして、その今まで見た人の大半が親のモデル仲間だったり、モデルの関係者だったりするため大抵の場合はときめいたりしないのである。
もちろん女子を外見だけで見ている訳ではない。内面の部分も見ている。その上でも容姿という要素が大きいらしい。
断じて、俺が面食いというわけではない。
それでも、青春を謳歌するためにと無理矢理彼女を作ったこともあった。かわいい感じで、性格もいい子だった。けど、ある日フラれた。
相手が本気で自分のことを思ってくれているかっていうのは、案外相手に伝わるものらしく、俺が彼女に恋愛感情を向けていなかったと指摘された。
そして、その出来事が俺の心に深々と突き刺さった。唯一幸いだったのは、彼女が同じ高校ではなかったということだろう。
それ以来、俺は彼女を作るという目標を、恋愛をするという願望を諦めた。
「高校だけが全てじゃない。これから大学に行ったり、社会に出てからも出会いはあるさ」と。
しかし、そんな味気ない生活は今日で終わりかもしれない。
高校二年生の春。高校での生活を一年間過ごし、高校にも慣れて、友達も多くできた頃。
俺のクラスに一人の転校生が来た。
教壇に立っている担任の先生が廊下に待っている転校生を呼ぶ。
ガラッと扉を開ける音がして、彼女が入ってくる。
俺が最初自分の視界に写る彼女が存在すると信じられない程、彼女は儚く、尊い。そんな雰囲気を纏っていた。
歩くことで空中に広がる白髪は、彼女の腰辺りまで伸びていて、その一本一本が光を反射して光輝く。
その髪と同じくらい色白の肌は触れば、溶けてしまいそうだった。
そんな真っ白な彼女の中で黒い瞳は強い意思を帯びている。
その瞳とうちの学校の女子の制服である黒色のセーラー服は、白と黒という二色の対立を作り出し、互いが互いをより一層高め合っていた。
「彼女が今年からこの学校に転校してくることになった『小中 白雪』だ。小中、何か自己紹介でもあるかな?」
先生が転入生の小中さんに自己紹介を促し、教壇の横に立っていた彼女は閉ざされていたその口を開く。
「小中 白雪です。みなさんより一年遅れてこの学校にやってくることになりました。仲良くしていただけると嬉しいです。これからよろしくお願いします」
彼女の透き通ったように綺麗な声が教室に広がった。
彼女の何もかもが魅力的に感じる。
胸が段々と暖かくなり、何とも言えない気持ちが体中に広がっていく。
一度彼女を捉えた目線は決して彼女を放そうとはしない。
そうだーーー俺はこの時………一目惚れをしたんだ。
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