第7話(最終話)
「薬屋」ですが、「薬局、薬店」いろいろあります。また認可や資格など法的なものも多いので物語上詳しい説明は省略しました。このあたりはゆるゆるでお願いします。
誤字報告ありがとうございました。
私は今その国で一番高い高級ホテルのスイートルームにいます。
スイートルームにしか部屋にお風呂がついてないんです。
この国の物価は本当に安いので、全然お金が減りません。
多分私はこの国ではすごく大金持ちだと思います。
どうしてそんな高級ホテルを選んだのかというと、その国の情報が色々と集まると思ったからです。
そしてそのホテルを拠点として、あちこち散策して回りました。
外に出ると言ったら、ホテルの人が心配して無料でいいので護衛をつけますと言ってくれたのですが、私の魔法とかいろいろ知られるとまずいことがあるので、私これでも結構強いですのよと言って、護衛の人とちょっとした模擬戦をやってあっさり勝ってしまいました。
顎が外れるんじゃないかと思うぐらいびっくりされましたが、護衛が護衛対象者より弱いって意味ないでしょ、と言って護衛は断ることができました。
やっぱり強化魔法はすごいなぁ、やっぱり私強い。
護衛の人がしょんぼりしてたので、ちょっとかわいそうだったかな…
ある時このホテルのレストランで食事をしていたら、気になる話が聞こえてきました。
どうやらこの国の大統領が変わるかもしれないと言うことです。
まぁ変わってもあまり変わらないとは思いますが、まだ来て間もないのに変な改革みたいなことをされたら嫌なので、ちょっと突っ込んでその理由を聞いてみました。
どうやら大統領の娘さんが重い病気にかかり、命にかかわるらしいです。
そのため大統領を引退して、娘さんとゆっくり過ごしたいそうです。
「こ、これはチャンスかも」
私は閃きました。
何とかこの娘さんと接触して、病気を治してあげて大統領の後ろ盾を得ることができるかもしれない。
そして部屋に戻って、いろいろこの国のについて書いてある本を読み直したり、ホテルの支配人にいろいろ聞いたりして、大統領と会う方法を知りました。
やっぱりスイートルームにしてよかった、普通の部屋だと支配人がこれほど丁寧に教えてくれなかったでしょう。
そしてまた「魔女」になって、コポコポとポーションを10個ほど作りました。
もちろんこれは最高級つまりエリクサーです。
そして、大統領官邸に行きそこの守衛さんに「外国の薬師です、娘さんの治療が出来る薬があるかもしれないので、大統領にお会いすることはできないですか」と言いました。
守衛さんも大統領の娘さんのことが気になってたのか、大急ぎで官邸の中に入ってきました。
そしてしばらくして「すぐ会ってくださるそうだ」と言われ、信じられない気分になりました。
「数日は待たされると思ったんだけどなぁ」
やっぱり娘さんの事はかなり気になってるようですね。
そして守衛さんに案内されながら、会議室をちょっと立派にしたような所に案内されました。
しばらく待っていると、ノックがあって入ってくださいと許可を出すと40代位のスラッとした男性が入って来ました。
「いきなりの訪問でお会いしていただきありがとうございます、ソフィア・シルバータニアと申します」
偉い人と会うのは苦手なので、ちょっと緊張しながら何とかかまずに話しました。
「あなたが外国の薬師さんですか」
「はいそうです、主に開発の方を担当していました」
「娘が治療できるかもしれない薬があるというのは本当ですか?」
「はい本当です、しかし条件があります」
「条件ですか、報酬なら気にしなくていいですよ」
「いえ、報酬は要りません、しかしこの薬は万能すぎて、色々と問題が起きる可能性があります。それで私はその薬を持って祖国を出ました。出来ればこの国の大統領様の後ろ盾がいただきたいのですが…」
「そうですか」
大統領はなぜか、がっかりしたような感じでした、私の話があまり信じられないのでしょう。
「そして条件ですが、この薬の事は秘密にしてください。それから私が治療したことも秘密にしてください。それからこの国で薬屋をやろうと思ってます。良い不動産屋を紹介していただくとありがたいです。これが条件です」
大統領はしばらく考えた後、「分りました、そのことをお約束します。娘に会ってやってください」
「ありがとうございます」
よし、計画通り。
そして大統領とその護衛らしき人と一緒に娘さんの部屋へと向かいました。
その部屋はピンクを基調とした可愛らしい部屋で、10歳位の女の子がチューブにいっぱい繋がれた状態で眠っていました。
付き添いの看護師さんに聞くと、もう1週間以上昏睡状態が続いているみたいです。
「それは大統領も心配するな」心の中だけで喋り、エリクサーを一本取り出して、カップに少量入れて私はぐいっと飲み干しました。
「これは薬です、体には絶対害はありません、娘さんの点滴の中に入れてもらえませんか」
そう言うとその看護師さんはとても悩み、大統領の方をチラッと見ました。
そして大統領はコクリと頷くと、看護師さんはエリクサーを注射器の中に入れて、点滴のチューブの薬を入れるところから、ゆっくりとエリクサーを入れました。
しばらくすると、娘さんが目を開けてキョロキョロと周りを見渡しました。
「あれ、パパ、どうしたの?」
大統領は信じられないものを見たように、固まっていましたがしばらくして。
「おおお ユリーナ元気になったのか?、何処か調子悪いとこはないか?」
「うん、どこも悪いとこないよ、むしろ前より元気になったみたい」
そして大統領はユリーナちゃんに抱きついて、子供みたいにわんわん泣きました。
私はそれを後でそっと見ていました。
「ああ、この方が治してくださったのだ」
そして私の方を見て、キョトンとした顔をしました。
「はじめまして、薬師をやってるソフィア・シルバータニアと言います。ソフィアと呼んでください」
「あ、ユリーナ・サラノビスです。ありがとうございました」
ああいいこと思いついた。
私は、カバンから出したように見えるように演じながら、アイテムボックスから日本で買ったサファイアを取り出しました。
「ユリーナさん、これあなたの瞳の色と同じきれいな石でしょ。差し上げますので私とお友達になってくださいませんか」
そう言ってユリーナさんにサファイアを渡すと大統領が慌てて…
「ちょっとそれはサファイアじゃないか。治してくれた上にそんな高価なものまでいただけません」
大統領は必死で止めようとしますが、私はさっきの要領でダイヤモンドやルビー、エメラルドなど数個を取り出して。
「大丈夫です、国を出るときに結構持ち出しましたので、あとかなり資産もあります」
大統領はまたまたびっくりした表情で、「あなたはすごい薬師さんだったんでしょうね。我が国に来てくれて良かった。しかしぜひ何かお礼がしたい」
私は少し考えて、まだピコんと閃きました。
「それでは私にこの国の市民権をいただけませんか?先ほど申しました通り私は国を捨てた人間なので」
「それぐらいはどうとでもなりますから問題ありません、ようこそ我が国へ、そしてこのたびはありがとうございました」
涙を流しながら、深く御礼をする大統領。
全然偉そうじゃないな、こういう人が大統領してるから良い国なんだろうな。
そう思いながらも、こうも思ってました。
ふふふ、計画通り。
「ソフィアさん、ありがとうございます。これは大切に持ってますね。そしてお友達なってくれてありがとう。いつでも遊びに来てください」
やったぁ、この国の初めてのお友達ゲット。
「ああ、私も同じ気持ちだ。職務で忙しいが、一度連絡くれたら開けるようにする。なので気にせず遊びに来てください」
あら、大統領までお友達になっちゃった。
計画通り、なんて失礼だったかな…あちゃ〜
なんだか御礼合戦みたいになってきたので、滞在しているホテルを伝えて「それでは失礼します」そう言って帰ったのでした。
ちらっと振り返ると、大統領とその護衛の方が私が見えなくなるまで頭を下げていました。
ホテルに帰ってしばらくした頃、レストランで食事をとっていると。
「大統領の娘さんの病気が回復してるらしいぞ」
「ああ、俺も聞いたなんだか優秀なお医者さんが直したとか」
「じゃあ大統領はまだまだ頑張るみたいだな」
「まぁとりあえずはよかった、変なのが大統領になったら困るしな」
やっぱりあの大統領結構人気があるみたい。
そしてまたしばらくした時、大統領のお使いの方がホテルにやってきました。
そして不動産屋と、そしてなんとこの国1番の製薬会社も紹介してもらいました。
後この国の市民カード(日本でいうところのマイナンバーカード)と保険証ももらいました。
そして早速不動産屋に行き、紹介状を渡すと、店舗付き住居を紹介してもらいました。
気に入らなければ他を探すと言われましたが、結構気に入ったのでこのまま購入しようとしたらもう既に大統領が支払っててすごい根回しをされてるなぁと思いました。
近くには日本で言う交番があり、大統領が根回ししたのか、店にあるボタンを押すと、一分もしないうちに警官がたくさん突入してくるんです。
なので変な客が来ても大丈夫ですね。
私も自衛はできますが、できればこの国の方に任せたほうがいいですよね。
そして製薬会社にも行きました。
こちらも大統領が根回ししたのか、話がトントンと進み、私のレシピを渡して薬の製造をお願いしました。
日本の方がこちらの国よりも技術が高く、かなり驚かれました。
店舗で扱うには問題のあるレシピは購入してもらえました。大変喜ばれました。
しばらくして準備が完了したので、無事に開店することができました。
もちろんもうポーションなんてよほどのことがない限り作りません。
最下級のポーションでさえあれほど大騒ぎになり、結局私が国を出るハメになりましたからね。
なのでこの店に置いてあるのは基本的に紹介して頂いた製薬会社の普通の薬です。私の開発したものはアレンジして、承認され次第製造してもらって売り出す予定です。
代理店を通さず直接仕入れているので、やり過ぎは出来ませんが、他の店より安価にしても利益は十分にでます。
店の名前は「木彫魔女の薬屋」
ちょっと日本のことが懐かしくなって、こんな名前にしてしまいました。
怪しい店だなぁと思って、来ないんじゃないかな思っていましたが、これが全く逆で面白そうな店だなと思って入ってくれたお客さんが結構いました。
まだ開店して三ヶ月程度ですが、ちょっとした有名店になってます。えへん!
それからユリーナさんや大統領と交流したり、ルイーザさんを呼んで事情を説明したりしました。
ルイーザさんは「こっちの世界で薬屋をやってもいい」と言ってくれましたが、ここでも良い関係ができているので丁重にお断りしました。
なんとルイーザさんは異世界とも連絡することができる電話機のような魔道具を開発して、私に渡してくれました。
「これでいつでも話せるじゃろ」と笑いながら言ってましたが、ほんとルイーザさんってすごい魔女なんだなと思いました。
日本の製薬会社では、当然大騒ぎになってます。
「誰かひどいこと言ったんじゃねーのか」とか。
「どこかの会社から引き抜かれたんじゃないのか」など。
どうして私がいきなり退職したのかわからず、必死で捜索しています。
「おかしい、レシピもデータもきっちりしたものがあるのに、何度チャレンジしても作ることができない」
そう、美里が最初にやった電気を使った方法でやっているのです。
ほんとは魔法なのにね。
だから余計必死に探しているのです。
スパイみたいな探偵さんに高いお金を払って探させる事もしたそうです。
どうやって調べたのか分かりませんが、海外に出たことがわかり、ある国でぷっつり足取りがなくなったことまで調べ上げていたのです。
当然ソフィアはこのことを知る由もありませんが。
ポーションを作れという「無茶振り」から始まった私の物語。
とてもすごい人生になったけど、結構楽しくやってます。
なんだかこっちに来たほうが幸せだから良かったのかなぁと感じています。
この国は結構南にあるのか、今は冬らしいのですがポカポカとしてとても気持ちいいです。
春のような暖かさに包まれて、今日も薬を張り切って売ります。
今日も元気なソフィアの声が聞こえます。
「いらっしゃいませ」
おわり
私が初めて書いた小説(の様なもの)です。
拙い小説に最後までお付き合い頂きありがとうございました。
そして、そのような作品に、ブクマ、いいね、評価、感想を頂きありがとうございます。
製薬会社社長の息子のわがままから始まったこの物語。
(そんなわがまま息子のために大金を使う親がいるのか?いるのです、ここに。)
今、ソフィア(美里)が居るのは、設定では南米のコロンビアあたりの、架空の小さな独立国家という事にしています。彼女の幸せを祈っています。
美里の名前の由来は、私の名前、みこと→みさと、です。(似ているので親近感が出るかな、くらいの感じです…捨てられましたが…泣)
ポーションがこの世界に!と思った方には申し訳ありません。私の技量では出来ませんでした。(影響の規模が大きすぎるんです)
他の方々の作品を見ると、私の作品の拙さがよく分かりました。
もっといいものを書けるように頑張っていきます。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
なお、この物語はまだ続く予定です。(タイトルは変わりますが)
次の舞台は「異世界」です。
どうなることやら…
投稿日は未定ですが、よければこちらもよろしくお願いいたします。
またお会いするのを楽しみにしています。 感謝を込めて。
追記です。
この物語の続き、連載「「会社で「ポーションを作ってくれ」と無茶振りされました」後日談」を投稿しています。そちらもよろしくお願いします。