第3話
ガリガリ、ガリガリ
美里が何をやってるかというと、ホームセンターで買ってきた1メートル位の板に、彫刻刀を使って削っているのです。
何を削っているのかというと…
魔法陣
そう、早速買ってきた本を読んで、ルーン文字を解析し、その魔方陣を板に削り込んでいるんです。
前にも話しましたが、美里はとても賢いのでルーン文字もすぐ解析し、
「召喚魔法」「できるだけ高位の魔法使い」「元の世界に帰ることができる」「できれば優しい人」と言う意味の魔方陣を書こうとしてるのです。
つまり
「魔法使いを召喚して、魔法を教えてもらおう作戦」
しかしなんてことを考えるんでしょうか…
「第四研究室で、上原主任が今度は板になにかを削っているぞ」
「俺も見た」
「ほんと、いったい何をやってるんだろうな」
「今度は木彫職人にでもなるつもりなのかな?」
「はぁ、研究室のやつらは「木彫りの魔女」と呼んでる」
「謎だ」
「謎だな」
今度は「木彫りの魔女」と呼ばれ始めた美里、もちろん本人はその事は知らないのです。
「ふぅ出来た」
半月もかかってやっと魔方陣が完成しました。
「触媒は何がいいかなぁ、水銀は危ないし、電気抵抗考えて銀を溶かして流し込むか」
ここは最新の研究室、銀を溶かすくらいの事は簡単にできるのです。
とろとろ
注意深く慎重に彫った魔方陣のに銀を流し込む美里。
「やっぱり浅めにして良かった、すぐ冷えるから板も焦げない」
出来栄えに満足しながら続けるのでした。
「よぉし完成」
そして完成した魔方陣に、バッテリーから今度は直接魔方陣の銀に接続しました。
今度はもう一つバッテリーを買ってきて、直列につないで24ボルトにしたようです。
美里なりに何か理由があってそうしてるんだとは思うんですが、だいたい魔法使いを召喚しようとするのがそもそもおかしいので、美里のことがわかるのは美里だけなんです。
ルーン文字は文字そのもに、魔法を行使する力があるので、何らかのエネルギーをあたえたら、魔法が発動するに違いない、そう美里は結論付けて電気を流そうとしてるわけです。
「今やると大騒ぎになるから、みんなが帰った夜にしよう」
そして今日は珍しく早く帰って、明日のために早くベッドに入るのでした。
次の日の夜
「始めるか、いい人が来たらいいのになぁ」
そしてバッテリーと魔方陣の間につけてあるスイッチに触れ、ぶつぶつと呪文を唱え始めました。
そしてスイッチを入れ、魔法陣に電流が流れました。
「イクートスエイラ」
呪文を唱えると、パッと魔法陣が青く輝き出しました。
「うっ眩しい」
目も開けていられないほど輝いた魔方陣が、青から緑色に変化した時、その魔方陣の上に誰かが現れました。
「誰じゃ、ワシ呼んだのは」
そこには60歳位のおばあさんが立っていたのでした。
「いきなりお呼び立てして申し訳ありません、上原美里と申します」
失敗するとは全然考えてなかった美里でした。
「別にかまわんよ、あの程度の魔法なら嫌なら弾いてしまえばいいだけじゃからな」
「そうなんですね、ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をした後、用意しておいたお茶とお菓子を差し出しました。
「ほほう、これはうまいの」
魔法使い?のおばあさんはニコニコしながらお菓子の食べるのでした。
「これはこちらの世界のお菓子で、ザッハトルテといいます」
「こっちの世界は随分と文明が進んでおるのぉ、見たことのない魔道具ばかりじゃ」
おばあさんは研究室見回しながらそう答えました。
「あぁ、これは魔道具ではなくて、実験装置というものです、失礼ですがお名前を教えていただけますか」
「ワシの名前はルイーザ・シルバータニアという、ルイーザと呼んでくれれば良い」
「ルイーザさんは魔法使いなのですよね?」
「いや、ワシは魔女じゃ」
「これは失礼しました、ところで魔女と魔法使いは違うのですか?」
「全然別物じゃな、説明すると難しいんじゃが、まぁ魔法使いよりかなり強いと思ってくれれば良い」
「どれぐらい強いんでしょうか?」
「そうじゃの、ワシの世界の最強の魔法使いの10倍といったところじゃろう」
「はーそれは高位の方が来ていただきました、ありがとうございます」
「そうじゃなぁ、魔法使いに比べると高位じゃな、でもお主の魔方陣にできるだけ高位の魔法使いと書いておったじゃろう、ここに来たのもあれだけ膨大なルーン文字をきっちり書いておったから、どんなやつかみたかったからじゃ」
「それはありがとうございます、お呼びした理由は、私に魔法を教えていただきたいのです」
「この世界は魔法が無いようじゃけど、どうして魔法が使いたいのじゃ?」
「それがですね…」
美里は少し申し訳なさそうにして、今までの経緯を説明しました。
「ほぅポーションをのぉ、それじゃワシが作れば早かろう」
「いいえ、どれだけ作らないといけないか分からないし、いきなり呼び出したのでできるだけ早くお帰りいただきたいのです」
「そうか、お主は優しいのじゃの、来た甲斐があったものじゃ」
「ありがとうございます、こちらもお優しい方が来て下さって助かります」
「それもルーン文字に書いとったじゃろ」
それもそうかと笑う美里でした
「それでは魔法が使えるかどうか見てみるかな、両手を出してもらえるか」
美里が両手を差し出すと、ルイーザも手を繋いだ。
「ほぉ、これは結構強い魔法使いになるぞ」
「本当ですか、よかった」
「ここは魔法を使うものがおらんから、魔素がたくさんあるの、なので余計強力な魔法が使えると思うぞ」
「そうですか、それで教えて頂けるでしょうか?」
「もちろんいいぞ、ワシも楽しみじゃ」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
そして美里はその後、ここが地球と言う星の日本と言う国である事やこの国の技術、習慣、あと美里の個人的な事等々ルイーザに話して聞かせるのでした。
というわけで、美里の魔法の練習が始まったのでした。