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王都の外れの森へ

「2週間程の休みをもらった」


と言えば─


「なら、その間、彼女とゆっくりしてきたら?」


と、母に笑顔で言われた。勿論、母に言われるまでもなく、そのつもりだった。


「はい。約束していたので─。明日、パルヴァン邸に行って来ます。」


その日のうちに、パルヴァン邸へ先触れの手紙を飛ばした。











「ハルに会う前に、少し話がしたいのだけど─」


ハル殿に会いにパルヴァン邸に行けば、聖女─ミヤ様に声を掛けられた。


ー一番厄介な相手かも知れないー


キュッと気を引き締めた。














「──ツンデレならぬ、ツンツンだったのね…その上…拗らせか…」


思っていた通り、ミヤ様達が知っていた頃の、俺のハル殿に対する態度の事を訊かれた。もう隠す必要もないし、ミヤ様はハル殿の保護者の1人だ。洗いざらい全て話した。話し終えると、“ツンデレ”やら“ツンツン”と言われたが─よく分からない。


「私が言わなくても分かってると思うけど…。ハルはいつも他人を優先して、自分の─特に“負”の感情程隠すのが上手いから…そこを、エディオルさんには上手く掬って欲しいの。普段はすぐに顔に出るのにね─」


ーあぁ、ミヤ様も、本当にハル殿の事をよく見ているし、大切にしているんだなー


「俺は、ハル殿に頼ってもらえるように、いつでもハル殿を守れるようにありたいと─。グレン様にも言われたんです。“心まで守ってくれ”と。今回は…できなかったけど…同じ失敗はしない。もう、あんな思いは懲り懲りだ。」


しっかりと、ミヤ様の目を見据えたまま答えた。すると、ミヤ様は驚いた様に少し目を見開いてから


「エディオルさんは…本当にハルが好きなのね?あー…ピアスを見て分かってはいたんだけどね?どうしても第一印象が()()だったから、いまいち納得できなくて…だから、“お触り禁止”なんて言ってごめんなさいね?守れなかった─と思うけど。」


「……すみません」


ー触れずにいるなんて…出きる筈が無いー


「ふふっ─謝らないで?ハルにも言ったけど、お互いいい大人なんだから。好きにして良いのよ─と言っても限度があるけど。それに、あのハルだから…大変なのは、きっとエディオルさんの方でしょうね?何と言うか…まぁ…頑張ってね?」


と、最後には同情されるように応援された。兎に角、これでミヤ様もクリアした─って事で良いんだよな?


「そうそう、ハルは、今日、エディオルさんが来る事を知らないのよ。」


「──え?」


ーまさかの…会わせない!とか!?ー


「何と言うか…ゼンさんがね?“サプライズです”とか言ってね?」


と、ミヤ様は苦笑する。


「あぁ─分かりました。“娘は簡単にはやらん!”状態ですね?」


「そうみたい。ゼンさん、ハルが可愛くて仕方がないみたいね?」


「あの─それで…今日はハル殿には…会えないのでしょうか?」


「ふふっ、心配しなくても大丈夫よ?ハルは今、ネージュと一緒に王都の外れにある森に行っているの。ネージュには、エディオルさんが来る事を伝えてあるから、ある程度その森に近付いたら、ネージュが迎えに来てくれると思うわ。その森の場所…知ってるかしら?」


「王都の外れの森─」


そう言えば、前にレフコース殿が言っていた。


“パルヴァンの森に似ていて、懐かしい森”だと。


「そこかどうかは分からないけど、行ってみます。」


「そう─気を付けて行ってらっしゃい」


ミヤ様に笑顔で見送られ、俺は急いでノアに跨がりノアを走らせた。




「─本当に…()()エディオルさんがねぇ…。これ、美樹と千尋も知ったらビックリしただろうなぁ─」














王都の外れにある森へ、ノアをひたすら走らせた。


ー帰ったら、ご馳走をあげようー


そう思いながら走らせ続けていると


『騎士、ようやく来たか?』


「ネージュ殿!」


上空からネージュ殿が現れた。どうやら、俺が向かっていた場所であっていたようだ。


「ハル殿は─」


『主は今、森で寝ている。そこまで案内する故、我について来い─』













ネージュ殿の後をついて行き、辿り着いたのは、森の奥の大樹のある場所だった。近くに小さな池があり、ノアにそこで水を飲ませる為に、そこまで連れていき、ノアを撫でながら、落ち着いて辺りを見回した。


『騎士よ、主を頼むぞ?』


ネージュ殿は、大樹のある方を一瞥した後、嬉しそうにそう言うと、いつもの様に姿を消し去った。


もう一度、大樹の方に視線を向ける─


「──見付けた。」


ノアをポンポンと軽く叩いた後、俺はゆっくりと大樹へと足を動かした。









大樹の足元で、ハル殿が寝ていた。


「可愛い─」


ーきっと、ネージュ殿に凭れて寝ていたんだろうなー


ソッとハル殿の髪に触れる。プラチナブロンドの髪が、木漏れ日の光を受けキラキラと輝いている。


「─ハル殿?」


このままでは体を痛めるかもしれない─と起こそうかと思ったが、起こすのも可哀想か?と思い直し─そのままソッと抱き上げた。


そのまま、どこか座れる所がないか探していると、ハル殿がギュッと俺の服を掴んで来た。


「ハル殿?」


どうやら、寝ながら掴んで来たらしい。


ー本当に可愛い……どうしようか?ー


いやいや、“どうしようか?”とは、何だ!?落ち着こう!と、自制していると


「───ん?」


ハル殿の瞼がソロソロと持ち上がった。


「─ん?ネージュ?───って…えっ!?」


ー寝起きのハル殿も、ビックリした顔をしたハル殿も…可愛いしかないなー


「あぁ、起こしてしまったか?」


俺が声を掛けると、ピシリッ─と、ハル殿の体が固まった。


「─────へ?」




そんな間抜けた声までもが─


愛おしい─と思った。




やっと、ハル殿の瞳に、俺が映りこんだ─














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