重狭
「なんでっ…」
固く閉ざしているはずの口から、震えた声が漏れ出てしまう。
スマホに入っている、少し前に撮った彼女とのツーショットを見る。
あの時は、これが彼女との最後の写真になるなんて思ってもいなかった。
俺の彼女は、つい先日、死んだのだ。
部活が終わった後に一緒に帰ったり、
成績が思うように伸びない俺を励ましてくれたり、
体調を崩したときに物凄く心配してくれたりと、彼女はとても優しかった。
そして、優しすぎた。
きっと俺を心配させたくなかったのだろう。
彼女は学校で密かにいじめを受けていた。
それなのに、俺には一言もその話をしなかったのだ。
女子達からの陰湿ないじめだったと言うこともあり、俺がいじめられているという事実を知ったのは、彼女が自殺して2日ほどたってからだった。
彼女は自殺する直前、俺に
「もしも自分の彼女、つまりは私が重い荷物を持っていて、
疲れたから代わりに待ってくれない?
って言ったら、持つ?持たない?」
とメールを送ってきた。
そして俺は、
「もちろん持つよ。なにせ普段からお世話になってるからね。」
と、そんなに深く考えずにメールを返した。
そうするとすぐに彼女は返信をしてきた。
「ありがとう。よろしくね」
と。
そのあと、彼女とは連絡が取れなくなった。
その日の翌日、月曜日に学校へ行った俺の全身には、とてつもない後悔とともに得体のしれない物が地球よりも重くのしかかってきた。
それ以降、俺は自分の部屋から出ることができていない。
俺は何度かニュースを見たり新聞を読んだりしたが、俺の彼女に関する報道や記事などは一切見つからなかった。
「…せまい」
少し離れたところでは、人々が普通の生活を送っていた。