利用案内
利用案内〜快適にご利用いただくために〜
一、来館の際は必ず利用者カードをお持ちください。
二、館内でのお食事はご遠慮ください。水分の補給については可能ですが、蔵書を汚さないよう十分にお気をつけください。なお、飲酒は禁止とさせていただいております。
三、他の利用者様のためにも、返却期限は必ずお守りください。万が一返却が遅れそうな場合はご連絡をお願いします。
四、お探しの本、お薦めの本など、本に関するあらゆる質問に答えます。何かございましたら気兼ねなくお声がけください。
五、万が一事故により蔵書を破損・汚損してしまった場合は速やかにお申し出ください。無理に修復をなさらないよう、お願い致します。
六、蔵書を館外に持ち出す場合は必ず貸出手続きを行ってください。手続きのないまま持ち出すと警報装置が作動します。
七、司書に用があるけれどどうしても見当たらないという方はカウンター横のベルを鳴らしてください。
八、非常の際は、利用者の皆様の安全確保のため、必ず館内スタッフの指示に従ってください。戦闘が発生した場合、ご協力をお願いすることがあるかもしれません。ご承知おきください。
九、蔵書への書き込みはご遠慮ください。墨やインクは以ての外です。できれば付箋を貼るのもやめてください。文字が剥がれてしまいます。
「これでよし、と」
新たに加えられた文言に司書は満足げに頷いた。
規則が多すぎては利用者も息が詰まるだろうけれど、快適に過ごしてもらうには大切なことばかりだ。
「んー……」
背伸びをするとすらりとした長身が猫のようにいっそう長くなった。
何気なく窓の外を見やれば広がるのは白くかがやく雲の垣。幾重にも巡らせたそれはこの図書館の名の由来となっている。
「今日も良い一日になりそうだ」
仕事はまだ始まったばかり。新しく届いた物語に図書館の蔵書である証の印を押し、ごく稀に来館者の応対をし、延滞者に督促をかけ、書架の整理をする。やることはたくさんだ。
やるぞ!と気合いを入れて仕事に取りかかろうとしたその時、ギイィ……と重厚な扉の開かれる音がした。
本日一人目の利用者の来館だ。
腕を広げて晴れやかに微笑み来訪を言祝ぐそのひとは、水よりも清らかで月よりも柔らかく、そして太陽よりも暖かく。
「ようこそ、八重垣図書館・天の浮橋へ。……さあ、きみが求める物語を探そうじゃないか!」
ひとりきりだった館内に、今日も溌剌とした声がこだまする。
ここは八重垣図書館・天の浮橋。高天原と葦原の中つ国の狭間にある、まほろばの図書館だ───。
“物語”の物語、はじまります。




