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48自爆少女

「ほんとシミレーションゲームの主人公くらいイベント盛りだくさんだよね伊織ってー♪」



休み時間になり、姫ちゃんが笑いながら話しかけてくる。



「なんか悪目立ちしてる気がしてしょうがないよ。うぅ、平穏に過ごしたいぃ」



「先生に聞いたら選出はギルドに名簿を送って、それで向こうに決めて貰ったらしいぞ」



さすが円華ちゃん、抜け目なく先生に確認してくれている。



「そうなんだ。選考基準なんだったんだろ?」



「西は勇者見習いの代表格みたいなやつだにゃ。あいつが選ばれてるって事は何か意図がありそうだにゃ」



いつも通りクラスに遊びに来たステラちゃんが机に腰掛けている。



「一緒に選ばれてた人だよね?ステラちゃん、知り合い?」



「同じ勇者見習い同士、共に頑張ろう!…って挨拶をされてからちょくちょく話をするにゃ。融通が効かないくらい真面目でとても良いやつにゃ」



ステラちゃんがクスッと笑う。



おや?これはもしかして?



「もしかしてステラちゃん、同じ勇者見習い同士だし、その西さんっていう人のこと好きなんじゃ」



「無いにゃ。そういう間柄ではないのにゃ。伊織には特に勘違いして欲しくないのにゃ」



途端にステラちゃんの表情がすんっと消えて声から感情が消える。



「そ、そうなんだ、なんかごめんね?」



なんとなく地雷の話題っぽいかも、気をつけなきゃ。



その時ガララっと教室の扉が開く。



ふっとたまたま見ると、あまり見慣れない女の子が入ってきたところだった。



少し小柄で、吊り目で勝ち気そうな子。



その子は不釣り合いの大股で歩き、教室の壇上近くまで歩いてくる。



「すみません、この教室に御門伊織さんという方は居ますか?」



…また私ですかね?



「…はい、私がそうですけど?」



控えめに挙手をする。



「あなたね!…は、派手な人」



私を見た後に少し唸っていた。



いまだにこの銀髪を見慣れない人は面食らう事も多い。



その女の子はまっすぐに、挙手をした私のところまで歩いてくる。



「はじめまして。A組の佐山里奈さやまりなよ。今回のギルド体験に選ばれた悠輝君のパーティーメンバーなの」



あぁー、今噂してたA組の勇者見習いさんね!



なるほど、それで挨拶をしにきたのか。



「はじめまして、御門伊織です。今回のギルド体験、もしかしたら一緒になるかも知れないですね」



お互い初めての経験だろうし、協力しあえたらいいな。



私がそう言うと、何故か佐山さんは少し眉を寄せる。



「勘違いさせたのならごめんね。別に私は馴れ合うつもりは無いの。ただ、悠輝君と一緒に選ばれるくらいの人がどんな人なのか見にきただけなの」



そ、そうですか。



中々初対面で言いたい事を言える人みたいだね。



「うーん、西君は知らないけど、私はたまたま選ばれただけだと思うから気楽にやろうと思ってるよ」



「それでは困るのよ。たまたまだろうと、あの悠輝君と一緒に学校の代表に選ばれたんだから。緊張感をもってしっかり励んで欲しいわ」



うぅ、やたら西君の名前を引き合いに出してくる。



知らない人と比べられる感覚、好きじゃないな。



「まぁまだ日数もあるし、ある程度勉強する時間もあるし大丈夫だよ」



私の煮え切らない返事に少しイライラしてるのか、眉が綺麗な八の字になっている。



「本当にお願いよ。だいたいあなた、ろくに魔法使えるのっ?孤児院出身なんでしょ!?」



ひゅ、っと空気が冷たくなるのを感じた。



周囲で聞き耳を立てていた人達も思わず動きを止める。



勢いに任せてつい口から出た言葉なんだろうけど。



「…はっ、…あ、あのごめ、ごめんなさいっ…そ、そんなつもりじゃなくて、こ、こんなこと言うつもりじゃなかったのよ」



すこし張り詰めた空気を感じてか、我に返った佐山さんは血の気が引き、狼狽えている。



目は左右に忙しなく泳ぎ、視点が定まってない。



…いや、何もそこまで怯えなくても。



「…別に私は気にしてませんけど。割とデリケートな事なんで初対面で言われると辛い子も居ると思いますよ?」



私達は周りが思うほど気にしてはいないけど、こういう時に引き合いに出されるのはそれなりに傷付く時もある。



「ほんとにごめんなさいっ!た、ただ私は学校の代表として頑張りましょうって!そ、そう言いたかっただけなのにっ」



やばい、なんか少し泣きそうな雰囲気になってるっ!



「大丈夫、私は気にしてないからっ、ね?私ももちろん自分の出来る範囲で精一杯やるし!」



「あ、ありがとう」



「ほ、ほら!授業始まっちゃうからそろそろ教室に戻らないと!ね?また今度お話ししようね?」



「う、うん!ま、またその時はお願い。じゃ、じゃあね」



最後にチラリと私の後ろに視線を配らせてから可愛らしく手を振って足早に去っていった。



「…ふぅ、なんか自爆しにきたみたい。悪気は無さそうだけど、危なっかしい子だね?」



そういって振り返るとことの成り行きを見守っていた友人3人が、佐山さんの去っていく方をぼんやり見つめている。



「まぁ確かに悪気は無さそうだったにゃ」



「それでも少しムカついたな。初対面で失礼なヤツだ」



「まぁ少しは懲りたでしょー?…次同じこと言ってきたら自分を抑えられる自信ないけどねー♪」




「??どうしたの3人共?」



「別にー?私は伊織の味方だって話ー♪」



そう言ってにひひっと笑う姫ちゃん。



「しれっとしやがって!私ももちろんそうだ。幼馴染みだからな」



「私ももちろんにゃ!伊織にはその、恥ずかしいところを触って貰った仲だにゃ!」



「耳でしょー!?」

「耳だろーが!」



「そうだにゃ!耳だにゃ!何か文句あるかにゃー!」



うん、いつも通りの3人だね。



「こ、こえぇぇ」

「あ、やばい!ビビりすぎてトイレ行きたいかも」




周囲は相変わらずざわついている。



いつもお騒がせしてすみませんね。

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