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47ギルドのお仕事

「最大の敵は足を引っ張る味方…ってやつかしらね」



スマホニュースのトップ記事を見てつい愚痴が溢れる。



『昏睡状態から回復!犯人は魔物!?』



大袈裟に視聴意欲を煽る記事にはそう書かれていた。



あれほど情報規制には最新の注意を払って慎重に行動するようにと念を押したのに。



まだ未確認で不確定な事も多く、民間人に伝えるには時期尚早に感じたからだ。



確かに何人かの被害者は魔力欠乏症に似た症状から回復し、話を聞けるまで回復した。



そして聴取を行うと、皆一様に魔物の様な姿を見たと証言している。



しかし、本当に魔物の仕業なら不可解な事が多過ぎる。



まず、被害者は相当数になるのに死者が一人も居ない。



人間と敵対している魔物が意図的に人を殺さないなんて、今までに例がない。



もう一つは政府要人を狙っている事。



魔物にとって人間の地位など意味がないし、判別する方法もないはずだ。



どう考えても魔物を一連の騒動の犯人にするには無理があるにも関わらず、政府要人複数人の証言というだげで魔物の仕業だと断定してしまった。



確かに有力者の証言を否定しにくいのは組織として仕方ない部分はあるけど。



しかし何を思ったか上層部は正式な魔法省の見解だとギルド本部に報告したのだ。



魔物の討伐や都市部への侵入の警備などは基本的にギルドの管轄。



これは暗にギルドのせいだと言った様なものだ。



案の定ギルド側は激昂。



本件に関しては一切の協力をしないとまで言ってきた。



どうにか私が間に入って仲をとりなし、協力体制を築くまでもう少しというところで今回のメディアへの漏洩だ。



おそらくギルド側の協力はもう得られないだろう。



今回の件で政府の要人達は相当怖がってる様で、魔法省の役員のかなりの数がボディガードとしてあてがわれている。



おかげで今魔法省は通常時の訳7割ほどの人員で普段の業務を回す羽目になった。



せめてボディガードとしてギルドの人員を護衛に回せればこうはならなかっただろうに。




必然的に伊織ちゃんにまわす護衛も最小人数を維持するのが限界。



おそらくそのうちこちらに割く人員も制限がかかってくるだろう。



今日は念のために伊織ちゃんの友達とも面識を持って連絡先を聞く事も出来た。



人間、いざという時にも面識があるかないかで起こす行動の速さが違うものだ。



「…ふぅ、大人って嫌ね」



もちろん伊織ちゃんの大切な友達に会いたかったという本心もある。



しかし自分でもどちらが本音か建前かもはやわからない。



大人なんていうのは自分を偽る事が上手なだけなのかも知れない。



子供の様に傷付く無邪気さも、物事に正面からぶつかる素直さも、危うくて、馬鹿らしくて、とても眩しい。



あの子たちは私をみて大人に憧れてるみたい。



でもどうか大人になってしまうまでは、子供でいれますように。



思考の深みにハマっていると、玄関が開く音がする。



伊織ちゃんがお友達を見送って帰ってきたみたいね。



「ただいま、香奈お姉ちゃん!聞いてくださいよ!ステラちゃんたら車に乗るなり革のシートを人差し指の爪でカリカリしだしてっ!」



「お帰りなさい。あら?あの革はとても高いのよ?確か後部座席だけで120万くらいかしら?」



「げぇぇ!?ちょっとステラちゃんに電話しますねっ!」



ニコニコ笑っていた伊織ちゃんは途端に顔を真っ青にしてスマホを取り出して電話をかける。



「…、あ、もしもしステラちゃん!?え、うん、今日はありがとう!私も楽しかったよ!…じゃなくてね?もう車のソファー、カリカリしてないかなって。…うん、凄く高級なんだってー!」



目の前で電話をしている伊織ちゃんの姿を見て思わず笑っちゃう。



さて、お仕事の事を考えるのは今日はおしまい。



残りの1日をこの子と過ごしたいと思う気持ちくらい、私の本音で間違いないはずよね。



ーーー



「今日はみんなに報告がある。来週から実地体験として、1年生から代表2人を選出して4人パーティーを組んでもらい、ギルドの仕事の見学をすることになった」



朝のHRで担任の岩井先生がそう告げる。



「知ってるやつもいるかと思うがこれは毎年恒例の行事で、ベテランのギルド職員に付き従う形で安全に、ギルドでの仕事を学ぶというものだ。最終的には2年生になるまでに殆どの生徒が体験する事になる」



そういえば孤児院にいたときに周囲で発生した異界の封印と魔物討伐の時に制服を着た学生がウロウロしてたような?



あれってこれの事だったのかな?



「それで最初の代表2人を発表する。A組の西悠輝にしゆうき



「A組の勇者見習いか」

「あいつならトップバッターに相応しいな」



クラスからも納得の声が上がる。



ステラちゃん以外の勇者見習いかぁ。



一度会ってみたいな。



「そして2人目は、D組の御門伊織だ」



「…はぇ?」



ん?私の名前呼びましたか?



「だと思った」

「知ってた」

「そうかなって思ってた」



な、なぜかクラスからはさっきの西君より納得の声が上がる。



『別のクラスでもパーティーって組めるのかにゃー!?』



『組めますからっ!ステラさん、声が大きいですっ』



…な、なんか廊下の向こうから聞こえてきたっ!

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