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31目指すものはそれぞれ

「予想外だにゃっ!!」



HRが終わり休憩時間、私達のクラスに来たステラちゃんが円華ちゃんを見るなり目を丸くして叫ぶ。



「こう、髪型はおかっぱで色白で美化委員でもしてそうなイメージだったにゃ!」



うん、ステラちゃんのイメージは斜め上に飛んでいたようだね。



「おっ!伊織から聞いてるぜ。ステラさんだよな?私は桐谷円華。よろしくな」



「ミーア・ナーオ・ステラだにゃ。伊織から何か聞いてるのかにゃ?」



ステラちゃんが可愛く首を傾げる。



「違うクラスでも可愛い友達が出来たって。一緒に居ると楽しいんだってよ」



「ちょ、ちょっと円華ちゃん!恥ずかしいから言わないでよっ」



うぅ、どうしてLINEの内容言っちゃうの!



「ふぅにゃあ…今日は朝から最高だにゃあ」



ステラちゃんが顔を真っ赤にして蕩けそうな表情で俯く。



第三者から聞く評価って、凄く恥ずかしいよね。



「とにかくよろしくな。私のことは円華でいいぞ」



「わ、わかったにゃ。私の事も、ステラでいいにゃ」



正気に戻ったステラちゃんが円華ちゃんと挨拶を交わす。



仲良くなれそうでよかった。



「…ところで、もしかして円華は聖なる魔力の持ち主かにゃ?」



ステラちゃんの言葉に一瞬円華ちゃんが驚いた表情を見せる。



「…わかるのか?」



「なんとなくにゃ。私は聖属性の魔力を待つ勇者見習いだから、わかるのかもしれないにゃ」



「なるほどな。確かに言われてみれば、ステラからも似た雰囲気感じるな」



円華ちゃんが眉を潜めてステラちゃんを見る。



似た魔力を持つもの同士はそういうのわかるのかな、



「ということは円華も聖女か、勇者を目指してるのかにゃ?」



「……いいや。どっちも興味無いな」



「そうなのかにゃ!?人間達はみんな聖女や勇者に憧れてると思ったけど、そうでもないのにゃね」



円華ちゃんが少し俯く。



「円華ちゃんはね、私の幼馴染みなの。今までも、これからも。ねぇ?円華ちゃん」



そう言ってニヒッと笑う。



少し曇っていた円華ちゃんの表情が、晴れる。



「ん、そうだな。私は伊織の幼馴染み。それで十分だ」



そう言って円華ちゃんも笑った。



「ふふ。なるほどにゃ。それは聖女や勇者に引けを取らないのにゃ」



「…ステラ。おまえもいいやつだな」



「伊織ほどじゃないにゃ」



そう言って二人は笑う。



「さて、そろそろ教室に戻るのにゃ。伊織、こないだ借りたノート返したいから、ちょっと来てにゃ」



「ん、わかった」



そう言ってステラちゃんと一緒に廊下に出て、少し歩く。




「…伊織。円華が聖女や勇者を目指さないのは何か理由があるんだにゃ?」



「…うん。わかったの?」



「円華の反応と、伊織が話を逸らそうとしたので気付いたにゃ。…円華に失礼な事を言ってしまったのかにゃ?」



「大丈夫だよ。円華ちゃんも、ステラちゃんに悪気が無いのはわかってるし、何よりステラちゃんの疑問は当然だしね」



光や聖なる魔法を持って産まれるものは少ない。



聖女や勇者は国の誇りであり、誰もが憧れる称号だ。



普通なら目指さないほうがおかしいかもね。



「相手の立場も考えずに自分の考えを一方的に言うなんて、勇者見習い失格にゃ」



耳をしゅんとさせて落ち込むステラちゃん。



「相手の立場になって考えて、自分の失敗を素直に認めれるステラちゃんは、立派な勇者見習いだよ」



項垂れるステラちゃんの頭をなでなでー。



「…私からすれば伊織の方がよほど聖女なのにゃ。優しすぎるのにゃ」



「あはは。恐れ多いから遠慮しとくよ」



ーーー



チャイムが鳴る寸前、ノートを持って自分の教室に戻る。



「おかえりー」

「おかえり、伊織」



「ただいまー。せーふせーふ」



「ギリギリだしー。もしかして迷ってたー?」




「迷ってないよ!隣の隣のクラスだしね!」



「あははー!ごめんごめんー!」



姫ちゃんがそう言って茶化す。



「…伊織。さっきはありがとな」



「なんのことかな?」



「はっ、本当にもう。何でもないよ」



そう言って円華ちゃんが優しい笑みを浮かべる。



「それとさ?」



「うん?」



「ステラに、…気にしてなかったって、それとなく言っといて」



そう言ってぷい、と私と目をそらす。



顔は見えないけど、ピアスのついた耳は真っ赤になってた。



「…ふふっ」



つい笑ってしまう。



「…なんだよ」



目を背けたまま、円華ちゃんが声を出す。



「別に。ただ、私の周りにはどうしてこんなに素敵な友達が居てくれるのかなってね」



「…もしそうだとしたら、類は友を呼ぶってやつだろ?」



ーーー



三限目、今日は実技講習があり、私は姫ちゃん、円華ちゃんと一緒にいつもの第一演習場まで歩く。



そして併設されている更衣室で体操着に着替える。



「………」

「………」



いつもはがやがやとしている女子更衣室だが、今日は沈黙が支配している。



その原因は私の隣で服を着替えている円華ちゃんだろう。



美しく引き締まった体に無駄な贅肉はなく、腹筋も綺麗に割れている。



腕や肩、背中など、筋肉の線のようなものが見えるが、女性らしい丸みも兼ね備えていて、彫像のような美を体現している。



…だけど多分みんなの注目を集めているのはやっぱりその紋様。



手の甲から肘、二の腕、肩へと伸び、さらに背中の肩甲骨辺りにはまるで一対の翼の様な幾何学的紋様が描かれている。



ただの女子高生が背負うにはあまりにも物々しく、それでいて迂闊な発言を許さないような神秘性も秘めている。



当の円華ちゃんはもはや全く気にもとめておらず、ブラ一枚の状態で先に制服を綺麗に畳んでいた。



「…円華ってさあー?」



「…なんだ?」



沈黙を破る様に姫ちゃんが声をかける。



「腹筋やばくねっ!?どーやったらそんなバキバキになんのー?」



姫ちゃんが目をキラキラさせて円華ちゃんの腹部を凝視していた。



「一応鍛えてるからな。それに栄養素が偏らない様な食事を心がけてる」



円華ちゃんが少し自慢げに鼻をふふんと鳴らす。



あ、筋肉褒められて嬉しそうだ。



「ねぇー、ちょっと触ってもいいー?」



「しょーがねーな。ちょっとだけだぞ」



上機嫌になった円華ちゃんがふっとお腹に力を入れる。



「じゃあ遠慮なくー。…えいっ」



「ひゃあっ!?」



姫ちゃんは力を入れた円華ちゃんの腹筋ではなく、おへそのあたりを指でツンとすると、円華ちゃんから可愛らしい悲鳴が聞こえた。



「ひゃあだってー!やだ可愛いー♪」



「お、お前なっ!いきなりそんなとこ触られたら誰だって変な声出るって!なぁ伊織!?」



「えぇー?ふつーはそんな変な声出さないよー。ねー?伊織ー?」



「えぇ?わかんないよ。おへそとか触られた事ないし」



いきなり振られても困る。



「分かってたらびっくりしてなかったって!それに触り方が変だったっ!」



「別に変じゃないしー。つん、てしただけだしねー」



「いや、もっといやらしい感じだったなっ!」



「いやらしいって…じゃあ伊織に決めて貰おうよー!どう伊織ー?」



「伊織、姫の触り方、変だったよな?」



えぇ!?なんで私が決める流れになってるの!?



二人ともヒートアップし過ぎだよー!



なんで私まで巻き添えに!



「もう、あんまり強くしないでよねっ」



仕方なく、もう着替えていた体操服を胸の下までたくし上げる。



「ちょっと何やってんのー!?」

「何してるんだ伊織!!」



物凄い速さで二人から服をたくし上げていた腕を離される。



えぇ?なんで?



「い、いや、だから私がおへそを触られてジャッジするんじゃ」



「伊織のほっぺをツンとするつもりだったのっ!お、おへそなんて、そんなのっ………やっ、やっぱりおへそ触っていい?」



「ダメに決まってるだろ!?伊織のおへそは私のもの、じゃない!無闇にさわっちゃダメだ!」



「…私のおへそは私のだよ?」



「……あぁ、もうダメ」

「ね、ねぇ!?この子鼻血出して倒れてるよ?」

「なんで鼻血出して倒れるのよ。もう高校生よ?」

「…貴女も鼻血出てるよ?それも両方から」

「えぇぇ!?ホントだっ!」



結局騒がしくなった。





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