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26なんか速くてピカピカ

学校の敷地内のグラウンドに移動する。



そこそこの騒ぎになってたのか、周辺には大勢の人だかりが出来ている。




「や、やめた方がいいよ?怪我しちゃうかもだし」



「大丈夫にゃ。私は回復魔法も使えるのにゃ」



「だってさー、自分の怪我は自分でなおせるらしいよ♪」




「…ほんとにいい度胸してるにゃね」




ステラさんの語気にも剣呑な空気がまじる。




さすがに怒ってるみたい!



「後悔してもしらないにゃ!」



「こっちのセリフだってーのっ」



二人が剣を構えて近寄る。



どうしてこうなるのだろう?平和な学校生活が来るのはもうちょっと先かもしれない。



ーーー



ぎぃんと鈍い音を立てて剣が火花を散らす。



打ち合ってわかることがある。



それはこの夜咲姫が剣術の素人ということ。



ただ闇雲に両手の剣を力に任せて振るっている。



そしてそもそも戦闘の経験が少ないということ。



踏み込みや受け方が雑、というか適当である。




よくこれで勝負を受けたなと思う。




そしてこちらは猫族の獣人だ。



動体視力、反射神経に優れた猫族は近接戦闘では他種族には負けない強さがある。



また猫族は獣人の中では非力な部類だが、その基本的な身体能力では人間には負けない。



それを魔力で強化しているのだから、これは勝負になるかも怪しい。



…はずなのにっ。



「…ふんっ!…えいにゃ!」




夜咲姫の振るう銀光の剣は一撃の重さが尋常では無く、剣で受けた腕が痺れる。




必殺の威力をもつ剣が、左右から高速で迫り来る。




一体どんなスキルなのか魔法かはわからないけど、身体能力も互角以上で、こちらのスピードにも完全についてきていた。



油断してると、やられるにゃ!




大体ミスリルの剣に勇者特有の光の魔力を纏ったこのステラソードと打ち合えるあの魔法剣はなんだにゃ!?



右から来る銀色の閃光を弾く。



一拍後にくる左からの銀色の閃光を受け流し、懐に入るっ!



すると正面から拳が迫っているにゃ!?



慌ててバックステップで避ける。



いつのまにか右手に持ってた剣が消えて、拳を銀光が纏っていた。



まるで銀のガントレット!



そして左手の剣が消え、再び光が形作るのは槍。



鋭く光る切っ先をこちらに向けて振りかぶり投げてきたっ!



それを剣で弾くと、右手のガントレットも既に槍へと姿を変えていて、振りかぶるモーションに入っている!



まずい!体勢を崩した状態では避けれないっ!



「ステラシールドッ!」



剣を離し、虚空から盾を呼び出す。



掴み取りすぐに光の魔力を宿す!



ガァンと慌てて構えた盾に衝撃が!



間一髪で防御が間に合い、槍の投擲を防ぐ。



くぅ!手強い!次は何をしてくるにゃ!?



そう思った瞬間、夜咲姫の足を視界の端に捉える。



盾で視界を塞がれた瞬間に急接近されていた!



抜け目がないにゃ!



大きく右足を踏み出し、両手を上段に構えている。



すると両手に光が集まり、その手には銀の戦斧が握られてる!?



「えーいっ♪」



冗談みたいな掛け声と共に大質量の戦斧が両手で振り抜かれる!



冗談じゃないにゃー!!



「負けるかにゃ!!」



最大量の魔力を盾に注ぎ込み、構える!



ギィィィィィッ!!



と物凄い音がして戦斧を盾が受け止める!



あまりの衝撃に空気がビリビリと震える。



このままでは絶対に打ち負ける。



だからわざと盾への魔力供給を解く。



そして盾を虚空に収納し、瞬時に剣に持ち替える!



急に消えた抵抗に、なす術なく戦斧が地面に深々と突き刺さる!



凄まじい轟音に地面が揺れた。



今だにゃ!!



最速の動きで剣に魔力を宿し、必殺の突きを放つ!



ーっ!?



しかし夜咲姫は地面に戦斧が激突する寸前に手を離していたようで、推進力を利用して身体を捻り、前方宙返り状態に!



しかもやっぱり両手には銀のガントレットにゃ!



その勢いのままに殴りかかってくる!



「ふんにゃ!!」



拳と剣が激突するが勢いは向こうが強く、後方に弾かれるっ!



「…くぅ!ステラビックシールドッ!」



こうなれば持久戦だにゃ!



あれほどの戦闘力、長時間は戦えないはず!




「させるわけないじゃん♪」




瞬間、背筋に寒気が!



見ると超重量級のステラビックシールドを中心に金色のサークル状の魔力が展開していた。



もちろん、出所は掌をこちらに向けている夜咲姫から。



危険を訴える自分の感を信じて、盾を離して飛び退く。



すると夜咲姫が掌を握るのを合図に、金色の魔力のサークルと共にステラビックシールドが消滅したっ!



にゃんだってー!?



そんな遠距離範囲攻撃もあるのかにゃ!?



「さすが勇者候補生の装備、良い魔力だねー。ごちそうさまー」



訳の分からない事を言って夜咲姫が新しく出した剣は同じ銀色の魔法剣だが、そこには何故か私の光の魔力も少量混じっている!



「まさか盾に宿っていた魔力を吸収されたにゃ!?」



「ぴんぽーん!正解だよー!やるじゃんさすが勇者候補生だねー」



そういってニヒッと笑い近寄る夜咲姫。



…こんなの反則だにゃ!!!




ーーー




…うん、何が起こってるのかよくわかんない。




とにかく速くて、とにかくピカピカ光っている。





なんとなく姫ちゃんが優勢かな?っていうのは対峙している二人の表情から察する事は出来るけども。




「……すっげぇ」

「あの子、B組の勇者候補生相手に優勢だぜ?」

「あの変幻自在の武器はなんだ?スキルか?魔法か?」

「私達、高校生よね?」



周りで見ているギャラリー達も思わず息を呑んで見守っている。



やっぱりそれだけ凄い戦いみたい。



まぁでももういいよね。



「ねぇ、もう止めない?二人とも強いのが分かったんだし、十分でしょ?」



向き合う二人に声をかける。



「にゃ!?まだ戦いは途中だにゃ!こんなところでやめるわけには」



「はーい!伊織が言うならもうやーめた♪」



「にゃんだってー!?」




あっさりと戦いをやめる姫ちゃんに、驚いた表情のステラさん。



姫ちゃんは手に持ってた剣をふっと消してステラさんに背を向けてこちらに歩いてくる。



「何を考えてるにゃ、夜咲姫!このままいけばお前が勝てるかも知れなかったのに!」



そういうステラさんはフラフラで、息も荒い。



相当体力を消耗してたみたい。



「元々勝ち負けとか興味無いってばー。伊織への変な噂が気に食わなかっただけだしー。どーお?私がゴーレム倒したっての、信じてくれるー?」



「…信じるにゃ。それほどの力なら、ゴーレムが何体相手でも負ける気がしないにゃ」



ステラさんが手に持った剣を虚空に消して、項垂れる。



どうやら勝負はここまでみたいだね。



「さ、行こう?伊織ー!これ以上遅くなると遅刻するよー」



そういって私の隣まで来る。




「ま、待つにゃ!!」



ステラさんが大きな声を出す。



「やっぱりこの勝負はうやむやには出来ないにゃ!」



どうみても疲労困憊のステラさんだが、瞳には強い力を宿して姫ちゃんを見つめる。



「だからもういいってばー!まだやるつもりー?」



姫ちゃんが少しうんざりした表情で返す。



それも気にせず、ステラさんがフラフラと近寄ってきて、いきなり頭を下げた!



「私からしかけた勝負にゃ、うやむやには出来ないにゃ。…私の負けにゃ。それと、挑発する為とはいえ、いい加減な噂話を持ち出して悪かったにゃ」



これには私も姫ちゃんも目をぱちくり。



しかしステラさんの言葉を理解すると、二人して笑ってしまった。



良くも悪くも、真っ直ぐな子なんだなぁと思う。



「もういいよー。悪気があったわけじゃなさそうだしさー。ね?伊織ー?」



「そうだね。結局怪我も無かったみたいだし、誤解も解けたなら良かったよ」



そういってつい、ぴょこぴょこ動く猫耳のついた頭を撫で撫でー。



「あ、ありがとうにゃ」




うわぁーふわふわの毛並み!やばいくせになりそう。




姫ちゃんがもういいでしょー!?って引き離すまでしばらく撫で回してしまった。






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