表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/49

23一緒の気持ち?

「ふーん。中本春樹ね。学校行く楽しみ増えたわ」



帰り道、今日起こったトラブルを話していると、円華ちゃんの目が据わってきた。



余りの迫力にすれ違う人の肩がビクッと震えている。



「ぼ、暴力はダメだよぉ?それにもう済んだ事だし」



香奈お姉ちゃんが成敗してくれたしね。



「伊織は優しいからな。だけどそういう奴はすぐにつけ上がる。一度とことんへし折った方が…精神的にも肉体的にも」



「身体はへし折ったらダメだよ!?死んじゃうもん!」



「大丈夫だってー伊織ー!中本は回復魔法も使えるからさー!…次の実技講習はいつだっけなー♪」



「姫ちゃんまでもう!…ごめん、私ちょっとトイレ行くね」



「はいはーい!いってらー」

「ここで待ってるぞー」



ーーー



「………」

「………」



なんとなく気まずっ!



今日ずっと伊織を挟んで喋ってたから、急な二人っきりに対応出来ずにいた。



待って待ってー!なんか話そうと思ってた事があったはずー!



「…あの、夜咲さん」



「へ?何ですか?」



っと思ってたら向こうから話しかけてきたし!



「あの、今日の事、ありがとうございます。伊織の事守ってくれたって」



「あーね!友達として当然な事だしー!むしろ私の方が伊織に救われたみたいなとこあるしさー」



「?それはどういう?」



私は話した。



自分の強すぎるスキルのせいで受けていた制限を。



まともな生活を諦めていた私に、女子高生として楽しむ権利を伊織のおかげで手に入れた事を。



「ほんとねー、大袈裟じゃなくて伊織は恩人なのー。私にとって何より大事なことだけど、伊織は毎日だっていいよ?…だってさー」



「そうだな。伊織はそういう奴だよな」



そういって二人苦笑する。



「あっ!大丈夫だよー?もちろん伊織から無理に魔力貰うつもりとかじゃないしっ!むしろ、伊織が無理するくらいなら私が我慢するからねっ」



「それも、心配してない。夜咲さんがいいヤツなのはわかるし。まぁそれでも伊織は夜咲さんに我慢させる事はしないだろうけどな」



「…まぁー、そうかもねー。てか私がいい人?あはっ!そんな事ないよー!割と自己中な自覚あるしねー!」



そういって頭をかいてみせる。



あまり初対面でいい人とか言われたことないかも。



「いい人だろ?だってさ、そんな強いスキルなら問答無用で周りから魔力奪うなりすればいい話だろ?逆らうヤツをねじ伏せる力だってある。それをしないでずっと我慢してたんだ。根性あるよ」



「…思ったことあるよー?でもそしたらさー、私はスキルに振り回されて、スキルの力で相手を支配しちゃうクズになるじゃん。私は暴食神の化身じゃなくて、夜咲姫だからね」



「ははっ!やっぱいいヤツじゃん」



「桐谷さんこそ、さすがは伊織の幼馴染みだわー」



「…円華でいいよ、姫さん」



「私も、姫って呼び捨てにしてよ?円華!いつのまにか私らタメ口じゃんね」




「…ほんとだ。いつの間にか姫のペースに巻き込まれてたわ」



「ははっ、私のせいかよー。ゆーて自覚あるけどね」



そういって二人、笑い合う。



「…ねぇ、円華。伊織の事、好き?」



「ああ。何より大事だな」



…即答で返ってきた!



まるで円華を象徴するような、真っ直ぐな言葉。



「なぁ、姫は伊織の事好きか?」



「もち大好きだしっ」



気付いたら即答で返してたしっ!



満面の笑み+ピース付きでっ!



「…そっか。一緒だなっ」



「…ほんと、一緒だねー!」



円華のいう一緒、という言葉に力が入ってる。



友情?愛情?それともまだどちらかわからないこの気持ち?



今はまだ、わかんない。



多分、それは円華も一緒なのかもねー。



「改めてよろしく。姫」



「こっちこそよろしくだし、円華!」



そういって二人で握手する。



なんだかんだで、見た目ヤンキーなくせに根が真面目で真っ直ぐな円華を私は好きみたいだ。



さすがは伊織の幼馴染みだなー。



今日もう何度目かわかんないそんなセリフを心の中で呟いてた。



ーーー



「ごめんおまたせ!なんかトイレの看板についていったら一周回ることってあるよね?」



「わかるー!ショッピングモールのトイレとかマジで案内する気あんのかよって思う時あるよねー!」



「まぁ、結局入り口付近にあるんだけどな。…いや、そうじゃなくて、あんま遅いと心配すんだろ!」



円華ちゃんのノリツッコミ?が炸裂した所で、そろそろ帰ることに。



女子高生三人、あんまし夜遅いとダメだよね。



ーーー



「円華ちゃん、降りるのここだよね?」



「バカ言うなよ!こんな時間に女の子を一人で帰らせるわけないだろ!」



「…まだ夕方だし円華ちゃんも女の子だよね?」



「私はいいんだよ。鍛えてるしな」



「まぁみんなバス停降りてすぐの所だしー、伊織の住んでるとこなんて夜でも人多いから大丈夫だよー円華っ」



「そうなのか?…いや、それでもなぁ」



まだ渋ってる円華ちゃん。



姫ちゃん、もうひとおしだよ!



「だから伊織の降りるバス停まで二人で乗って、折り返して帰ろーよ」



あれ?姫ちゃん?



「そうだな!姫の案に賛成だ。ナイスアイデアだな」



「でしょー!」



「…二人とも、ここから家まで数十分だよ?ほんと大丈夫だって。ねぇってば!」



結局二人とも私が降りるバス停まで一緒に乗ってきた。



まぁ一緒だと楽しいからいいけどね。



ーーー



車の窓から外を見て、すっかり暗くなった街並みにため息を吐く。



ずいぶんと遅くなった。



今日の会議の内容は概ね、伊織ちゃんの強大な魔力に目をつけた連中が、身柄を預かるだの、こちらが保護するだの。



ただでさえ、個人で人類最大量の魔力を誇る伊織ちゃんはあらゆる組織がその動向をチェックしていた。



そこへきて国内有数のSSランク名前付き名前付き(ネーム)スキルを持つ夜咲姫だ。



暴食系と言われる外部から魔力を吸収し、自らの力に変えるスキル系統の最上位クラスを持つ。



一度戦闘が始まればその強さはまさに反則。



敵の魔力を吸収し、その力を使い敵を殲滅、そしてまた敵の魔力を吸収。



しかも夜咲姫のスキルは指定した空間の範囲内に存在している物質の魔力抵抗値が低い場合、問答無用で消滅させ、魔力に変換することも出来る。



魔力を吸収という工程すら、必殺の威力を誇る夜咲姫のスキルだが、暴食系スキルにありがちなデメリットがかなり深刻だった。



とにかく燃費が悪いのだ。



本人の潜在魔力がDランクしかないのも災いして、自分の生きる魔力すら枯渇し餓死する危険もあった。



戦い続ける限り魔力が尽きることは無いが、彼女がスキルに目覚めたのはまだ中学二年生の頃。



当時は飢えから、クラスメート達の魔力を奪うのでは?などと危惧されていたが、幼いのに自制心が強いのか、魔法省の開発したマジックカロリーバーを受け入れ、文字通り休眠状態になっていた。



それからは夜咲姫を利用しない、出来ないというのが暗黙の了解だった。



…しかし今日その均衡は崩れた。



伊織ちゃんの強大過ぎる魔力を吸収した夜咲姫が休眠状態を脱し、戦闘行為を行い、さらに現在十一時間経過しても飢餓状態に入る様子はない。



憶測だが、夜咲姫は伊織ちゃんと一緒にいる限り、その強大なスキルをデメリット無しで思うままに使える可能性がある。



そのことに目ざとく気づいた組織の連中どもが昼から剣幕を変えて伊織の身元を預かろうとしてきた。



中には二人を引き離すべきだと訴える連中も。



まぁ全員まとめて黙らせたけど。



だけど、どの組織も伊織ちゃんを諦めていないだろう。



あくまで道具として。



「ふざけるなって、話よね」



ーーー



従者と一階のエントランスで別れ、エレベーターに乗り玄関へ。



起こさないように静かに鍵を開けて部屋に入る。



…誰かが部屋に居るのは久しぶりの感覚ね。



リビングに着くと、いい匂いに気づく。



キッチンを見ると、使った痕跡がある。



何を作って食べたのかしらね?



そんな事を思って水を飲もうと冷蔵庫を開ける。



するとそこにはラップされたお皿が。



取り出すと、それはオムライスだった。



そしてケチャップで、



『香奈お姉ちゃん♡』



と書かれていた。



「…もう、ほんとにこの子は」



強張っていた身体から、ふっと力が抜けるのを感じる。



そして強く決心する。



伊織ちゃんを道具になんてさせはしない。



絶対に守ってみせる。



だって、お姉ちゃんだもの。




もし良かったら、感想やレビューなどお気軽にお願いします!

ブクマや☆評価も嬉しいです!

モチベ向上になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ