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22それぞれの嫉妬

「今日は何を買うんだ?」



「んーと。野菜とお肉とお魚かな?香奈お姉ちゃんの部屋、食材何も無くてさぁ」



「…あぁー!確かにあの人、外食とかばっかしてそう!会ったの一回だけだけど、忙しいキャリアウーマンって感じだわ」



「本人が言うには、そもそも料理苦手らしいよ?」



私の隣で伊織とその友達の円華さんが談笑しながら買い物をしている。



当たり前の様に円華さんがカゴの入ったカートを押して、伊織の隣を歩き、伊織が選んだものをカゴに入れていく。



その自然な仕草に、今まで過ごしてきた時間の違いを見せつけられている様で、なんだかもやもやする。



伊織の友達と聞いた時、勝手に眼鏡をかけた図書委員でもやってそうな女の子をイメージしていた。



いや、どんな子それ?って言われても知らんけど。



イメージの話だし。



そしたらびっくり!



髪は真っ赤に染めて、耳はピアスだらけ!



めちゃめちゃヤンキーじゃん!



そして何より目につくのはその両腕。



最初はヤンキーな見た目もあって、タトゥーかと思ったけど、近くで見ると違った。



特殊な魔力の紋様で、魔法の制御、または増幅を目的とした術式だと分かった。



伊達に魔術学校に通ってるわけじゃない。



少し魔法に精通した人なら見ればわかる。



だけど、それでもその規模は異常と言えるかもしれない。



円華さんが腕に施した紋様は手の甲から肩まで続いている。



これだけのものを腕に施しているのにノースリーブを着ているってゆーのもびっくり!



いや、隠せよー!



ふつーは年頃の女の子はこういうの、隠しそうなものだけど、あえて見せつける様にしている。



まるで故意に周囲を威圧してるみたい。




と、まだよくわかんない円華さんだけど、一つはっきりわかる事がある。



それは伊織が大好きということだ。



常に伊織の様子を伺い、伊織の仕草に微笑み、そして常に伊織を見る好機な視線に警戒している。



まるでベタ惚れしている彼氏みたい。



そしてそんな円華さんの隣に居る伊織は安心しきった表情を浮かべている。



…うん、正直かなり嫉妬する。



でも、負けない。



確かに昨日今日の関係かも知れないけど、私と伊織の出会いはきっと奇跡だから。



まだこの気持ちが友情か愛情かはわかんない。



でも伊織の一番になりたいってゆー気持ちは絶対なんだからっ!



ーーー



「伊織ー!私の頼んだパフェ、美味しいよー?一口どぉー?」



「ストロベリー?いいの?」



「いいよーいいよー!はい、あーん」



「は、恥ずかしいよぉ」



「いいからいいからー!はい、あーんっ」



「あ、あーむ」



買い物を終えて、少し休憩しようということで、スーパーの向かいのファミレスに入店した。



目の前で私の親友、伊織と新しく出来た友達、夜咲姫さんが注文したパフェを食べながら楽しく談笑している。



最初、伊織から友達と一緒だと聞いて、三つ編みで単語帳をいつも持ち歩いている学級委員長みたいな奴を想像してた。




いや、どんな奴それ?って言われても分かんね。



イメージの話だからな。



そしたらびっくりした。



スカートは短く、ブラウスのボタンは上一つが外れている。



肌は色白くて健康的な身体付きで、特に胸部の発育が凄い。



一際目を引くのがその金色の瞳だな。



意志の強さを感じさせる強い眼差しが、見る相手を射抜くようだ。



服装や言葉遣いから、いわゆるギャルという人種なんだろうと思う。




正直、伊織にはあまり縁がないタイプだと思ってたが、その予想は覆り、目の前でなんだかイチャイチャしている。



ギャルという人種も、夜咲姫さんのことも色々とまだ分かんないことだらけだけど、一つはっきりしていることがある。



それは伊織の事を大好きだってことだ。



常に目で追い、仕草を観察して、その大きな瞳いっぱいに伊織を写しては満面の笑みを浮かべている。



しかも人見知りする伊織が出会って二日でこの距離感だ。




…正直かなり嫉妬する。




だけど、負けない。



幼馴染みとして、培ってきた日々が、思い出が沢山ある。



そのどれにも中心には伊織が居る。



今までも、これからも!



この先親友としてでも、それ以上の関係になるとしても、常に隣で寄り添い、伊織を守る。




伊織を思う気持ちでは、誰にも負けない!



ーーー



「荷物、あたしが持ったげるよー!」



「伊織、重いだろ?私に任せろ」



ファミレスでパフェを食べてお会計を済ませ、帰宅途中。



右からは姫ちゃんが、左からは円華ちゃんが心配して声をかけてくれる。



幼馴染みと、学校で初めて出来た友達。



大切な二人だけど、ちょっぴり心配性。



私が何か変な事をしないか常に見てるし、私が変なことをすると生暖かい目で見守っている。



二人には私が小動物に見えているのかもしれない。



「大丈夫、これくらい!今日は筋トレだよっ」



そういって両手の荷物を持ち上げて、力こぶを使ってみせる。



いや、特に腕が膨らんだ様子はないけれど。



「…めっかわ!」

「可愛いな、おい」



「ふっふー!毎日こうしてたら、ムッキムッキになっちゃうかもよ?」



「…多分ムリぽい」

「明日には筋肉痛になるぞ?」



…この二人、なんだか相性ぴったりじゃない?



二人はお互いに初対面なのに、この息ぴったりな雰囲気。



…なんだか嫉妬しちゃうな。



まぁそれ以上に大切な二人が仲良くなれそうで嬉しいけどね。



「ほーら!無理してないで貸して貸してー!今は元気有り余ってるからー!」



「無理に筋トレなんてしなくても、伊織は伊織のままでいいだろ?」



そういって左右から荷物を取られた。



両手に買い物袋を持つつもりで学校カバンをリュックにしていたから、両手が空いちゃった。



「んもー!二人とも優しいんだから!あんまりしてると惚れちゃうぞ?」



てへっとウィンクしたつもりが両目でパシャリ。



そういえばウィンク出来ないんだった、私。



「あはっ!惚れそう?姫ってばイケメンじゃんねー!」



「別に惚れて欲しいからしてるわけじゃねーぞ。私はいつもこうだからなっ」



そう言った二人の頬は赤らんでいる。



…多分ウィンク失敗の瞬間を見て、笑いそうなのを我慢してるのかも。




恥ずかしいっ!



「じゃん!両手にイケメンだ」



そういって照れ隠しに両隣の二人の腕を組む。




「…もぉー、いま心拍数絶対やばいってばぁー」




「…今すぐ抱きしめたいのに、この腕には伊織から預かった荷物が!これは拷問か!?」




日の落ちかけた帰り道、三人の顔を夕陽が赤く染めている。



とりあえず今度香奈お姉ちゃんにウィンクの仕方を教えて貰おう。



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