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21幼馴染み

「だからねー?伊織は私の天使なのー!こーやってご飯いっぱい食べれるのは全部伊織のおかげー!ほんと最高ーなんだからっ!」



「でも、それならまた3日くらい経ったら?」



「うぅー、またしなしなになっちゃうー!だからー、そのー!伊織の無理のない範囲で、また食べさせて欲しいなーって」



大きなエビフライを箸で持ったままもじもじしている姫ちゃん。



「全然平気だよ。姫ちゃんの為だったら毎日だってあげるよ」



なんせ有り余ってるしね。



「…ほんとー、伊織がこの学校に来てくれて良かったー!さぁ、食べよ?伊織のラーメンも伸びちゃうよ?」



姫ちゃんが照れ隠しに笑いながら、エビフライをパクつく。



使い道がないと思ってた私の魔力だけど、目の前の友達を救えるなら、これほど良いことは無いね。



…さて!ラーメンの続きだぁ!



熱々のスープが細麺によく絡んでいてとても濃厚な味わいが口の中に広がる。



あまり長くは無いけど、視界の端に銀色の髪が映る。



口に入らない様に、髪を耳にかけてから、麺に息を吹きかける。



「ふぅー、ふぅー、…あーむっ」



口に咥えてから、麺を吸い込む。



音を立てずに食べる、なんて気にしない。



この国の人は麺をすするのだ。



ずずずーっと麺をすすり、口の中いっぱいに豚骨の味を楽しむ。



「むぅー!美味しぃ」



やっぱりこの学校は学食のレベルが高い。



お弁当はなるべく作るけど、美味しい食堂があるのは安心だね。



「…ほんと、美味しそうに食べるよねー。後、なんか食べ方がエロい」



「ふぇ!?別にエロくないよっ!?」



姫ちゃんの意味がわからない指摘にメンマが出そうになる。



周囲を見ると、何人かがこちらを見ていて、目が合うと慌てて目を逸らされた。



…なんだかみんな顔を赤くしている。



「もぉ!姫ちゃんが変なこと言うからみんなびっくりしてるじゃない!」



「…無自覚エロスなんだからー。とりま私が居ない時に食堂でラーメン食べるの禁止だからー!」



「なんでよ!ラーメンの何がいけないの!?」



「なんでも!周りへの刺激が強過ぎるのー!」



それ以上姫ちゃんは取り合ってくれなかった。



ーーー



今日の授業も終わり放課後、教科書をカバンに入れて帰る準備をする。



「伊織ー!一緒に帰ろー!」



がばっと後ろから抱きしめられる。



「わぁ!もう、びっくりするから!いいよ。一緒に帰ろ」



「やったー!伊織はバス通学だっけー?」



「そうだよ。でも今日は色々食材を買って帰りたいから、近くのスーパーに行くかなー?」



香奈お姉ちゃんの部屋、本当に食材がないからねー。



「それもついていくよー。私も色々買いたい物もあるしねー」



そういって姫ちゃんも帰る準備をいそいそとしている。



あ、そうだ!



「今日ね、私の幼馴染みの友達もそのスーパーの前で待ち合わせして一緒に買い物することになってるんだけど、一緒でも大丈夫?」



「そうなんだー。伊織の友達だったらもちろんオッケーだよ!どんな子だろ?楽しみー!」



「とてもいい子だよ。頑張り屋さんなんだぁ。来週からこの学校に編入してくるんだよ!」



「マジで!?やばーい!来週から更に賑やかになるじゃん!」



スマホを見ると相変わらず大量の通知が。



思わず笑ってしまう。



『もうすぐ行くよ、円華ちゃん』



『友達も一緒で大丈夫?』



LINEを送ってから教室を出た。



ーーー



学校から歩いてバスに乗り、一つ目の停留所で降りる。



このあたりはスーパーや雑貨店、それにホームセンターも多く、お世話になることが多そう。



その中でもメイリー孤児院周辺にもあったスーパーがこの辺にもあるらしく、スマホのマップを頼りに歩く。



えーと、次の角を曲がって…あっ!居た!



スーパーの看板より先に、幼馴染みの姿を発見する。



目立つ赤髪が忙しなく周囲を見渡していて、すぐに私を発見する。



「あっ!おーい伊織ー!久しぶりじゃねーか!!」



そう言って手を振りながら元気よく走ってきた。



「円華ちゃーん!」



私も釣られて声をかける。



「元気にしてたか?身体は壊してないだろな?」



そういって抱きしめられる。



「お、大袈裟だよぉ。2日前まで一緒に住んでたじゃない!」



「だけどさぁ!こんなに会えないの久々だし!学校の奴らに舐められてないか心配でさぁ!」



そういって円華ちゃんに頭をくしゃくしゃされる。



むぅ。

みんな私が天パだからって遠慮なく、くしゃくしゃしよる。




「…え?…えぇ!?伊織の友達って!この人ー!?」




横にいた姫ちゃんが驚いた声を上げている。



おっと!いけないいけない。



「円華ちゃん、この人は夜咲姫ちゃん!新しく学校で出来たお友達だよっ」



「…うっす。はじめまして」



円華ちゃんは控えめに頭を下げる。



「姫ちゃん、この人が桐谷円華ちゃん!同じ孤児院で育った幼馴染みだよっ」



「…どうもーす。はじめましてー。…ん?伊織、今孤児院って言ったー?」



「あ、そういえば言ってなかったね」



ずっとそういう環境で居たから、別にフツーな感覚で居てた。



「私は生まれてすぐに孤児院に預けられてたんだ。だから両親は居ないの」



「そ、そうなんだー。でもお姉ちゃんはー?」



「あぁ、香奈お姉ちゃん?実は血は繋がってないの。お姉ちゃんって呼んでるけど、戸籍上は義母さん、になるかな?」




香奈お姉ちゃんがお母さんって変な感じ。



「…伊織。あんましそういう事は」



円華ちゃんが少し目を伏せて言う。




まぁ、あんまり明るい話ではないかも。



「あ、ごめんね!何も考えずに聞いちゃってー!」



姫ちゃんも少し気まずそうに俯く。



「別に気にしないで、姫ちゃん。いずれわかる話だし、それまでにちゃんと自分の口で言えて良かったよ。友達だしね」



そう言って笑ってみせる。



姫ちゃんだって自分のスキルの事を話してくれたんだし、これくらい話せないようなら、一緒にいる資格ないよね。



「それにね、ほら」



そういって円華ちゃんの腕を掴んで抱きしめる。



「えっ!?ちょ、ちょっと伊織!?」



円華ちゃんの上擦った声、びっくりしてるみたい。



「大好きな友達も居て、素敵な場所なんだよっ!今度姫ちゃんも遊びにおいでよ」



「…もぉ!伊織はホントにいい子だなっ!」



くしゃくしゃー。



「ほんとー!マジ天使ー!何食べならこんな子になるのー!」



くしゃくしゃー。



左右からくしゃくしゃされる。



流石に恥ずかしいから手を振り解こうと思ったけど、二人の幸せそうな顔を見てると、もうしばらくこのままでいるのが正解な気がしてきた。






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