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20暴食神のヒミツ

「あんまり大人を舐めるなよ?………っやば!マジかっこいい!!」



休み時間、姫ちゃんが今日何度目かの香奈お姉ちゃんのモノマネをしてはしゃいでいた。



「なんてゆーかさぁー?クールビューティーってゆーの?マジで痺れる!まぁゆーて私とは系統違うんだけど、やっぱ憧れるよねー!」



「まぁ確かに、姫ちゃんとクールは結びつかないね。天真爛漫って感じだし」



あと、ギャルだし。

…言わないけど。



「うちの妹に手を出したら後悔させるからな?………っくぅーー!!私もあれくらいの迫力があれば伊織を守れるのになぁー!」



「も、もう分かったよぅ。なんだかお姉ちゃんのモノマネずっと見てたら恥ずかしくなってきた」



しかも全然似てないしっ。



ちなみに姫ちゃんがお姉ちゃんのモノマネをするたびに中本君がビクリッと小さく肩を震わしている。



まぁ中本君ならいつかトラウマも克服出来ると思う。




「あんまり大人を…」

「もう分かったってばぁ!!」



ーーー



午前の授業が終わり、お昼休み。



一、二限目と実技講習だったから、今日はなんだかお腹が空いたなぁ。



「伊織ー?今日もお弁当持ってきたのー?」



「ううん、今日は用意してないんだ。だからここの学食に行こうかなーって」



「そうなんだー。私も一緒に行くしっ」



そういって満面の笑みでピースする姫ちゃん。



「え?姫ちゃんも来るの!?」



「えぇ!?逆にダメなのっ!?」



姫ちゃんがこの世の終わりみたいな顔で呆然としている。



いや、そうじゃなくて!



「姫ちゃん、事情があってご飯食べれない…じゃなかったっけ?」



昨日、お弁当のおかずをあげようとした時に言ってたような?



「あーねっ!そっちかぁ!マジ焦ったんですけど!それなら大丈夫!もう解決したからっ」



「え?そうなの?」



「うん!伊織のおかげでねっ!とりま食堂行こうぜっ」



「あ、ちょっと!行くから!手を引っ張らないで!」



元気爆発の姫ちゃんに引っ張られ、教室を出ていく。



ーーー



「え?誰?外人と…ギャル?」

「こんな美人いたっけ?しかも2人も?」

「な、なんか、声かけづらいっていうか、近寄りがたいっていうか」



姫ちゃんが前をずんずんと歩き、その後ろをわたしがすこし遠慮がちに歩く。



廊下にいる生徒が道を開け、振り返ってはヒソヒソと声を漏らす。



なんか珍獣扱いされてるみたい。



「みんな伊織に夢中じゃんねー。…伊織、明日からトイレ行く時も私に声かけてね?ついて行くから」



「…なんでよ?もうおトイレの場所なら知ってるよ?」



「なーんーでーもー!!危ない人に連れてかれたらどーすんのさー!」



「…ここ、学校だよね?」



時々、姫ちゃんから円華ちゃんと同じ空気を感じる時がある。



そんなにぼーっとして見えるのかな?



そうこうしている間に食堂に着いた。



一年の教室からはまぁまぁ遠くて、その間いろんな人の注意を集めた。



あんまり目立つなら、黒髪に染めてみようかな?



お昼時の食堂は混雑という程では無いが、学生達でかなりの賑わいを見せている。



想像していた食堂というよりは、ショッピングモールのオシャレなフードコートみたい。



どうやら自動販売機で食券を買うタイプらしい。



「え〜と〜。醤油豚骨ラーメン煮卵トッピングにしよーっと」



お昼にラーメンて素敵だよねっ。



「…伊織ってば見た目によらずイカツイの注文するねー」



「もう、女子らしくちゃんとニンニク無しにしてますよーだ」



「いやまぁ別にいいんだけどねー?私は、A定食とB定食とC定食にしよーっと」



「姫ちゃんの方がイカツイよっ!そんなに食べれるのっ!?」



「もち!久々だし、食欲止まんないってゆーか!これくらいで収まるかって方が心配なくらい」



「残しちゃだめだよー?」



「大丈夫だってー!」



食券に書かれた番号のアナウンスを待ってトレーを取りに行き、席に着く。



当たり前だが姫ちゃんは席と受け渡し口を三往復していた。




「…ウソでしょ?」



そこからは圧巻の光景だった。



瞬く間にテーブル一杯に広げられた料理が姫ちゃんの胃袋に収まっていく。



その細い身体の何処に?



「んんー!!美味しいー!!やっぱあのマジックカロリーバーなんかとは比べ物になんないやー!!」



「マジックカロリーバー?昨日食べてたやつ?」



「そう!私のスキル、『暴食神の権能』は常時凄いカロリーと魔力を消費すんのー!ふつーの生活してたら一日で餓死しちゃうくらいヤバいやつ!それを抑えるのが、これなんだー」



そういってポケットから開封されてない、新しいカロリーバーを取り出す姫ちゃん。



それを指先で遊ばせる。



「これはフツーの人が食べたらぶっ倒れるような高カロリーに、高純度の魔力を圧縮し、さらに私のスキルの効果を抑制する効果まで付与された特別製なんだー。副作用で、ちょーっとぼーっとしちゃうってのがあるけど、死ぬよりはいいよねー」



そう言ってケラケラと笑う。



…軽い調子で言っているけど、かなり深刻な話では?



「しかも他の物を食べると、スキルの抑制効果が弱まるからこれしか食べれないみたいなー?自分で言っててマジ壮絶じゃんねー?まぁ魔法省は新薬を開発中だし、パパとママは私のスキルを抑える方法を探して世界中を冒険してるし、いつかどうにかなればいいなぁーってね」



…あまりに軽い調子で語られる重い話に、どう返していいかわからない。



「ひ、姫ちゃん」



知らずに声が震えてしまう。



「でもさぁー!そんな私は伊織に助けて貰ったわけよー!」



「え?私?」



「今日一番最後に襲ってきたゴーレム、私が食べたの覚えてるー?」



「あの、突然消えたゴーレム?え?あれは姫ちゃんが食べたの?」



そういえばいただきますとか言ってたような?



「まぁ私が食べたってゆーか、暴食神のスキルを使ったってゆーか?まぁあれが私のスキルの効果の一つなの。空間を指定してその内部の物質を消滅させて私の魔力に変換するってゆーね!マジヤバいよね!」



「ヤバいってゆーか、反則級に強いよ、それ!」



「でしょー?でもこのスキル、さっきもいったよーに超燃費悪いのっ!あのゴーレム一体で変換出来た魔力で日常生活で1時間、戦闘なら10分程で使い尽くしてしまうぐらいじゃないかなー?」



「そ、それはかなり燃費悪いね」



「しかも一回マジックカロリーバーで省エネモード入ったらスキルでの食事が出来なくて、直接口で食べなきゃだし、ほんとあの時は絶対絶命だったのー!だから潜在魔力特待生の伊織の魔力をちょっと貰おうってっ」



「それでリヴィールの魔法を教えてくれたんだね。なんか色々とわかってきたよ」



あの時は無我夢中だったけど、姫ちゃんはこんなに色々なことを考えて私を守ろうとしてくれてたんだ。



しかも下手をしたらマジックカロリーバーの効果が切れてしまうかもしれないリスクまで犯して。



「ぶっちゃけ、伊織の魔力貰ってあの場だけでもどーにか出来たらなぁーって思ってたの。そしたらほんとびっくり!!お腹いっぱいになっちゃったし!」


「お腹いっぱい?」



「そう!伊織の魔力量が多くて、しかもびっくりするくらいの高純度なのっ!多分だけど、フツーに生活するくらいなら3日くらい待つんじゃね?」



「えぇー!?あれだけでそんなにー!?」



驚く。



だって私が使ったのは超基礎魔法らしい。



正直言って、魔力を消費したような感覚はない。



「あんな簡単な魔法でアイアンゴーレム72体分の魔力に匹敵するんだから、測定不能とか当然かもねー?」



そう言ってにひひーと笑う姫ちゃん。



むぅ。

やはり自分では自覚は無いが、やっぱり私の魔力はかなり規格外らしい。



あと、姫ちゃんのスキルも大概規格外だと思うけどね。




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