表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/49

18お姉ちゃん降臨

「すぅー、はぁー!伊織の匂いで胸いっぱいー。幸せー」



「うぅー。もうやだ、お嫁に行けない」



「えっ?ほんとにー?お嫁に行けないのー?」



「…なんで嬉しそうなのよ。…あ、ちょっと!もう嗅がないでってば!



「いいじゃん、減るもんじゃないしさー!」



「…もうやだ。姫ちゃんきらい」



「えっ!?うそうそほんとごめんってば!」



などとやりとりをして更衣室から出る。



ーーー



私達は着替えて教室に戻り、急遽中止された授業の代わりにHRを受ける事に。



「…で、中本の話を整理すると、突然起動したゴーレムから中本達がクラスメートを避難させている最中に、ろくに動かないのを良いことに御門と夜咲がゴーレムを壊していた、ということか?」



なんか変な話しになってた!



「違うっつーの!先生!急に動き出したゴーレムがなんでか伊織目掛けて襲ってきたんだってー!中本とか、ろくに助けてくんないから、伊織に魔力を貰った私が全部ぶっ壊したのー!」



「しかしどちらの話の方が信じられるか、というのは子供でもわかるだろう?御門の怪しげな魔法で夜咲が『そう』なったって話もある。ドーピング系の魔法はまだ未成年では禁止だぞ?」



先生は完全に信じてなく、嘘の証言をする上にドーピング魔法にまで手を出すとんでもない生徒、として接している。



実際に姫ちゃんの見た目の変化は凄くて、最初は先生もこいつ誰?って目で見ていた。



確かにびっくりはするけど、目を見ればすぐにわかるのに。



「…ホント、マジうざい。この短期間でよくここまで筋書きつくれたもんだわ。魔法学校じゃなくて演劇学校でも通えば?中本」



そう言われた中本君はやれやれ、といった様子で肩をすくめている。



なにあれ?さすがにムカつく!



「だいたいだな、夜咲。いくらドーピング魔法を使ったとはいえ、あの数のゴーレムに襲われて勝てるはずがないだろう。御門も、ドーピング系の魔法の使用は犯罪だ。院長先生に相談する」



怒りすぎて、姫ちゃんは怖いくらいの無表情になっている。



「私はともかく伊織にまでイチャモンつけて。そんなに信じらんないなら、見せてやるっつーの」



椅子に座りながら足と腕を組んだままの姿で、姫ちゃんの周辺から魔力の発光が始まる。



「姫ちゃん、ダメだよ!そんなことしても余計に立場が悪くなるだけだって」



むしろそれさえも中本君達の作戦なのかも?




「…くそ。でもこのまま黙ってても結果は同じかもよ?」



姫ちゃんは集めた魔力を霧散させて、周囲をギロリと睨む。




中本君は自分のグループの人達複数人に同じような証言をさせている。



普段は模範生を演じている中本君達グループと、転入生と普段ろくに授業を受けてない姫ちゃん、先生からの信用に大きく差があった。



中本君グループ以外の生徒達も、私の使ったリヴィールの波動を受けたショックで何が起こったか自信がないらしい。



むぅ、どうすればいいかな?



その時、教室の扉が勢いよく開かれた!



何事?と思っていると、禿頭の50代前半くらいの男性が扉を閉めて、勢いよく入ってきた。



「岩井先生!至急報告したいことが!」



あ、担任の先生の名前岩井って言うんだ。



「これは教頭先生。ちょうどよかった。私からもお伝えしたいことが」



「今はそれどころではないのです、岩井先生!」



教頭と呼ばれた人は息も絶え絶えに話している。



「魔法省の、魔法省の方々が!一年D組に用事があるとおっしゃって!今この教室の外にいらっしゃります!」




「な、なんですってー!?」



「い、いったい何をしでかしたんですか!?このクラスは!?」



「わ、私はなにも!?」



魔法省というのは魔法犯罪を取り締まるという側面ももってる。



なので、教師達も狼狽えるのは無理はない。



先生達の狼狽ぶりに生徒達もざわつく。



「教頭先生?私達も暇じゃないのだけれど?特に理由も無いなら、早く教室に入れてくれるかしら?」



…うん?どこかで聞いた声が廊下から聞こえて来る。



「は、はいぃぃ!今すぐ開けますっ!」



弓で弾かれたような動きで、教頭先生は教室の扉を再び開く。



「ど、どうぞ」



「お邪魔するわね」



開かれた扉から入って来るのは長身の美人。



ストレートの黒髪は絹のような色彩を放っている。



あ、やっぱり香奈お姉ちゃんだ。



スカートにネクタイと、朝見たままのスーツ姿の香奈お姉ちゃんが、妖艶な色気を放って教室の壇上まで歩いている。



それに三歩引いて付き従うように、黒髪をポニーテールにした女性が二人、歩いてくる。



双子なのかな?顔形がそっくり。



「すっごい美人っ!」

「お、おい、あの人ってまさか?」

「魔法省都内支部トップの!?」

「沢村香奈様!働く女性すべての憧れよっ!」



やっぱりお姉ちゃんは有名人みたい。



クラス中からざわめきが聞こえる。



「どうも、はじめまして。魔法省都内支部局長、沢村香奈です」



「ど、どうも!このクラスの担任を受け持っている、岩井と申します!きょ、今日はどういったご用件でしょうか?」



担任の先生が緊張のあまり、声が所々裏返っている。




「今日は今から45分ほど前に、このクラスが使っていた第一演習場で発生した異常魔力について、話を聞きにきました」



「異常魔力、ですか?さっき聞いたゴーレムの突然の起動と何か関係が?」



「ゴーレムの起動ですか。魔力供給タイプのゴーレムが勝手に?」



「そ、そうです!聞いた話では何もしていないのにゴーレムが…」



「…ねぇ?」



香奈お姉ちゃんが岩井先生が喋る言葉をぴしゃん!と遮る。



「は、はいっ!なんでしょう!?」



「さっきから『聞いた』『聞いた話』って貴方は見てないのね?」



「は、はい。怪我をした生徒を見ていて席を外していて…」



「そう。じゃあもういいわ」



「もういいとは?」



「黙っててくれる?」



「…!?…はい失礼しました」



有無を言わせない目力が、綺麗な声音から発せられる辛辣な言葉が、岩井先生の胸に突き刺さる。



美人のする無愛想というのは、それだけで相手を凍りつかせる威力があるのだと思う。



「ねぇ、誰か事情を知ってる人、居ない?」



香奈お姉ちゃんがクラスを見回す。



みんなが呆気に取られている、今がチャンスっ!!



「はい!!」



私は勢いよく手を上げた。



あまりの事に隣で座っている姫ちゃんまでビクッてなってる。



「あら、伊織ちゃん、今朝ぶりね?」



「香奈お姉ちゃん、学校で会うなんて」



「ふふ。また私の端末にアラート鳴ったからびっくりしちゃったわ。ホントは他の職員が来る予定だったけど、伊織ちゃんのクラスだって聞いて、代わってもらったのよ」



「そうだったんですね。嬉しいです」



「急いで来たら、伊織ちゃんの体操着姿、見れると思ったのにもう着替えちゃったのね?残念。家に帰ったら見せてくれる?」



「あ、あの、汗いっぱいかいてちょっと汚いので、その、洗ってからでいいですか?」



授業とは関係ないところでかいた汗だけど。



「わかったわ。先に家に帰ったら、私の服と一緒に洗濯しといて」



「わかりました」



「ありがとね」



…あ、学校って事も忘れて普通に家でするみたいに話ちゃった。



隣では姫ちゃんが目を見開いている。



「え?うそマジ?伊織の言ってたお姉ちゃんって!?」



「うん、そうだよ。香奈お姉ちゃん。一緒に住んでるの」



「昨日からだけどね」



っと香奈お姉ちゃんがウィンク。



「「「えぇぇええーーー!?!?!?」」」




この日一番の悲鳴の大合唱が学校中に響き渡った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ