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女神エルレイアという存在

◆----年--月--日--◆

◆------◆


「……!?」

気付くと、俺は車ごと見渡す限り真っ白な空間に居た。

「なんだここ…?」


車外に出ると、そこがどこまでも限りなく広がる空間である事が分かる。

(こ、これはもしや…異世界…異次元?いやそんな馬鹿な…夢…!?)


「もし、あなた。」

 突然、背後から声を掛けられる。

 そこには白いテーブルに白い椅子、そしてそこに腰掛けた白い光沢のあるローブの女性が居た。

 胸元まである金髪に緑色の瞳、スラッとした体型の…とんでもない美人の…外人さん?


「へ、ヘロー!ハウアーユー!?アイアムアッ…ペーン…!」

 英語の成績が絶望的だった事を思い出す。


「あの、日本語で大丈夫ですよ。そのように授けてあります。こちらへどうぞ。」

「アポーペンッ!?」(ねーちゃん、日本語ペラペラやんけ…)

 外人さんは椅子のもう片方を示す。


「はあ…」

 俺はとりあえず椅子に腰掛ける。



 同時に名無し様に「お問い合わせ」を掛けるが、一切返答がない。繋がりが完全に…絶たれたのだろうか。名無し様との8年間がこんないきなり…。


「聞きたいことが多すぎるんですけど、ここったら何なんですか?」


 俺の問いに外人さんは答える。

「ここは私のプライベートの神域です。私はエルレイア。世界…アルスガルティアを治める女神の一柱です。」


「・・・・・・・・・・・は?」

「ここは私のプライベートの神域です。私はエルレイア。世界…アルスガルティアを治める女神の一柱です。」


「いや、2度言って欲しいわけじゃなくて。」

「え!?あ、すみません…」

 女神とやらは両手を頬にやり、顔を赤くしている。ドジっ子か、ドジっ子なのか。


「あのー、もしかして、異世界召喚ってやつですか?」

「まあ!話が早い!そうです、それなんです!」


「・・・・・・・・・・はあ。」

 俺はつまらなさそうに返答をする。140万円と酒と宿、どーしてくれんの。

 あと一生に一度はと思って一人でリッズ・カートルンのスイートルームに泊まろうと思ってたのに…!んで残った金で京都三ツ星の評亭で5万のフルコースたらふく喰って後は…ああああクソオオオ…!


「あなた!テ…テンゲー?ジケーイ?」

「テンゲイジ・ケイ。天花寺 慧です。」


「ああその!テゲ…ゲジゲジケーイさん!」

 変わった名字と名前だと思うが、ここまで言い間違えられるのははじめてだぞ…


「ぐっ…ああもうなんでもいいです、それで?エルレイアさん。」

 俺は仕事柄も家庭環境もあり、かなり信心深い方だ。なので、神道でも仏教でもない神に下げる頭は持っていない。目の前の女神がそのどちらでもないのは明白だ。なので、ここはつとめて対等に話していく。


「単刀直入に申し上げます。私の世界アルスガルティアが今魔王の手によって危機に瀕しているのです。それを救っていただきたいのです。」


「・・・・・・。」

「単刀直入に申し上げます。私の世界」

「っていや考え中だからちょっとは待ってろよ!?って二度目だぞ!?」


「すすすすすみません…」

 またもや顔を真っ赤にしてうつむく女神とやら。

 やはり美人だ…美人なんだが、何かどことなくこう…変なやつなんだな、という雰囲気がする。


「あー、魔王…魔王…。はあ、いわゆる「異世界モノ」で言うところの異世界転生かぁ?ふーむ…ま、超絶楽しそうだし、良いぞ。やってやる!」

 俺は「異世界モノ」は大好物だ。電子書籍リーダーKonozamaKinbolに「異世界モノ」原作マンガが25万円分入ってるぞ、25万円分。それに原作小説もありとあらゆるものを1日2~3時間は読みふけっている。

 ならまあ、乗るしか無いでしょ。


「なんとお話が早い!!そうです!えー…今あなたの頭の中のデータを見ましたが、そう!「異世界モノ」みたいなものです!ゲジゲジさん!あ、こちらの世界のお茶どうぞ」

「どうも。」(芋虫かよッ!?いや、もう名前の間違いには突っ込んでやらねえぞ…)


 猫舌なため、淹れてもらった紅茶のようなもの冷まそうとふーふーしていると、女神とやらが続ける。



「私たち女神は、永きに渡って陰ながらアルスガルティアを支え続けていました。神にとっては全てのアルスガルティアに生ける民は我が子のようなものです。

 しかし、私たちは四次元に生きる存在。三次元的な下界に過剰に干渉してしまうと、下界の次元崩壊を招いてしまうのです。

 それゆえ神とは言え、ただ見守るだけしか出来ないのです…。

 今までは種族同士の戦乱や魔物との衝突があっても世界の均衡は保たれてきたのですが、7年前、突如として魔王を名乗る存在が現れ魔物を指揮しだしてからは、世界中が混乱にまみれ、私達もそれを見ながらも手を差し伸べることが叶わずに苦心していたのです…。」


「うーん?そこで三次元的な存在の俺の出番…で合ってるか?んで、「異世界モノ」よろしく魔王をこう、ズババ―っとやりゃあ良いわけだな?」

「!! はい!話が早くて助かります!!ぜひ、お願い致します!!

 実はアルスガルティアのウィッタード王国が、私のコンタクトにより異世界召喚の術式を行っていて、今まさにあなたを召喚しようとしているのです。この後、あなたはそのアルスガルティアへと召喚されることになります。」


「ふむ。召喚までワンクッションある系の「異世界モノ」だったわけだな。まあ良いだろう。」

そんなようなテンプレパターンが、「異世界モノ」には有る気がする。


「では、下界…アルスガルティアとあなたの居た世界との違いについて、簡単にお話をいたしますね。まず…って、もう基礎知識をお持ちではないですか!!」

「ん?俺はそのアルスガルティアについては何にも知らないぞ?」



「ええ!しかし、こう言えば通じますか?ステータスが有って、魔法があって、レベルアップやスキルアップがある世界!!」

「おお!!俺のことをよく分かってるな!」

まんま「異世界モノ」の世界じゃないか!ワクワクすっぞ!

「はい!」


じゃあ重要なことを聞かなければならないな。

「で、チートは?」

「へ?」

 女神は目を点にして、ポカーンとしている。あ、紅茶頂きます。まっず、なにこれ。あれ?だし茶漬け…いや、梅昆布茶の味がするな。そう思うと超うめえじゃん、なにこれ、もう一杯。


「いやいやいや、チートだろ!「異世界モノ」と言えばチートだろ!」

「え?ああええ、ええ、チート!はい、チートでございますことね、ええ。あなたの中の異世界モノを先程一瞬で見ましたから、ぞぞ存じ上げておりますわ!」



「語尾があからさまに動揺してるんだが…?ほれ、なんか便利なスマホとか、Konozamaが使えるとか、俺だけ魔力1000倍とか、ミトコンドリアと神の中間のスペックで召喚とか…アレだよアレ!」


「ええと…その…申し上げにくいのですが、チートはありません」

「ファ!?」

「あなたはレベル1から、職業「霊能者」としてはじめて頂きます!!」

「はああああああああああああああああああああああああ!????」

 ビクッ!と女神エルレイアが震える。


「いやいや、異世界召喚と言えばチートだろチート!俺TUEEEEEEEして無双ゥウウウウウして、なんか魔力とかSUGEEEE事になってて、「あ、俺ってば、また何かやっちゃいました?」で死に戻りなんかしちゃった上でなんか身の丈5メートルのモンスターなんか一撃でドカーンみたいなアレ!「霊能者」って俺の職業そのまんまじゃねえの!」

「ひうっ!?」

 いきなりまくし立てられ、更にエルレイアが声を上げる。


こんな職業(霊能者)リアルだったらモンスターがいようが何だろうが、対幽霊じゃなきゃ無能なの!む・の・う!なんならワンパンで沈むよ俺!? ただの大学中退のそこらへんのバイトすら出来ないオニーチャンなの俺は!どうしてくれるんだよ!俺のロマンを返してくれよ!!うわあああああ俺のチートが!せめて部屋付き露天風呂に和食フルコースに日本酒の今晩の宿を返してくれよおおおお!!」


「ク、クレームですか!?ううう、うるさいです!もう、知りません!とにかく魔王を倒してくださいね!!あなたの望んだ異世界なんですからね!!クレーマーさん!!それじゃ、いってらっしゃああ~~い!!」


「はあああああああああ!!!クレームウウゥゥゥゥ!?!?!??!??エルレイアこのやろおおおおおおおおお!!!!!!」


 叫び終わったところで視界が上下左右反転し、ホワイトアウトする。


「俺の憧れの異世界チートがあああああああぁぁぁぁ~~~~~!!!」

 クソッ…!あの女神逃げやがったな…!チッ…こうなったら全力で異世界を楽――――――――

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