冒険者ギルドに登録するまでが大変
街道沿いにペンゾー街に向かった二人は道中何かある訳でもなく、平穏無事にペンゾー街に着いた。
「おーし着いたで! 途中死ぬか思たけど無事たどり着いたな」
「えぇ、まさか森で襲われるとは思わなかったわ」
小さい森とはいえ、森なのだから襲われる可能性はあるのだがそこまで考える事が出来ないのがこの二人なのだ。
街についた二人はギルドに登録する為に真っ先に冒険者ギルドに向かって歩いて行く。その後ろ姿を妙に小綺麗な格好をした男がじっと眺めていたのにも気づかずにしょうもない事を話しながら歩いて行った。
「お、あれちゃうん? 冒険者ギルド」
「それらしい看板も出てるし多分そうでしょ」
「もし、そこの御二方。もしかして、冒険者になる為にギルドに登録に行くのですか?」
ギルドまで後数十メートルの所で小綺麗な男に話しかけられた二人は訝しむ事もなく答える。
「せやで! これから俺たちの冒険が始まろうとしてんねん! ええやろぉ」
「おぉ! それは何とも素晴らしい事ですね。そんなお二人にスタートダッシュで差をつけるお得なビギナーセットが御座いますがお一つどうでしょう?」
「ビギナーセット? それって何が入ってるの?」
「ビギナーセットにはですね、なんと! 着てるはずなのにまるで何も着てないような軽さの綿100%の防具上下セットに、頭を狙われても安心なハンチング帽に軽さとお手頃な価格を重視したアルミ製の片手剣と盾となっております!」
「おっ! 何かよーわからんけど凄そう! なんぼなん?」
「これだけ揃って何と! 銀貨十枚!」
「え!? すごく安いじゃない! 買いましょう!」
「ありがとうございます。」
よく考えなくても買う訳のない商品を二人は残りのお金全てを使いナンシー用とレイチェル用の二セット買ったのだ。なお、綿100%の上下セットの防具(防具と言うよりは只の服だが)はサイズが全く合わず着れなかったようで、文句を言うべく男の方を見た時には既に男はその場を去っていたので泣き寝入りに終わった。
また、この小綺麗な男は初めて詐欺(このレベルのを詐欺と呼べるかは不明だが)を行い上手くいった事に味をシメ、別の様々な手口を考えて更に成長し、ゆくゆくは詐欺ギルドなる物を創立するのだが、それはまた別の話。
ゴミを貰った代わりに有金を全て無くした二人は気持ちを切り替えてギルドに入り冒険者登録をしに行くのだった。
「ほえぇ、ここが冒険者ギルドかぁごつい人ばっかやなぁ」
「うん、なんだかアウェイ感がすごいわ」
そんな初心者丸出しの二人にテンプレ通りに絡んでくる男達がいた。
「おい、坊主に嬢ちゃん、此処はてめぇらみてぇにケツの青いガキ供が来る場所じゃねーぞ!」
「ギャハハハハハ! その通りだぞガキ共」
「おめぇらがこんな場違いな場所に来たのをわざわざ親切に教えてあげたんだ、教育料でも払ってもらわなきゃな」
そんな理不尽な要求してきても普通は払わないが、この二人だ
「わざわざ教えていただいてありがとうございます。でも私たちさっきゴミになる物に有金全部使って買っちゃったんで今は無一文なんです。」
「そうやねん全くのゼロやからこれから冒険者登録してすぐに依頼受けてお金得なあかんねん、ごめんな」
「あ、そうだ! 飴ちゃんならありますけど要ります?」
そんな事を平然と言ってくる二人に絡んできた男達は可哀想な子を見る目で
「あぁ、それは大変だな。冒険者登録にも金がいるからその分はさすがに持ってるよな?あと、飴は要らん」
そう告げた。ここでレイチェルが可愛かったら「なら、身体で払ってもらおうか」などとも言えたが残念ながらレイチェルはカバ顔であり全く可愛くなかったのでこの男達もそう言った事をする気は起きなかった。そう、可愛くない系ヒロインなのだ。
「え!? 登録にお金いんの!? なんぼいんの!?」
一般的に知られている事であり、尚且つ二人はアホ故に村を出る前にも聞かされていたが忘れていたのだった。