襲われる二人
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「何でやねん! こっち来んなや! 俺たちの事なんてアウトオブ眼中ちゃうんけ!!」
とある森でその様に叫んでいる二人組がいた。そうナンシーとレイチェルである。絶賛ゴブリン十匹に追いかけ回されている途中だ。
時を遡ること数分前。二人が森に入って少し経った時である。
「いやー、森ん中突っ切んの正解やったな! 全然何も襲ってこやんやん」
「だから言ったでしょ? 余裕よ余裕!」
調子に乗り始めた時に悪い事が起こるのは常である。
『グギ、ググガギ』『グギグギ』『ギャッハー!』
そんな音が二人の後ろから聞こえた。それは、ゴブリンの鳴き声だった。
「今後ろからなんか聞こえた気すんねんけど」
「私も聞こえた気がしたわ」
「やんな、これ後ろ見やんと走って逃げよーか」
「そうしましょ」
そんな会話をする余裕など無い筈なのだが、しちゃう辺りアホである。
そうして逃げ出した二人であるが走り難い森の中であったのと余裕ぶった会話をしていたので直ぐにゴブリンに追いつかれそうになり、そして冒頭に戻るのだ。因みに装備は素材の剥ぎ取り用のナイフと安い革鎧だけである。
「ちょっとこれほんとどうするのよ!?」
「どうするもこうするも、逃げるしかないやろ!? 追い付かれたら終わりやで!」
その時、すぐ後ろにまで迫っていたゴブリンが呻き声を上げ倒れた気配がした。
「いくら此処が弱い魔物しか出ない森だからって、っておい! 待て! 止まれ! ゴブリンはもう全て倒したから! もう安全だから!」
折角助けてくれた青年の話も聞かずに(逃げるのに必死で聞こえてなかっただけだが)逃げ去っていく後ろ姿を青年はそれ以上何も言わずに見送った。森の出口はすぐそこだったからだ。
「まさか逃げ切れるとは思わんかったな」
「そうね、鈍臭いゴブリンで助かったわ。まさか、あそこで転けてくれるとは思わなかったわ」
そうして森を抜けた二人はそのまま街道沿いにペンゾー街へと向かって行ったのだ。
お読みいただきありがとうございます。
宜しければ、感想、ブックマーク、評価して頂けると幸いです。